溜め込まない方がいいのかもしれない
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あの日
お父様は自分の存在は邪魔だと自らを投げ捨てようとしていた
まだ間に合うかもしれないと線路に飛び込んだのは俺のファインプレーだと言わざるを得ない
互いの気持ちをぶつけ合ったこの父娘があの後どう生きていたのか、気になってはいたが知る術もなかった
まさかこんな所で再会出来るとは……もしかして、カーブというカーブは地中で全て繋がっているのかもしれない
「お父様……あんなに元気になられて……」
縁側に座る松子の隣で茶を啜る父の姿にグッと込み上げてくるものがある
熱くなる目頭を押さえて立っていると、零殿も車から降りてきた
カーブを見つめて立ち尽くす男を不審に思いなが……
「あのお二人、とても仲が良さそうですね」
「!!??」
思わず零殿に振り返る
こんな事があり得るのか
あの教習所の帰り、何度銀時に話しても白けた目を向けられた
「お前、早めに病院行った方がいいわ」
何故見えない
何故松子殿とお父様の仲睦まじい姿が見えないのだ!
あの父娘の事は自分しか認識出来ないのだと、そう思っていたのに
「零殿っ……その……み、みみみみ見えるっ……のか……?」
「え?あ……はい。仲の良さそうなお父さんと娘さんが見えますよ?こんな所にお家があったんですね」
そのほのぼのした二人を見つめながら零殿も微笑んでいる
これは完全に見えている
モグラではなく、松子殿とお父様という認識で完全に目に捉えている
どうして零殿には見えるのか、そんなことはわからないがもしかしたら俺と波長が合うのかもしれない
確かにこんな俺と仲良くなれる女性など、そうそういるものではない
俄然親近感が湧いた
「桂さん、あの方達に道を尋ねてみませんか?」
「え!?いやっ……」
「すみませ〜ん!」
なんの躊躇いもなく父娘に近付いていく零殿
勝手に庭先に入ることになってしまった罪悪感も含めて、零殿の後ろをぎこちなくついて行った
「すみません、ちょっと道をお尋ねしたいんですが……」
『あら、お客さん?こんな辺鄙な山奥で迷子になってしまったのね…………って……貴方は…………桂さんじゃありませんか!?』
『何!?桂さんだと!?』
父が立ち上がった勢いで湯呑みが転がった
飲みかけだった茶も溢れて縁側を濡らしている
「あ、あのっ……」
突如大きな声を出されて驚いた零殿は固まってしまった
なにより、自分の名前が松子殿から出たことに自分が一番驚いていた
「な、何故俺の名を……」
『忘れるわけねぇだろう!アンタは命の恩人だ!』
しわくちゃの笑顔で駆け寄ってきて、お父様に肩をポンポン叩かれる
隣に松子殿も寄ってきて、まさかの対面が叶ってしまった
『道を知りたいとか……でもその前にお茶でもいかがですか?さぁ!』
松子殿に手を引かれて屋敷へと導かれる
もつれそうになる足を庇いながら、呆気に取られている零殿に視線を向けた
「零殿……!すまない、あっちの女性も連れて行ってくれまいか?俺の連れで……」
『あぁ……お連れの方でしたね。それでは貴女もこちらへどうぞ?』
「あ、はいっ……お邪魔します」
こうして俺と零殿は、松子殿とお父様が笑顔で迎えてくれるモグラ邸へ案内されたのだった
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