隠し事
名前変換について
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
暫く沈黙が続いて、互いの心音まで聞き取れそうなくらい静まり返っていた
気を紛らわせ様と煙草の箱に手をかけた時、奴は帰ってきた
「近藤さんっ……!!」
動揺する芽衣を制して聞き耳を立てる
わけのわからない喚きを発して完全に酔っ払っているパターンだ
「ちっ……」
舌打ちをして警戒に入ろうとするも、芽衣が自ら出て行こうと障子に近寄った
「馬鹿野郎!!行くなっつってんだろ!!」
「離して下さい土方さん!お願いだから離して!!」
両腕を抑え暴れる芽衣を必死に止めるも口だけは止まらない
「近藤さん!近藤さん……!!」
「違う!アレはお前を呼んでるんじゃねぇ!志村妙を呼んでるんだ!!」
「それでもいいから近藤さんの傍に行かせて!」
こぼれ落ちる涙は誰のせいだろうか
わかっているが行かせるわけにはいかない
だが見たくはない
芽衣の苦しむ顔なんか見たくねぇんだ
今にも飛び出して行きそうな芽衣を後ろから抱きしめて動きを封じた
「芽衣っ……行くな!頼むから行かないでくれ!!」
私情が混ざった呼びかけにも、芽衣は耳を傾けない
「お願い土方さん……離してっ……!!」
男に抱え込まれてさすがに身動きが取れなくなったものの、その心は近藤を見ている
「行かせねぇ……!絶対行かせねぇ!!」
「痛いよ……痛いです土方さん……離して下さいっ」
泣きながら俺の腕を解こうとする芽衣に力は無かった
一向に腕を緩めようとしない俺の着流しの袖を引っ掻く程度の力になっていた
頭を落とし嗚咽を繰り返すだけ
次第にそれもか細くなる
「……近藤……さんっ……」
最後にぽつりと言うと、完全に抵抗するのをやめた
少し荒い呼吸音が二つ、部屋に響いている
近藤さんはどうしただろうか
屋敷全体が静まり返って、きっと寝たのだろうと察しがついた
安堵でようやく腕の力を抜く事が出来る
出来るはずだったが俺はしなかった
そのまま芽衣を抱きしめ続けていた
「……土方さん、もう大丈夫です。もう私行きませんから……離してくれて結構です」
小さく喋る芽衣の言葉は聞こえている
それでも俺は動かない
「土方さん……?」
「芽衣……」
「は、い……」
くるりと反転させて向かい合う
やっぱり顔面ぐちゃぐちゃになっていて見るのが辛かった
「なんですか土方さん……」
今更なんですかもねぇと思ったが、やっとちゃんと話す気になったかと思うと少し嬉しかった
「……お前……ちゃんと近藤さんに言えよ」
身体を強張らせて芽衣に緊張が走ったのがわかる
「……私の……した事、ですか……?」
ゆっくり首を横に振ると、もう一度視線を合わせてこう告げた
「近藤さんに好きだって言え」
.