ヲタク心に火をつけて
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おばあちゃんが怪我をした
買い物帰りに躓いて、脚と腰を痛めた
幸い骨がどうこうって話ではないけど、歳が歳だけに回復には時間がかかるらしい
今まさに、整形外科から帰ってきた所だ
そしてそんなおばあちゃんに捕まった
「零、頼めるかい?」
「うん……でも学校終わってからだよ?」
「それでいいから頼むよ。午前中は閉めるとして……零がやれる時間だけでいいから」
「ちゃんとバイト代くれるんだよね?」
「もちろん。その代わり愛想良くね」
「もう……それが一番問題なんだから……」
布団に横になって痛そうにしているおばあちゃんを見れば出来ないとは言えなかった
急遽決まった人生初のバイト
正直客商売は自分には向いていないと思う
お金の勘定も出来るだろうか
それにおばあちゃんが言った愛想良くが難問だ
気を揉む私を安心させようと声をかけてくれるおばあちゃん
「大丈夫よ、番号で言ってもらえばいいんだから」
「それはそうなんだけど……」
よく考えればスーパーやコンビニとは比べ物にならないくらい小さな店だ
商品も限定されている
むしろそれしか売っていない
そうよ、大丈夫……大丈夫……
心で念じて初出勤である明日に備えた
そう、おばあちゃんのお店は
煙草屋だ
「あ、ありがとうございました〜……」
学校が終わって急いで帰ってきてこのカウンターに座った
ショーケースが並んでいる間から、ぴょこんと顔を出して座っている
今思えば、未成年の自分が煙草を売っていることが不自然でならない
コンビニとは違う違和感を感じる
『The煙草屋』の雰囲気に女子高生は似合わなすぎた
それでもこの一時間で数人接客をしてみたが、案外何とかなっている
おばあちゃんが居ないことを不思議がる常連さんが心配してくれて、新米の私の拙い対応を許してくれているからだ
商品が売れたからとは違う本当の感謝の意味でありがとうと言っていた
客が途絶えた間は煙草の銘柄を覚えるのに必死だった
一体どれだけあるんだと、種類の多さを初めて知った
全部同じじゃない?と文句を言いたかったがあるものはある
小さく声に出してブツブツ唱えていると、新たなお客さんが来たようだった
「マヨボロ一つ―――あ、やっぱ二箱頼むわ」
「は、はい!二箱ですね!」
呪文を遮られたのに驚いて少し声が裏返ってしまった
そしていつもと違う若い声に驚いた客も目を見張った
「あれ……いつものばあさんは……?」
「あ、あの、おばあちゃん怪我しちゃって……私が代わりにっ……」
「おばあちゃん?……あんた孫なのか。そうか……大丈夫なのか?ばあさんは」
「は、はい……おばあちゃんは大丈夫です……そこまで酷い怪我じゃないんですけど……ここにずっと座ってるのは無理な状態でして……」
「そうか……大したことないならいいんだけど……あんたも大変だな」
「いえ!私は別に……って、マヨボロでしたよね!?二箱で千円になります」
財布を開いてお金を出す客を、ドギマギしながら見ていた
黒い隊服にM字前髪
鋭い目付きと煙草が良く似合う
「ん、千円」
「お、お買い上げありがとうございます!」
「でっけぇ声。若いっていいよな。んじゃ、また来るわ。頑張れよ」
フッと笑って背を向けた
去っていく背中を暫く見つめて呆然とする
ニュースかなんかで観たことはある
同じ町に居るんだなとは思っていた
それでもっ……
土方十四郎が常連だなんて知らなかったんですけどォオオオ!!
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