ヴィル監
わいわいがやがや。みんなの楽しそうな声がする。カードゲームに勤しむ声。流行について情報交換をする声。魔法についてなにやらむずかしいそうな議論を交わす声。そのどれかの輪に加わりたかったけど、とても眠たくて動けない。今日は意見交換会という名のどんちゃんパーティーだとケイト先輩が言っていたのをリドル先輩が咎めてたっけ。堅苦しいのは最初だけ。真面目な話はそこそこにみんな好きなものを食べて飲んで盛り上がる。そんな話を聞いたらわくわくして昨日はよく眠れなかった。そういうわけで私は寝不足気味だ。部屋に所在なさげに置かれたソファの上で膝を抱えてぼんやりしていた。今にも目蓋と目蓋がくっつきそうだ。ああでもエースたちゲームで遊んでる。楽しそうだ。アズール先輩とラギー先輩は何を話してるんだろう。ああでもねむいなあ。ささやかな反抗は虚しく私の意識は沈んでいった。
誰かに肩を叩かれた。
「───?」
誰かに話しかけられているが眠くてよく聴きとれない。今度は優しく揺さぶられる。
「───せい。───に───わよ」
なんだかよく分からないけれど早く夢の中にもどりたかったので適当にうなづいた。するとふわっと体が浮く感じがした。なんだかいい匂いもする。心地良くって思わず頬をすり寄せるとびくっと何かが跳ねたような気がした。しばらくすれば何事も無かったかのようにゆらゆらと揺れだしたので、心地いい振動に身を任せてまた私は眠りに落ちていった。
ぎゃーっと悲鳴にも似たカードゲームに勤しむ声。穏やかに談笑しているように見せかけて悪巧みを企む声。魔法についてマニアックなことについて興奮気味に話し合うの声。どこの輪にも加わるのは遠慮したいわね。意見交換会という名のどんちゃんパーティー。寮の垣根を超えて様々な意見を交わし、切磋琢磨を促すのが目的らしいけど……。真面目な話はそこそこに各自おもいおもいに過ごす。もはやレクリエーションの一環となっている。まあ、生徒たちの親睦を深める意図もあるだろうし、結果オーライなんでしょうけど。
そろそろ部屋に戻ろうかしら。ハーブティーを飲みながら部屋の様子をぼんやり眺めていたらソファに縮こまっている監督生を見つけた。魔法が使えない猛獣使い。性別を偽って元の世界に帰る方法が見つかるまでこの学校に居座ることになった不思議な子。あまりにもやぼったいからつい世話を焼いてしまっているけれど。言いつけはしっかり守るし、なによりとっても素直だ。美容にはもともと興味があったようでそのうち自分から色々と聞いてくるようになった。最近はアタシを見つけるたび嬉しそうに「ヴィル先輩!」と駆け寄ってくる。そんな彼女のことは好ましく思っている。
流石に女の子をこんなところで寝かせるわけにはいかない。ただでさえ、やっかいごとに巻き込まれやすいのに。ほんとに危機感がなってないわね。ちょっかいをかけるのに飽きてきたのかルークもアタシの元に戻ってきたことだし。
「ルーク。アタシは監督生を連れて行くから、後は任せたわよ」
「ウィ。ヴィル。寮生たちには早めに引き上げるように声をかけておくよ」
それでは良い夢をと、きざったらしいウインクをひとつ贈られる。アタシはルークが寮生たちに声をかけに行くのを確認してから、監督生の元に向かった。やだ、こんなところでよく眠れるわね。すやすやと心地良さそうにねむっている。あまりにも気持ちよさそうにしているので起こしてしまうのを戸惑うほどだ。少し迷ったが肩を軽めに叩く。
「ちょっと。監督生?」
反応なし。今度は揺さぶってみると。うう……と呻き声が漏れた。
「監督生。オンボロ寮に運ぶわよ。いいわね」
