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銀時とはいわゆる幼なじみ
同じ寺子屋で学び、女ながらも松陽先生に剣術を手解きしてもらっていた
その時からの仲
幼なじみなんて言葉は可愛い過ぎるか
腐れ縁の方がよっぽどしっくりくる
だから桂小太郎や高杉晋助の事も知っている
遠い記憶に彼らと駆け回った思い出がちゃんとある
「……戦争がなければな……」
まだまだ旅路は長い
あえて田舎の旅館を選んでいる
物思いに耽るにはもってこいの車内で、懐かしい彼らと夢に落ちていった
何時間バスに揺られていたのだろうか、お尻は痛いし気付けば日が傾いてきている
バスを降りてからは暫く徒歩で旅館を目指す
地図なんか持ってるわけもなく、ぽつりぽつりとある朽ちかけた看板を頼りに歩く
遠目に見えてきた古びた宿
「あれね……」
ようやく目的地にたどり着き、心なしか足取りが軽くなった気がした
道の両脇には菜の花が大量に咲き乱れている
どこからか川のせせらぎも聞こえてくる
田舎にして正解だと心から思う
ひらひらと蝶々が芽衣の鼻先を掠めた
そろそろ日が落ちる
寝床に帰って羽根を休める時間になるのだ
仲居に案内された部屋は外装よりはマシだった
掃除はきちんとしてある様だし、誰の趣味だろうか骨董品も置いてある
夕食は七時だと告げられて酒を多めに用意しておいてと付け加えると、少し驚いた様だったがかしこまりましたと仲居は奥に消えていった
窓を開けて景色を眺める
さっき見かけた菜の花畑はここから見ても美しい
七時まではまだ時間がある
それまでゆっくり温泉にでも入っていよう
露天風呂もあるらしい
浴衣や着替えを小脇に抱えて、芽衣は風呂場へと向かった
湯舟に浸かりながら銀時の事を思い出していた
正確には銀時の言葉だけれども
「……嫌な予感、ねぇ……」
ざばっとあがると軽く身体を拭いて浴衣を羽織った
無造作に髪を結い束ねて来た道を戻る
いい具合に喉が渇いた
部屋の戸を開けると既に料理が並べられていて、注文通りの酒も置かれている
上機嫌で早く食べたいと思ったが、なにやら視界が霞んでくる
白いモヤが部屋中に漂い、異様な雰囲気となっていた
が、芽衣は躊躇うことなく足を踏み入れ席に着いた
「………煙たいのよ、高杉」
視線も向けずにそう呟く
壁にもたれ掛かりお決まりのキセルをふかすその姿
紛れも無い高杉晋助がそこに立っていた
「……よぅ、芽衣……」
寝床を探して迷子になったのか
一羽の蝶が紛れ込んでいた
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