隠し事
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それから数日間、芽衣は俺を避けていた
当たり前かもしれないが最低限の言葉しか交わさない芽衣の態度に、らしくないと思いながらも幾分か傷付いたりして
そしてある夜、何日ぶりかのあの台詞を聞いた
「トシ、これからお妙さんの処に行ってくるよ!」
ドクンと胸が動揺して、さりげなく引き止めてみる
「こ、近藤さん、今日はよしたらどうだ?ほら……この前起きたら身体中に擦り傷あったの記憶にねぇんだろ?大分酒に弱くなっちまったんじゃねぇのか?あんまり無理されるとこっちに迷惑かかるからなっ……」
自分が突き飛ばして付けた傷を、さも知らない体で語る俺はやはり卑怯者だ
結局近藤さんには何も話していない
翌朝起きた近藤さんにいの一番に会ったがまるで覚えていなかった
なんか身体中が痛い、としきりに繰り返すだけでそれ以上は何も覚えてない様子
本人に打ち明けると豪語していたにも拘わらず、安堵した自分がいた
「俺が酒弱いだってぇ?そりゃお前だろトシ。最近店に行ってなかったからな~……しっかり売上に貢献してくるつもりだ!」
どんな意気込みだよとツッコミたかったが、それよりなんとかしなくては
「そうだ近藤さん!今日は俺も連れてってくんねぇか!?久しぶりに上司と盃を交わすのも悪くねぇだろ!?」
とっさに出た言葉にしてはまともだったと思う
ただし不本意だが
「んん~?いいよトシ、無理すんな!大体お前、今朝総悟のせいで始末書が溜まってるってぼやいてただろ!夜遊びはまた今度な!」
「いや、それはっ……」
というか手伝えよと再び返したかったが近藤さんはすでに俺の前に居なかった
止められなかったと頭を掻いていると、前から芽衣が歩いてくる
「……おい……近藤さ「たった今お出かけになられました」
目も合わさずに答える
「またふざけた事するんじゃねぇぞ」
「……土方さんには関係ありませんので……」
無愛想にそのまま行こうとする腕を掴んだ
「……関係ねぇって問題じゃねぇだろうがっ」
逃がしはしないと手に力が入る
「ご心配頂けるのは嬉しく思います……でも土方さん、私……近藤さんが好きなんです」
今度は真っ直ぐ見つめくる
偽りの無い言葉と瞳で
「……好意を抱いてるからってなんでも許されるわけねぇだろ!もし近藤さんが自分のした事に気付いたらどうするんだ!一生十字架背負わす気か!?」
「近藤さんは気付きませんよ、私と土方さんさえ黙っていれば」
脅しとも取れる台詞に言葉を無くした
芽衣はそのまま部屋へと戻る
取り残された俺は動けずにいた
愛だの恋だのガラじゃないのはわかっている
己の気持ちを打ち明ける事さえ出来ない自分に、他人の行動をどうこう言う資格もないのだろう
それでも相手は芽衣なのだ
自分が惚れた女なんだ
アイツも言葉に出来ないからこそこんな事になったに違いねぇ
だったら
だったら俺が導いてやればいい
今夜全てを終わらせよう
そう決意して拳を握った
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