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次の日、朝風呂に入ろうと思っていたものの昨晩の酒が抜け切らずに結局昼近くに入る事になった
二日酔いとはいかないまでも、少し頭がふわふわしているような
そんなに食欲もないが、軽くお昼をとってから外に散策に出掛けようと決めた
散策と言っても得に何があるわけでもない
何軒か土産屋があるだけで、それは帰る間際に寄ればいいこと
本当にふらりとただ歩く
緑の匂いや風の音
目で耳で鼻で……時には触れて、それだけで十分だった
ふと思い出す
そういえばどこかで川の音も聞こえてきてたっけ
汚れる事なんて気にもせず草を掻き分け木々を避け、芽衣は林の奥へと入って行った
だんだんと近付く川の音
こっちで正解だったと笑みがこぼれてくる
少し歩くと目的地へ着いた
「………待ってたぜ」
大きめの岩に腰を下ろし、木漏れ日から目を細めている高杉が待っていた
「……何やってるのよ、アンタ」
「避暑地を求めて辿り着いた」
「避暑地ってね……まだ夏じゃないのよ?まぁ、確かに川はあるし木陰だし?涼むにはもってこいだけどさ……」
そう言って隣に腰を下ろす
最早神出鬼没なことには突っ込まない
無言の二人に波立つ音だけが響いていた
「やっぱりさ、川の水ってまだ冷たいよね?」
切り出したのは芽衣の方
「さぁな……触ってみりゃあいいだろ」
暖かい気候になってきたもののまだ四月
子供だって水遊びはしていない
「触れってねぇ……いいわよ、ちょっと待ってなさい」
何に対抗意識を燃やしたのか、袖丈を捲り上げながら川に近付き、しゃがんで手首まで一気に突っ込んだ
「……っ……高杉……まだ冷たいみたいよ」
ざっと手を出して振るって水を切る
何事も無かった様に高杉は返す
「そうか……じゃあ次は足でだな」
「足!?」
「水に入る時は足から入るだろ……手と足なら体感温度も違うんじゃねぇのか?」
たとえそうだろうと、もう冷たい思いはしたくなかった
しかし高杉の目が言っている
「やらないのか?」と
「そ、そうだよねぇ、足から入ってみないとわかんないよね」
草履を捨て足袋を脱ぎ、バランスを保ちながら親指をちょんとつけた
「冷たっっ……!!!」
全身に寒気が走り、まだ水遊びには早い事を知らされる
片方裸足で悶える芽衣の後ろで、高杉は密かに腹を抱えていた
「くっくっく……馬鹿だな相変わらず。足の方が敏感だって知らねぇのか?その前に本当にやるか普通」
それを聞くと顔が真っ赤になった
「なっ……!だ、だってあんたがやれって……!!」
「まったく……こんな事餓鬼の頃にもあったな」
その言葉に記憶が蘇る
その時もこんな風に高杉にからかわれて、仕舞いにゃ川に尻餅をついてお尻だけ濡らして帰ったという恥ずかしい思い出
さらに赤面して
「アレだって高杉が悪いんだからね!!それにあの時ちょっと押したでしょ!?」
自分の状態も忘れて今更詰め寄ろうとすると、裸足の足が滑る石に取られてしまった
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