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「わっ……!」
いつかの悲劇に再び見舞われ、覚悟を決めてきつく目を閉じる
それでもばしゃんという水音はしない
代わりに暖かい手の温もりを感じた
「本当に忙しい奴だな、お前」
高杉に手をとってもらい、倒れずに済んだ事にようやく気付く
「あ、ありがとう……」
そのままぴちゃぴちゃ歩いて最初の岩に戻ってきた
座ると濡れた足をぷらぷらさせる
乾かせる意味ともうひとつ
手を離すタイミングを逃してどうしていいかわからなかった
また無言
どちらも話す事なく離せる事なく
静かに時間だけが過ぎていく
「……ねぇ……もうそろそろ旅館に戻ろうと思うんだけど……」
やっと口にして横を見る
「あぁ……」
握られていた手の力が弱まったのを感じると、離していいんだと腕を引いた
けれど次の瞬間、芽衣は岩肌に寝そべっていた
その上から高杉が見下ろす
今度は両手首を抑えて
「……こんなこと……昔にはなかったわよ?」
「……そうだな、なかったな」
不思議と怖くはなかった
目を合わせたまま続ける
「……左目……なくなっちゃったね」
「そうだな」
「片方見えないとさ……色んなものが見えなくなっちゃうの……?」
「……………そうだな……なんにも見えねぇな……」
目を閉じると涙が一筋こぼれた
「……大変だね、高杉も」
「そうでもないぜ」
得意の口角上げを見せると風に紛れて姿を消した
芽衣はまだ起き上がれない
何も考えないようにしよう
考えたくない
それでも涙は溢れてきて、一人その場で嗚咽を漏らした
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