俺の女
名前変換について
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜、一人で飯を食べた後に部屋で落語なんか聞こうかとゴロゴロしていると、よそ行きで身を固めた土方さんが訪ねてきた
それを見て一瞬で悟る
この人が何を言うか
「総悟、たまには一緒にどうだ?」
「またですかィ、土方さん。あんたも好きだねィ……けどすいやせん、今月ピンチなんで……また落語のCDまとめ買いしちまいやした」
ずらっと並べたそれを見せると土方さんは軽く舌打ちをする
「んだよ、つれねぇな……お前若いんだから溜まるだろ、奢ってやるか?」
「あんたにそんな貸し作ったら後が怖いんでさァ。大丈夫ですよ、一人でもできやすし」
あえて右手を卑猥に動かすと、はいはいと呆れて土方さんは戸を閉めた
こうやって何回切り抜けた事か
遊郭に誘われる度に、いや誘われる前にCDを買って金欠を装う
おかげで部屋は落語のCDだらけだ
「………はぁ……」
また新しい噺を聞きながら眠りについた
「今日は非番なんでさァ、だから昼飯いいだろィ?」
次の日、芽衣が勤める飲食店に開店と同時に押しかける
まだ客のいない店内に、案内してくれるのはもちろん芽衣だ
「昼飯いいだろって……ここで食べてくれるんでしょう?総悟くん」
メニューを広げてテーブルに置くと、今日は何にするの?と横から芽衣が覗く
じゃあこれでと指を差して水を飲んだ
「今日は……何時に終わるんでィ?」
「んと……早番だから五時だよ?」
「そ、か……ならそのあと……」
「まっすぐ帰るよ」
ニコッと笑って新たな客に向かった
あの人に会いたくないが為に、極端に外出を嫌う
そうだとわかってるはずなのに、自分が避けられてるんじゃないかと不安になる
実際嫌がられてるのかもしれない
どう足掻いたって結局俺は土方さん側の人間なんだから
土方さんのせいで足踏みする俺の恋
ドS王子の名が廃る
なんて人のせいにして、ただのヘタレ王子に改名した方がよさそうだ
夕飯もここに来た
もちろん芽衣はもう帰ったあとだけど
昼間より賑やかな店内の隅のテーブルにつくと、芽衣の替わりのパートのおばちゃんが水を持って来る
「芽衣ちゃんもう上がったよ」
「知ってやす……あ、カレー……いや、カツカレーで」
はいよ、と中に引っ込むおばちゃんにすら知られている
ここに通いつめてどのくらいたったのか
もはや芽衣以外に俺の好意は筒抜けだった
姉の影響で辛いものが得意な俺は、辛口のカレーをパクパク頬張る
今日はカツカレーにした
肉が食いたいとかそんなんじゃない
ただの願掛け
そんなにも外に出るのが嫌ならば、もう押しかけるしか方法はない
芽衣の家まであと30分
カツカレーは美味かった
.