目を瞑ったままこくんとうなづいた。アタシの言ったことがちゃんと理解できているのか怪しいところだけど。他の生徒に目をつけられるよりマシでしょ。良かったわね、優しいアタシに助けられて。脱力しきったからだはまるで人形みたい。完全に油断しているのね、呆れた。物語のお姫様みたいに抱きあげる。すると彼女は頬をアタシの体にすり寄せてきた。思わぬ挙動に立ち止まった。飼い主に甘える子猫のような素ぶりに、じわじわと胸の中で甘やかな感情が湧くのを感じた。これじゃあ、アタシまるで……。やめた。今は気づかないふりをしていたほうがよさそうね。こんなにアタシの気持ちをかき乱すんだもの。少しの仕返しぐらいいいわよね。ちゃあんとオンボロ寮に向かうつもりだったけれど、気が変わった。警戒心のない自分を恨むことね。高らかにヒールを響かせてアタシは監督生を連れて自室に戻ることにした。
「う……」
いつもと違う柔らかなシーツと花の様ないい匂いで目が覚めた。違和感に眉をひそめうっすらと目を開ける。「あらおはよう。」朝の光に包まれた女神と見紛う美貌の人が私を見つめていた。ここはどこ。オンボロ寮じゃない。
「え、え、なんで。ヴィル先輩が!?」
昨日はちょっとしたパーティー的なのをやっていて、私はずっと眠たくてソファにいて。それからそれから。昨日のことを必死になって思い出していると彼はクスクスと笑ってこう言い放った。
「だって、アナタがアタシを求めてきたんじゃない」
そう言いながらヴィル先輩は自身の肩を抱きしめた。そしてゆっくりと、上質なガウンからのぞく白くて美しい腕を長い指でなぞっていく。まるで映画のワンシーンのようだ。あまりの色っぽさにぞわぞわっと鳥肌がたった。ひえぇ。なんて情けない声が漏れる。
「も、申し訳ございませんでした」
広い広いこのベッドの上で土下座をかます。2人がベッドの上にいても、スペースはまだまだ余っている。寮長の特権ってすごいなあ。
「まあ冗談はこのぐらいにして。」
ヴィル先輩はずいっと近づいてきた。
「あんなところで寝ないの」
「……はい」
「アタシが優しくてほんと良かったわね。ほらさっさと身支度なさい。アンタの頭、荒れた庭の雑草みたいにはねてるわよ」
一体どんな跳ね方なんだ。先輩に促されて私はオンボロ寮に戻って身なりを整えるために出て行こうとしたけれど、「ねえいくらなんでもそれで外を出歩くなんて承知できないわ」と先輩自ら髪を直してくれた。気を取り直して出て行こうとしたら、「待って。アンタ似合うメイクを思いついたの。せっかくだからお化粧させて」とまた引き止められてしまった。いやいやこれ以上居座るわけには……とやんわり断ると、アタシのメイク技術が気に入らないのとむくれてしまったので慌ててドレッサーに前に座らせていただいた。念入りなスキンケア(血行を良くするマッサージ付き)をされた後、宝石みたいなコスメたちで私の顔を彩ってくれた。先輩が持つブラシたちが魔法の杖に見えたので、思わず魔法使いのようだと呟くと先輩は眉を下げて笑った。仕上げにと香水を振りかけられたら完成だ。鏡に映った自分の顔を見て驚いた。ナチュラルな色合いのアイシャドウは瞬きするたびに美しいグラデーションが見える。頬にはじゅわっと内側から広がったような淡いチークがのせられていた。極めつけは唇で、思わず触れたくなるような化粧が施されていた。美の探究者の手にかかればこんなにも変わるものなのかと、思わずまじまじと自分の顔を見つめる。
「完璧ね」
私の髪を撫でつけながら、ヴィル先輩も鏡の中の私を見て満足げに呟く。
「テーマはなんだと思う?」
「ジャガイモからポテトサラダに変身メイクですか」
あははとまたヴィル先輩が笑う。今日の先輩はよく笑う。まだすっぴんなのも相まって、余計に幼く見える。
「違うわよ。もっと素敵なもの」
髪を撫でる手が肩に載せられるとまるで内緒話でもするように耳元に唇に近づけてきた。
