雨宿り
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最初は本当に偶然だった
突然降ってきた雨にどうしようも出来ずに駆け込んだ軒下
髪は濡れるし服もびちゃびちゃ
濡れた肩を払うもほぼ無意味
「最悪っ……」
ザーザーと振り続ける雨に、その言葉は聞こえないと思っていた
「ホントにな」
横から相槌が入って驚いて顔を向けた
銀髪から滴る雫を忌々しそうに振り落としながら、あーだのこーだの言っている
その水滴が私に届いて顔が濡れた
「あっ……悪ぃ」
「いえ……こんなに濡れてたらわかんないですよ」
もう全てを諦めている
きっと財布の中のお札だって被害に遭っていると、後始末を思ってため息がでる
下を向けば足元も泥だらけ
何もかもが嫌になって空を睨み付けた
「ちょっとこっち向いて」
横からかかった声に何も考えず振り向いた
目の前に何かが迫って、思わず目を閉じた
銀髪さんが、着ている着物の袖を絞って顔にあてがって来る
冷たいと感じたがそれも一瞬だった
「ちょっ……いいですって!着物汚れちゃいますよ!」
「いいからジッとしてろ。こんなもんで悪いけどな……」
濡れた私の顔をまじまじと見ながら雫を拭き取っていく
知らない男の人に触れられて、それがあまりにも至近距離で、思わず鼓動が高鳴った
「……よし、これで少しはマシになったな」
「あ、ありがとうございます……」
「ったくよ……酷ぇよな、急に降ってきやがって」
「天気予報でも言ってなかったですもんね」
「結野アナでも外すことあんだな」
他愛もない話で場を繕うも、雨は一向に止みそうにない
もう一生ここに立ってなきゃいけないのかと、さすがにうんざりした
「アンタ……家近いのか?」
「まぁ……ここから歩いて十分くらいですかね」
「ならよ……もう諦めねぇ?俺も腹括るし」
「どういう意味……」
答えを聞く前にそっと身体を引き寄せられた
銀髪さんの背が大きい分、私に覆いかぶさって背中を押された
「走れ!!」
「え!?」
土砂降りの中、何が何だかわからないまま駆け出した
拭いた顔も意味がない
雫を払った髪も意味がない
全てが台無しになって無我夢中で走り続けた
雨に打ち付けられながらチラッと顔を見つめた
ニヤリと笑顔を返されて、ドキッと下を向いて雨に負けずに叫んだ
「もう!何なんですかコレ!」
「何だろなぁ!もうめちゃくちゃだよ!」
「最悪です!」
「最悪だな!!」
文句を言いながら笑顔の二人
喚きながら私の家まで走り続けた
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