俺の女
名前変換について
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大抵の女はわかってて近寄っている
あの人はモテるから
女なんて腐る程いるから
同意の上で"大人の関係"で終わっている
でも芽衣は純粋だった
普通にあの人に恋をして
勇気を出して声をかけたら、たまたまひっかかった
丁度溜まってたに違いねぇ
それで一度だけ肌を重ねた
起きたらもう居なかった
名前も何も告げなくて、次に顔を合わせたら『はじめまして』と言われた
芽衣は奈落の底に突き落とされた
「芽衣?何ぼーっとしてんでィ、茶が冷めちまう」
団子屋の椅子に腰をかけている俺は、絶賛サボり中
何ヶ月か前、この芽衣と知り合った
雨の中フラフラ傘もささねェで歩いていた所を俺が保護した
雨粒のせいで、泣いてるとわかったのは雨宿りに屋根の下に入ってから
「……冷めた方が飲みやすいんだもの……いいでしょ?」
そう言って一気に茶を流し込む喉がなまめかしいと思って見惚れた
保護をした時、泣いてる事情なんて聞かなかった
興味なんてなかったし、ただ仕事の一環としてそういう行動をとっただけ
だけどパトカーに芽衣を連れて行くとそれも一転
運転席の土方さんを見るや、ドアを勢いよく開けて逃げ出そうとした
何かあると察しがつく
芽衣を捕まえるとパトカーには戻らずファミレスに入った
周りが煩くて逆に落ち着くと芽衣が言ったから
そこではじめて話を聞く事になったわけだが、別段驚く事はなかった
芽衣が話した事はいつもの事で、そう日常茶飯事
遊郭に行けば女を買うし、そこで何が行われているかは子供だって知っている
行きずりの女だってそれと同じ
芽衣も同じ
ただ芽衣が純粋過ぎただけ
土方さんと遊ぶには覚悟がなかっただけ
「そりゃあそうだろィ」と言ったら「どうして?」と泣きながら言われた
「もう一本団子食えよ」
ううんと首を振る芽衣
「総悟くん、お仕事しないと怒られるよ?」
笑いながら言う芽衣は、しっかり自分の分だけ勘定を済ませた
「じゃあね、またお話しようね」
「あ、や……芽衣っ、俺……この見回り終わったら上がりなんでィ。一緒に晩飯でも……」
また首を振る
「夜は綺麗なお姉さんがいっぱいいるもの、私はおうちで食べるよ」
一瞬冷たい顔が見えて、また笑った
そして振り向きもしないで帰っていく
今も忘れられない
忘れたくても体が覚えてる
ごく普通の恋を
淡い想いを踏みにじられた
悲しい初恋
それを知ってる俺の初恋は、どうすれば実るんだろう
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