クリスマスSS
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いつもより上機嫌な神楽の声
新八の表情も浮かれている
俺の彼女の零に至っては鼻歌交じりだ
定春も頭にトナカイの角を着けられて、何度も頭を振るっている
柄にもなく万事屋内が彩られて、店主である俺は困惑していた
「銀ちゃん!見るアル!私飾り付け頑張ったネ!」
念願とばかりに手に入れたクリスマスツリーを前にして、電気を通せば眩しく光り輝いて、それにも負けじと神楽の目も興奮でギラついていた
「誰がンなもん買っていいって言ったんだぁ?無駄遣いすんなってあれ程……」
「無駄遣いじゃないアル!みんなでお金出し合ってちゃんと合意の上で買ったネ!」
「そんな口先だけの合意なんて信じるな神楽。後になって『無理矢理されたの!』なんて言われてみろ、男の弁解なんて誰も聞いちゃくれね「何の話をしてんだお前は!!そもそも零さんの前でっ……」
違う意味で興奮している新八が遠慮気味にツッコむ
零をチラチラ見て居心地悪そうに
当の零は何も気にした風もなく笑っていた
「このくらいいいじゃない。一回買えばずーっと楽しめるんだし」
「そのうち飾らなくなって粗大ゴミになるのがオチじゃなきゃいーんだけど」
プイッと顔を背けてソファーでジャンプを広げる
そんな物に興味はないとばかりに寝転んだ
「もう……機嫌悪いんだから。せっかくのクリスマスイブなのに……」
零の言葉は聞こえたが、それも全部無視
後ろで楽しそうに三人で喋る声が聞こえても、仲良く三人で料理を作る音が聞こえても、匂いがしても、頑なにソファーから動かなかった
「「「メリークリスマス!!」」」
夜、その料理達が並べられてケーキもテーブルに置かれた
まぁまぁと席に着かされた俺の前にはシャンパン
酒でも飲ませておけば機嫌が良くなるとでも思われているんだろうか
「カンパ〜イ!あ!その一番デカい唐揚げは私のネ!新八はガリガリに焦げたヤツ食べればいいアル!」
「それ神楽ちゃんが焦がしたヤツじゃ……」
勝手に皿に放られた黒い塊に姉の料理が思い浮かぶ
姉上もここに来れたら良かったのに
お店がクリスマスイベントだかで抜けられないのはわかるが、シスコン気質の弟にしてみれば少し寂しい気もしていた
「新八くんはこっちね。焦げたのは食べなくていいから」
皿に新しい唐揚げを差し出して甲斐甲斐しく面倒を見ている
もちろん彼氏にも気を回していたが、俺はそれすらも気に入らなかった
「銀時は?唐揚げ食べる?」
「…………」
ゴクリとシャンパンを飲み干して、グラスを少し強くテーブルに置いた
俺がこんな態度を取るのには理由があるわけだが、そんな事はこの三人にわかるはずもなく、そろそろ零の堪忍袋の緒も切れそうになっていた
自分だってこんな女々しい態度を取るのは見苦しいとわかっている
それでも……男心というものがあるってこともわかってほしい
「ちょっと銀時っ……」
その時
パーーーーン!!!
全員がその音のする方に振り向いた
パンパーン!!