「テーマは眠り姫よ」
優しい低い声で囁かれる。私は真っ直ぐ前を見つめることしかできなくて、鏡の中のアメジストの双眼と目が合う。
「王子が思わず口付けてしまいたくなるようなプリンセス。目を瞑って真実の愛を待っているの」
目はうっとりと夢心地に細められ、口元はかすかに弧を描いている。その視線の先には私がいるわけで。
「ずるいわよね。こっちの気も知らないで、眠ったまま人を惑わすの」
「あ、あの……」
「ねえ、お姫様。ちょっと目を瞑ってごらんなさい」
優しいけれど、有無を言わさない声に目を瞑ってしまう。ヴィル先輩が動く気配がして、髪がさらさらと頬にかかるのを感じる。吐息がかかるほど近くにいるのがわかって、体が固くなる。まってまさか。
むにゅ。
唇に柔らかいものが当たった。驚いて目を開けると。
「やっぱりリップが濃かったわね。スポンジで抑えてちょうどいいくらいだわ」
右手に淡く色の付いたスポンジを持ったヴィル先輩が目に入った。先ほどの柔らかいものの正体はこれだろう。一気に体の力が抜ける。今までの甘い雰囲気はなんだったんだ。
「ひ、ひどい……」
「何がよ。アンタがもっと美しくなるためにやってあげたんだから感謝なさい」
「だからって目をつぶる必要無かったですよね」
「あら聞こえなかった?眠り姫なんだから目を瞑ったときも美しくなくっちゃ」
今先輩が浮かべている笑顔はいつもの意地の悪い顔だった。ちょっと先輩のことをかわいいなと思っていたことは無しにしよう。さて、先輩の気も済んだことだし、さっさと出て行こうとするとまたもや呼び止められた。
「あらあら、もう出て行くなんて恩知らずな子。身支度を整えてあげたんだからアタシの準備も手伝いなさい」
「え!?私不器用だから何もできませんよ」
「じゃあ手伝えるように仕込んであげる。そこで待ってなさい」
結局小言を言われながら着替えにメイクまで手伝わされ、部屋を出る頃には寮生たちが廊下を行き来する時間帯になってしまったいた。ヴィル先輩の部屋から出てきた私を目撃したポムフィオーレ寮生に問い詰められたのは言うまでもない。
誰かに肩を叩かれた。
「───?」
誰かに話しかけられているが眠くてよく聴きとれない。今度は優しく揺さぶられる。
「───せい。───に───わよ」
なんだかよく分からないけれど早く夢の中にもどりたかったので適当にうなづいた。するとふわっと体が浮く感じがした。なんだかいい匂いもする。心地良くって思わず頬をすり寄せるとびくっと何かが跳ねたような気がした。しばらくすれば何事も無かったかのようにゆらゆらと揺れだしたので、心地いい振動に身を任せてまた私は眠りに落ちていった。
ぎゃーっと悲鳴にも似たカードゲームに勤しむ声。穏やかに談笑しているように見せかけて悪巧みを企む声。魔法についてマニアックなことについて興奮気味に話し合うの声。どこの輪にも加わるのは遠慮したいわね。意見交換会という名のどんちゃんパーティー。寮の垣根を超えて様々な意見を交わし、切磋琢磨を促すのが目的らしいけど……。真面目な話はそこそこに各自おもいおもいに過ごす。もはやレクリエーションの一環となっている。まあ、生徒たちの親睦を深める意図もあるだろうし、結果オーライなんでしょうけど。
そろそろ部屋に戻ろうかしら。ハーブティーを飲みながら部屋の様子をぼんやり眺めていたらソファに縮こまっている監督生を見つけた。魔法が使えない猛獣使い。性別を偽って元の世界に帰る方法が見つかるまでこの学校に居座ることになった不思議な子。あまりにもやぼったいからつい世話を焼いてしまっているけれど。言いつけはしっかり守るし、なによりとっても素直だ。美容にはもともと興味があったようでそのうち自分から色々と聞いてくるようになった。最近はアタシを見つけるたび嬉しそうに「ヴィル先輩!」と駆け寄ってくる。そんな彼女のことは好ましく思っている。
