若気の至り
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酒の味が口いっぱいに広がっていく
唾液に混ざって舌に触れられて、飲んでもいないのに酔いそうだった
仕事柄、男に身体を触られる事がなかったわけじゃない
それにしたってこんなことは今までにない
息が続かない程唇を奪われて、否が応でも吐息が溢れる
流石に苦しくて胸板を叩いて抵抗した
濡れた唇が糸を引いて、案外呆気なく離れた
肩で息をしながら言う
「お、お客さん……!いきなり何をっ……」
「……嫌ならもうしねぇよ」
それって言うの遅くない?
私の目がそう訴えているのを読み取って、悪ぃと言いながら耳に髪をかけてきた
嫌なら、と言いながら離れはしない
腰に腕を回されたまま、ゼロ距離で口説かれた
「なぁ……抱いてもいい?」
「そんなこと急に言われてもっ……」
「キスは許してくれたじゃん」
「それは!貴方がいきなりっ……ちゅっ」
額に柔らかい唇が触れて、咄嗟にそこを手で覆う
開いた口が塞がらず、口をパクパクさせながらニヤリと笑う顔を凝視してしまった
いきなりしてきたり許可を取ってきたり、翻弄されて頭がおかしくなりそうだ
真っ赤であろう頬に手を添えられて、視線を合わせられずにもじもじしてしまった
「……いいってことね」
何故かはっきり断れないで、それにも返事をしなかった
手を引かれて歩き出す
近場にあった空いている長屋に連れ込まれ、戸を閉めれば誰の目も気にしなくていい
古い長屋を風がカタカタ揺らす音よりも、二人の荒い呼吸の方が煩かった
埃っぽい床に寝せられて、貪るように口づけを交わす
同時に帯を緩められて、あっという間に肌を晒した
灯りがなくて良かったと思ったのも束の間
指先で、舌先で
触れられる感覚に大きく身体が跳ねる
上がる声もどんどん大きくなって汗が滲んできた
押し寄せる快楽に意識を飛ばされないようにと、必死にしがみついて彼を受け入れる
ただ性欲を満たしたいが為にしている行為かと思いきや、この人は優しく私を抱いた
例え行きずりであっても、気の迷いだったとしても、今だけはまるで恋人同士かと思えるくらいに、優しく丁寧に抱かれた
果てた後の口づけは、まさに勘違い出来る程甘かった
「……いきなり悪かったな」
「……今更過ぎません?」
「お前に一目惚れしたんだよ」
「適当な人」
二人で寝そべりながら小さく笑う
客とこんな関係になるなんて、想像すらしていなかったがこれが現実
身体を起こして背を向けて、床に転がる着物を羽織り直した
その背中に感じる視線
「……また店行くから」
「ご贔屓にして頂いてありがとうございます」
「そしたらよ……」
「…………」
背中から抱き締められて、首筋が吐息で湿った
「……またシよ?」
そのまま首筋に吸い付かれて、約束と言わんばかりに跡を残された
子犬のように懐かれて、擦り寄ってきた銀髪頭を撫でて無言で応える
首筋に、耳に、髪に
マーキングをするように唇を落として私をくすぐる
この人は甘えん坊なのねと勝手に解釈して身支度を整えた
誰かに見つかる前にこの空き家を出なければと少し警戒しながら戸を開ける
幸い夜も更けてきたこともあって人目につくことはなかった
そろそろお別れの時間だ
腰に回っていた手を解く
「……お客さん、一つ聞いてもいいかしら」
「ぁん?」
「……名前、何ていうの?」
離したばかりの身体を近付けて、あのやらしい口がゆっくり開く
「坂田銀時」
「……私は零っていうの」
「可愛い名前だな……」
そう言って、また引き寄せられる唇
何度交わしても腰が抜けそうになる甘いキス
溺れてはいけない酒の味を、覚えてしまった夜だった
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