寝不足③
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布団を敷いて、明かりを小さくして
横になった私達はわずかな光の中、黙って向かい合っていた
もう三度目の添い寝だけど、さっきの沖田隊長の時とは比べ物にならないくらい心臓が煩い
いつも通りだとこの後これ以上に近付くはず
それを考えれば息さえまともに出来なくなりそうだった
「で……」
「……で?」
「総悟とは……どうやって……」
「あぁ……添い寝のことですか?」
「ん……」
私が返すと土方さんの腕が腰に回った
くいっと引き寄せられて身体が触れ合う
もちろん顔も近くて目の行き場に困る
それに気付いたのか土方さんが胸にそっと頭を押し付けた
未だ慣れないこの体勢に、目を瞑ってそっと頭を預けた
「実を言うと……沖田隊長とは無理でした」
「無理?」
「はい……」
どういうことだ?と腕の締め付けが言っている
コホンと小さく咳払いをして、その心情を吐露した
「布団には入ったんですけど……こうしてくっつくことも出来ませんでしたし……部屋を暗くするなんて考えられなくて」
「ならどうやって……」
「黙って天井見てました」
「……寝る気ないだろソレ」
「はは。沖田隊長には本当に申し訳ないです……無駄な時間を過ごさせてしまいました」
脱力した口調で言えば土方さんが喉の奥で笑った
そしてまた髪を撫でて満足そうに言う
「だから言っただろ。興味本位か知らねぇが、浮気なんてするから」
「ち、違いますよ!成り行きです!部下として断わるわけには……!」
「はいはい、そーですか」
「う、浮気じゃありませんっ……」
「どうだか」
あまりにもからかってくるから身体を離して顔を覗き込む
そんなんじゃないと薄暗い中でも伝わるだろうか
土方さんはまた笑って、私を見つめてきた
「覚えとけ。お前の添い寝は俺しか出来ねぇんだよ……」
胸に押し付けられるのではなく、すっぽり身体を包まれる
丸まって脚も交差して、土方さんの顔が私の首筋に埋もれる
その髪の毛がくすぐったくて、真似するように私も土方さんにしがみついた
「……やっぱり土方さんがいいです」
「だろ?」
「……もう浮気しません」
「あ?浮気だったのか?コラ」
「……冗談です」
「あんなぁ……」
軽くからかったつもりが土方さんの癪に障ったらしい
浮気浮気と言ってきたのはそっちなのに
私がその単語を使うのはお気に召さないようだ
「生意気なコトを言う奴には……仕置きだな……」
「え……」
近くですぅっと息を吸い込む音がして、何かと思った瞬間耳に刺激が走る
カリッと耳に歯を立てられて、感じたことのない刺激に身体が反応した
「あ……!?」
そのまま温かいものが耳に触れる
それが舌だとわかったのは耳の奥に響く湿った音のせいだった
「ななななななな何して……!?」
私の奇声を無視して土方さんが続ける
耳の輪郭を舌でなぞって
耳たぶを甘噛みして
くすぐるように舌先で舐めて
ゾクゾクする感覚が背筋を通り抜けて頭を痺れさせる
それから逃れようと何とか肩をすぼめて抵抗した
「ゃ……ちょっと……土、方、さんっ……」
「何って……仕置きだろ?」
「こんな、コト……んんっ……」
「まぁ……添い寝には関係ねぇな」
ぬるりと唾液混じりの舌を離して、蕩けた耳が解放された
朦朧とした意識の中、土方さんの着流しをぎゅっと握り締めて惚けたまま呟く
「ダ、ダメですよ……眠れなくなりますっ……」
「……悪かったって」
耳元で言われて小さく頭を縦に振る
意表を突かれた大人な行為に心臓が爆発しそうだ
熱くなった身体を引き寄せられて、二人の心音が重なったような気がした
落ち着け落ち着けと言い聞かせて、ようやく添い寝の体勢に入った
上機嫌の土方さんが私を寝かし付けようと背中をトントン叩く
煩かった心臓も心地よいリズムに導かれて、いつの間にかウトウトしてきた
それは背中なのか心音なのか、まどろみの中で判別は難しい
眠りたいけれどこの感覚を味わっていたい
土方さんに抱かれたまま、意識を保っていたかった
「……ん…………」
「…………寝たか?」
一定のリズムで呼吸をする零を確認して手の動きを止めた
もう大丈夫だろ
そう思うと一つ大きなため息が出た
あの時は本当に焦った
総悟に零を奪われて、焦るわ腹が立つわで混乱した
勝手に部屋にまで押しかけて、二人揃った姿を見れば嫉妬に駆られた
浮気なんて言葉を持ち出して、一人でテンパるにも程がある
「はぁ……」
終いにゃなんだ?
俺は今、零に何をした?
仕置きだと言い聞かせて耳をっ……
「これ以上歯止め効かなくなったらどうすんだ……!」
猛省するも身体は疼く
目の前にいる零をもう一度抱き締めてその存在を確かめる
無理矢理添い寝をしてるわけじゃない
零も望んでしていることだ
だってさっき
「土方さんがいいです」
って言われたし
今晩の出来事を思い返せば色々恥ずかしくなって顔が熱くなった
最早これは添い寝とは言わねぇ
こんなに密着して抱き締めて
身体に触れたくなる気持ちは膨れ上がるばかり
そんな状態で眠れる零もどうかと思うが……
「ま……浮気じゃねーんなら許すか」
いつまでも疑似恋愛をしているわけにもいかない
感情が態度に出て、そろそろ誤魔化しが効かなくなってきた
添い寝と言い訳をして零に触れるのも限界がある
それでも今日は、このまま零の温もりを感じていたい
「……ったく……どっちが添い寝されてんだか…………」
いつもなら寝付ける時間ではない就寝に、瞼がとろんと落ちてくる
開けようにも開かなくて、意識がどんどん遠退いていく
まぁいいか
明日の朝二人して
自分の方が寝顔を眺めていたと、言い張って相手を赤く染めてやればいいだけだ
終
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