上司と部下
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隊士を侮辱した言い方になってしまったからか、零が俯いたままだ黙ってしまった
そんなことは気にしなくていいのに
お前の言葉じゃないのはわかっている
「……そんな男とは別れて正解だ」
と言いながら、泣いていた零を思い出す
どれだけ酷い言葉をかけられても、好きと言われればそれまでだ
まだ未練があったから泣いていたのだろう
どうしてそんな男の為に零が泣かなきゃいけないのか
行き場のない怒りと嫉妬が込み上げてきた
「なんだったんでしょうね、最初の励ましは。私が真選組に認められる度に不機嫌になって……」
「その程度の男だったってだけだ。お前に越された気になって悔しかったんだろうよ」
「一生懸命仕事してただけなんですけどね……真選組に入った時、一緒に喜んでくれてると思ったんだけどなぁ……」
想い合ってた頃の男を思い出して、零の目に涙が溜まっていく
何とか流れないように上を向いて、天井に目を向けていた
「……そんな男を想って泣くな」
「でもっ……いい思い出もあるんですよ?」
「…………今思い出さなくてもいいだろ」
溢れそうな涙を拭ってやろうと手を伸ばす
そんな男さっさと忘れて欲しかったが、零の表情はまだ気持ちが残っているように見えた
そりゃそうか
昨日の泣きじゃくり方を見れば、そう簡単に吹っ切れるもんじゃないんだろう
それも癪に障る
「零……」
「はい、副長」
「……胸、貸してやろうか?」
「む、胸……ですか?」
「ん。そんな奴……泣いてさっさと忘れろ」
零の腕を引いて、半ば強引に自分の胸に引き寄せた
男を想って泣かれるのは悔しい
けれどいつまでも心に棲みつかれるのは以ての外
俺の腕の中で一刻も早く忘れてくれと、無意識に抱き締めていた
「……副長……」
「なんだ?」
「こ、ここまでしてくれなくても……大丈夫かと……」
「駄目だ。さっさと泣け」
「なんですかそれっ……こんな状態じゃ泣けませんよ」
「なんでだよ」
「ですから……今日の副長は優し過ぎて……変です」
「……お前の頑張りを一番見てるのは誰だと思ってんだ。それを否定されたら俺だって腹が立つんだよ。たまに甘やかすくらいいいだろ」
ぎゅっと締め付ける腕に力が入る
勝手に差し出した胸に零を抱いて、上司としては有るまじき行為に及んだ
それから黙って抱かれる零は、泣くこともなく静かに胸に顔を預けていた
「……あったかいです」
「もっと落ち着くまでこうしててやる……」
「ふふっ……変な副長。でも、ありがとうございます」
背中に添えられた手にドキッとして、誤魔化すように零の頭に顔を埋めた
泣けないと言っていたが少し鼻を啜る音がする
だから安心させる為に背中を擦った
そして子供をあやすようにぽんぽん叩けば、零がふっと笑いを漏らした
「副長、私子供じゃないんですけど」
「あ?泣いてんだから似たようなもんだろ」
「泣いてません」
「嘘つくな。ほら、目ぇ赤くなってんぞ」
少し身体を離して顔を拝んでやる
気不味そうに逸らした目は潤んでいた
「あんまり見ないで下さい。恥ずかしいん「恥ずかしくないようにこうしててやってんだろ?」
恥ずかしがる零に最もらしいことを言って、もう一度優しく胸に抱き留めた
その意味に、自分はもう気付いていた
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