続け様に鳴り響く音に、最初に反応したのは神楽だった
「何アルか!?新八、見に行くネ!」
「うん!」
二人して玄関に駆け出すと勢いよく戸を開けた
その瞬間、音と共に振り注いだ眩い光
冬の空に大輪の花火が咲き乱れていた
「花火アル……!」
「うわぁ……何処かでイベントでもやってるんですかね?」
玄関先の手すりに思いっきり体重をかけて、危ないほどに身を乗り出す
新八と神楽の歓声が俺の耳にも届いた
「銀時、花火だって!私達も見に行こ?」
居間から身体を出して、俺の袖を引っ張る零
つられて廊下に出てしまったがその場に留まって零の足を止めた
神楽達から離れた今、二人きりになれたのは数時間ぶりだった
「……どうしたの銀時。何かあった?」
流石に何かを察した零が心配そうに顔を覗き込んでくる
咄嗟に目を逸らしたが、このままでは埒が明かないとじっと見つめ返してみた
「……私、何か怒らせるようなことしちゃったかな?」
「いやっ……」
「じゃあさ、花火見に行かない?私も銀時と一緒に花火見たいな」
困りながらも笑ってその場の空気を何とかしようとする零が背を向けた後ろ姿を、抱き締めて離さなかったのは顔を見たまま喋れない臆病者の最後の手段だった
「ちょっ、銀っ……神楽ちゃん達いるんだよ……!?」
「わかってるって……」
背中を丸めて首筋に顔を埋めたことでわかってほしい
自分がどれだけ餓鬼臭いか自分が一番わかってることを
「……本当にどうしたの?銀時」
腰に回った腕に優しく手を添えて、わけのわからない彼氏の言動をなんとか理解しようとする零
少し黙ったあと、その優しさに甘えるようにようやく口を開いた
「……悪ぃ」
「……何が?」
「だからっ……空気、悪くして……」
「……何かあったの?」
子供をなだめるような優しい声色は、何時までも俺を待っていた
花火に魅入っている二人の黄色い声に掻き消されないように、自分の醜態を曝け出した
「本当は……」
「うん」
「今日っ……二人きりで過ごせると思ってて……」
「え……?」
近距離で振り返った零と目が合う
まさか自分の彼氏がそんなことを言うなんてと、驚きが隠せていない
そして自分は恥ずかしさで死にそうだった
「か、勝手にそう思ってて……でもなんか……三人で色々準備始めてるし……言い出せなくなって……」
「ゴメン銀時……!私全然気付かなくて……」
「言わなかった俺が悪いだろ。零が謝る必要はねぇよ」
それでも謝ってくる零をぎゅっと抱き締めた
こんな心が狭い彼氏に抱かれる気分は一体どんなものなのか
不安になりながらも答えは聞けずにそのまま抱き締め続けた
「……私もごめんね?」
「え?」
「みんなで過ごすのが当たり前になってて……銀時とのことおざなりになってたかもしれない……ごめんなさい」
「なんでお前がっ……そもそもあいつらの面倒見てくれて助かってるし、ぞんざいに扱われてるなんて思ってねぇよ……!」
そう言っても首を振る零は申し訳なさそうに下を向いていた
零を困らせたいわけでも、謝らせたいわけでもない
ただ自分の思い通りにならなかったことに気を悪くして、不貞腐れてた俺が幼稚だっただけ
こうやって真剣に向き合ってくれる零にどうしたら伝わるか
答えは一つだけとわかっている
素直に口にすれば全て解決することを
「じゃ、じゃあよ……」
「うん……」
「明日……久しぶりにデートする?」
ガバっと顔を上げた零の表情は、さっきとは打って変わって紅潮していた
「ほ、ほら、正式には明日がクリスマスだろ?恋人気分を味わうのは全然間に合「うん!する!銀時とデートする!」
今度は俺がきつく抱き締められて零の身体を受け止めた
初めからこうしていれば何も問題なかったのに
零ならわかってくれるだろうと亭主関白気取りが甚だしい
好きな女を取られた気がして餓鬼みたいな態度を取ったことが恥ずかしかった
「何処行こうか?」
「うんとね……えっと……銀時となら何処でも!」
「パチンコ屋でも?」
「もう!ふざけないで!」
怒ってみせたが顔は笑っている
俺とのデートの約束を嬉しそうに話す零が愛おしかった
「零」
「ん?なに……?」
優しく唇に触れると固まって目を丸くした
玄関の外と少し距離があるとはいえ、目の前に神楽と新八がいるのにと零が口をパクパクさせて顔を真っ赤にしていた
「ちょっ……新八くんと神楽ちゃんが居るのに!」
「いいじゃん。花火に夢中で気付かねぇよ……ちゅっ」
「んっ……!銀時……ダメだってば……んん……ちゅぷ……」
「イヤだね……明日に備えて今晩から頑張らねぇと……ちゅっ……ちゅっ……」
「ふ、んっ……も……見られちゃ……くちゅ……ちゅっ……」
「満更でもないくせに……」
結局花火は見られなくて、玄関から差し込んで来る明かりと音だけがキスの痕跡を掻き消してくれた
ニヤリと見つめれば恥ずかしそうに目を逸らす零
満足な答え貰えば暫く身体を離すことは出来なかった
「新八ぃ」
「……何、神楽ちゃん」
「絶対後ろ振り向いたら駄目アルよ」
「わかってるよ……」
終
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