大将の嫁
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局長の次は副長
とでも言わんばかりに、縁談話が持ち込まれるようになった
写真も部屋の隅に積み重ねられている
「ふぅ……」
そんなもの見る気にはならず、煙草をふかしながら天井を仰いだ
ドダダダダダダッッ
ガラッ!!
「トシ!居るか!?あ、居た!ちょっと聞いてくれよ!嫁さんの事なんだけどよぉ!」
「ヤダ、聞きたくねぇ。出てけよ近藤さん、俺ぁ忙しいんだ。あんたのノロケ話なんかに付き合ってらんねぇの」
煙草の煙を吹きかけて、忍者みたいにそのまま消えてくれたらよかったのに
「ちょっとでいいからよぉ!」
「あーうるせぇ。今から見廻りなんだよ、邪魔すんなっ」
振り払ったはずが付いてきて、結局二人で見廻りに行くことになった
パトカーに乗り込んで、珍しく近藤さんが運転すると言う
「寄り道いいか?」と、自宅の前にパトカーを停める近藤さん
一旦中に入るのか?とドキリとしたがそれは違った
「ほらほら~!ブレーキ5回踏むんだよ!愛してるのサイン~!」
「いや誰も見てねぇけど。あ、居たわ。ありゃ煙草屋のばばぁだな」
家にいるはずの嫁さんに送ったアイシテルノサインはばばぁにしっかり届いたようで、サイドミラーに手を振ってるのが見える
グダグダしてる間に家の中から嫁さんが出てきた
躊躇うことなく運転席側に回り、近藤さんと談笑し始める
見せつけられているようでイラついて、貰ったジッポをカチャンと鳴らした
「近藤さん、行くぞ」
「わかったわかった!って、あれ?トシ、お前いつからジッポにしたんだ?」
「………いいだろ、別に。近藤さんには関係ねぇ」
無愛想に言うと前を向いた
「……十四郎くん、いってらっしゃい」
不意に言われて心を掻き乱された
夜、寝付けないで寝返りを繰り返す
あの人は俺のものではない
あの過ちは気の迷いだ
何度言い聞かせても、あの時の肌を、表情を、感情を、忘れることなんて出来なかった
カチャン
またジッポが鳴る
ジッポをしまうと入れ違いにケータイを手にした
無言で眺める液晶が怪しげに光を放っている
「はぁ……」
ケータイを閉じると再び布団に寝転んだ
「最低だな、俺……」
近藤が眠る横で布団の中にケータイを持ち込んで開いている女の受信メール
『明日、ジッポのオイル入れに行く』
わかりました、と返信した後、手順に従って削除した
.
終
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