雨宿り
名前変換について
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夜、眠れないで布団を頭から被っていた
坂田さんて甘い物が好きなんだ
あのお菓子、気に入ってくれるかな
私は食べ飽きてるけど、結構人気の美味しいやつなんだよなぁ
あんな癖っ毛で木刀差してて甘党とか……ギャップがあり過ぎてニヤケが止まらない
今日見れた笑顔も心臓を鷲掴みにされた
「…………好き、かも……」
ちょっと言葉にしてみただけで、ぎゃぁあああと一人布団の中で大暴れ
大体たった二回しか会ったことないのに好きとかどういうつもり?
そんなわけないじゃん、と冷静に考えてみてもあの人の事を考えるだけで身体が熱くなる
最早一目惚れに近いのかもしれない
そんな事が自分に起こるとは……なんだか照れくさくなってまた布団を被った
翌朝、カーテン越しでもわかる薄暗さ
昨日から降り続いている雨は、今日も江戸を濡らしていた
「雨……」
なんだか嬉しくなって身支度を始める
多分普通の人なら憂鬱な日
気分が乗らないとかやる気が出ないとか
そんな悪いことばかりではないのに
雨が幸せを運んできてくれることもあるのに
天気予報を確認すると、雨は午前中で止むらしい
帰りは期待できない
こんな考えじゃ年がら年中雨を願ってしまうと苦笑いが溢れた
朝食も食べ終えて出勤する準備は出来た
ガスの元栓も閉めたし後は戸締まりだけ
今日が終われば明日は休日
週末は何をしようかと考えながら玄関を開けた
「よお、零」
バタンッ!!
咄嗟に閉めて固まった
今何か……何か居たような
見間違いじゃなければ坂田さんが居た気がする
そして声を掛けられたような
もう一度、恐る恐る玄関を開けてみる
ゆっくりと、心臓に負担がかからないように……
「零」
「……!!」
隙間から覗く銀髪が、にこりと笑って私の名前を呼んだ
「お、おはようございますっ……ど、どうしたんですか?坂田さん……」
「いや、昨日のお菓子のお礼と思ってよ……てか開けてくんない?」
ググッと扉に手をかけて、強引に開けられた玄関
心の準備なんて出来ていなかった
余りにも意表を突きすぎている
突然目の前に現れた坂田さんに、少し無愛想な態度をとってしまった
「お礼って……お礼をしたのは私ですよ?お礼のお礼って……」
「だってよ……気になったんだからしょうがねぇだろ」
「しかもこんな朝早くに……」
「いや、迷惑だろうなとは思ったんだよっ……でも今日は夕方に会えそうにないから……」
「別に迷惑とか思ってませんけどっ……」
何処かで見たことのあるツンデレを、リアルでやるのはお勧めしないと心から思った
可愛くない
自分にガッカリして鍵を閉めた
「あ、傘忘れた」
「いいって、俺のに入ってけよ。昼間から晴れるらしいから荷物になるぜ?」
スッと傘を被されてまた相合傘になる
昨日の事もあるしで瞬時に赤くなった
問答無用で一緒に会社へ向かうことになる
名前も知らないが、いつも同じ時刻にすれ違う人達になんて思われるだろうか
恋人同士、なんて思われてたら天にも昇る気持ちだ
しとしと降り続く雨の中、やはり無言で歩き続ける
昨日とは違って雨音がどうにかしてくれはしなかった
「さ、坂田さん……今日はお休みなんですか?」
「いや、これから仕事。って、好き勝手やってるだけだけど」
今日の笑顔は苦笑い
それも可愛くて、仕事中の癒しにとインプットした
「あ、ここで大丈夫です。ありがとうございました」
「そっか……じゃあまたな」
「はい、また……」
傘を出ようとした頭に坂田さんの手が伸びてくる
ポンポンと頭を撫でられて
「仕事、頑張れよ」
と言われた
深くお辞儀をして猛ダッシュ
お陰で足元が汚れたがそんな事は関係ない
なにこれなにこれなにこれ!!!
爆発しそうな心臓に、湯気が出そうな真っ赤な顔
勢いのままロッカールームに飛び込んだ
自分のロッカーに寄りかかって落ち着けと何度も唱える
それでも心臓は落ち着かなかった
「……反則でしょっ……」
完全に「好き」が確定して、今日は仕事が手に付きそうになかった
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