雨宿り
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案の定、仕事でミスを連発した
普段の行いのせいか、大したお咎めもなく許して貰えたけど
こんな私情が表に出るタイプだっけ?と、自分の変化に戸惑った
定時を迎えて帰る支度をする
失敗続きでいい終わり方ではないけれど、明日からの二連休を思えば表情が緩んだ
久しぶりに一人で映画でも観に行こうか
急に友達誘ったら迷惑かな?
あ、新作のリップも見たいんだった
まだあるかなぁ
そうだ、お母さんにお礼の電話もしないと
なんの事?って言われそうだけど
ブツブツ頭と口で考えながらいつもの帰り道を歩く
途中、銀色のふわふわとすれ違ったのには何となく気付いていた
足を止めて、来た道を後ろ向きに戻る
あの軒下にそれはいた
「…………雨、降ってませんよ?」
「無視されたのかと思った」
しゃがんでいた身体をぐっと立ち上げて、頭を掻きながらこっちを見てくる坂田さん
少し照れた表情がまた心臓に突き刺さる
「な、何してるんですか……?」
「いや……朝、お礼のお礼とか言って何もしねぇで帰ったから……気になって」
「そんな……迷惑をかけたのはこっちです。坂田さんが気にすることじゃありません。今朝も……ありがとうございました」
頭を撫でられた事を思い出して顔を下に向ける
お礼の形となって、何も気付かれなかった
雨も降っていないのに軒下で立ち尽くす二人
何かの待ち合わせだと思われてるならいいのだけど
「あ……あのお菓子美味かった。俺和菓子好きだからよ」
「そうなんですか?ならまた持ってきますね」
「いや、お前の分無くなるだろ」
「私はいつでも食べられますから、大丈夫です」
お前と言われてキュンとした
何か特別感があって胸の奥が熱い
それを気付かれないように前を向いて帰ろうとした
お菓子を渡す
次に会う口実は出来たから
「私、行きますね」
「え!?ちょっ、まだお礼してないって」
「だからそんなものいらないって「お前の好きなもんはなんなんだよっ」
腕を取られて振り返る
慌てたような顔をして、引き止められた
「零の……好きなもん……何?」
「好きなものって……」
好きという言葉に過剰反応して顔が赤くなる
意味は全く違うのに、好きな人から好きという言葉が出るだけで胸が締め付けられた
「別にものじゃなくてもいいんだけどよっ……」
モゴモゴ歯切れの悪い坂田さんが下を向いた
もしかして自分と同じように恥ずかしさを誤魔化す為だなんて、都合のいいように捉えて嬉しくなった
「……何でもいいんですか?」
「あ、あぁ!なんでも!物でも事でも場所でも……なんでもいいから!」
ぱぁっと明るい顔になって坂田さんが見つめてくる
恥ずかしかったが今しかチャンスはない
きっと変な奴と思われるがどうでもいい
意を決してお望み通りに答えた
「そ、その髪の毛……触らせて下、さいっ……」
「は……?」
キョトンとして、なんならうっすら軽蔑もされてるような
ジロジロ坂田さんが顔を見てくる
変な事を言っている自覚は十分にあったが、もう遅い
口を真一文字に閉じて、じーっと見つめ返すしかなかった
「こ、これを?この頭を?」
「はい」
「それがお礼になるの?」
「はい」
意味がわからないと言わんばかりの顔をして、こっちに一歩近付く坂田さん
既に猫背な背中はそのままに、首を傾けて頭を差し出された
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