隠し事
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あれからひと月が経った
今俺は門前で近藤さんと芽衣と、三人で立っている
「……あの、よ……芽衣ちゃん……本当に行くのか?」
「はい」
背中に風呂敷を背負った芽衣はすんなり答えている
「考え直してくれねぇかな!?みんな寂しがってんだよ!」
「だって……気まずいですから」
「うっ……」
近藤さんの困った顔を見ると芽衣は優しく微笑んだ
「近藤さん、もうお部屋にお戻り下さい。今日は片栗虎様がいらっしゃると申しておられたではないですか?私に構わずご準備をなさって下さい」
しかしとぶつぶつ言う背中を押して屋敷に戻そうとする
「大丈夫だ近藤さん、俺がしっかり送っておく」
俺の言葉も後押しとなって、何回も後ろを振り返りながら近藤さんは姿を消した
「………で、本当に行くのか……?」
「皆さん何回聞くんですか、この格好が冗談だとでも?」
クスクス笑う芽衣はもうなんの躊躇いも無いようだった
「……土方さんには本当にご迷惑をおかけしました。いくら謝っても謝り足りませんがどうかお許しを……」
そうして深々と頭を下げる芽衣をかわして切り出す
「……近藤さんに言ったんだな」
想いを打ち明け、わかっていたが綺麗にフラれて……
その結果が出ていく、か
恨むぜ近藤さん
「近藤さんてばおかしいんですよ?答えなんか出てるくせに『一週間考えさせてくれ』って言うんです。せっかくだから一週間考えてもらいました、私の事」
あの夜遊びがぴたりと止んだ一週間の事かと思い返す
「くそ真面目だろ」
「はい、くそ真面目で可愛い方です」
その目は愛しい人に想いを馳せている
目の前の俺をすっ飛ばして
「……ではそろそろ行きますね。土方さんも近藤さんに付き添うんでしょう?どうぞお戻り下さい」
「あぁ……そうするわ」
もう一度お辞儀をすると俺の知らない行き先へと歩み始めた
きっともう二度と会うこともないんだろう
それでいいのかもしれない
会えばそれだけ胸がざわめくから
「芽衣!」
少し離れた所からの返事は小さめで聞き取りにくい
それは自分の心臓の音のせいかもしれない
『ちゃんと言え』と叫ぶ心臓の
「…………好きだ」
たった三文字に眩暈を覚えて返事を待った
なんて返ってくるか、わかりきっている返事を
「ありがとうございます……でも私……近藤さんをお慕いしております!」
屋敷の中にも届きそうな声量で返される
これだから吹っ切れた女は恐ろしい
強がりとは違う笑いが込み上げてきた
「……知ってる」
「それ……私も近藤さんに言いました。奇遇ですね土方さん!」
悪戯っぽく笑うと止めていた足を進めた
どんどん背中が小さくなる
色も形もわからなくなって、ただの点になっても見送り続けた
屋敷に戻って近藤さんの手伝いに加わった
とっつぁんが来るってのになんの手筈も整っていない事にうんざりしながらも、どうにも憎めないのがこの人の魅力かなんて思ってみたりして
「トシ?何笑ってんだ?」
全くもって敵わねぇ
完璧にフラれた
.
終
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