流石に女の子をこんなところで寝かせるわけにはいかない。ただでさえ、やっかいごとに巻き込まれやすいのに。ほんとに危機感がなってないわね。ちょっかいをかけるのに飽きてきたのかルークもアタシの元に戻ってきたことだし。
「ルーク。アタシは監督生を連れて行くから、後は任せたわよ」
「ウィ。ヴィル。寮生たちには早めに引き上げるように声をかけておくよ」
それでは良い夢をと、きざったらしいウインクをひとつ贈られる。アタシはルークが寮生たちに声をかけに行くのを確認してから、監督生の元に向かった。やだ、こんなところでよく眠れるわね。すやすやと心地良さそうにねむっている。あまりにも気持ちよさそうにしているので起こしてしまうのを戸惑うほどだ。少し迷ったが肩を軽めに叩く。
「ちょっと。監督生?」
反応なし。今度は揺さぶってみると。うう……と呻き声が漏れた。
「監督生。オンボロ寮に運ぶわよ。いいわね」
目を瞑ったままこくんとうなづいた。アタシの言ったことがちゃんと理解できているのか怪しいところだけど。他の生徒に目をつけられるよりマシでしょ。良かったわね、優しいアタシに助けられて。脱力しきったからだはまるで人形みたい。完全に油断しているのね、呆れた。物語のお姫様みたいに抱きあげる。すると彼女は頬をアタシの体にすり寄せてきた。思わぬ挙動に立ち止まった。飼い主に甘える子猫のような素ぶりに、じわじわと胸の中で甘やかな感情が湧くのを感じた。これじゃあ、アタシまるで……。やめた。今は気づかないふりをしていたほうがよさそうね。こんなにアタシの気持ちをかき乱すんだもの。少しの仕返しぐらいいいわよね。ちゃあんとオンボロ寮に向かうつもりだったけれど、気が変わった。警戒心のない自分を恨むことね。高らかにヒールを響かせてアタシは監督生を連れて自室に戻ることにした。
「う……」
いつもと違う柔らかなシーツと花の様ないい匂いで目が覚めた。違和感に眉をひそめうっすらと目を開ける。「あらおはよう。」朝の光に包まれた女神と見紛う美貌の人が私を見つめていた。ここはどこ。オンボロ寮じゃない。
「え、え、なんで。ヴィル先輩が!?」
昨日はちょっとしたパーティー的なのをやっていて、私はずっと眠たくてソファにいて。それからそれから。昨日のことを必死になって思い出していると彼はクスクスと笑ってこう言い放った。
「だって、アナタがアタシを求めてきたんじゃない」
そう言いながらヴィル先輩は自身の肩を抱きしめた。そしてゆっくりと、上質なガウンからのぞく白くて美しい腕を長い指でなぞっていく。まるで映画のワンシーンのようだ。あまりの色っぽさにぞわぞわっと鳥肌がたった。ひえぇ。なんて情けない声が漏れる。
「も、申し訳ございませんでした」
広い広いこのベッドの上で土下座をかます。2人がベッドの上にいても、スペースはまだまだ余っている。寮長の特権ってすごいなあ。
「まあ冗談はこのぐらいにして。」
ヴィル先輩はずいっと近づいてきた。
「あんなところで寝ないの」
「……はい」
「アタシが優しくてほんと良かったわね。ほらさっさと身支度なさい。アンタの頭、荒れた庭の雑草みたいにはねてるわよ」
一体どんな跳ね方なんだ。先輩に促されて私はオンボロ寮に戻って身なりを整えるために出て行こうとしたけれど、「ねえいくらなんでもそれで外を出歩くなんて承知できないわ」と先輩自ら髪を直してくれた。気を取り直して出て行こうとしたら、「待って。アンタ似合うメイクを思いついたの。せっかくだからお化粧させて」とまた引き止められてしまった。いやいやこれ以上居座るわけには……とやんわり断ると、アタシのメイク技術が気に入らないのとむくれてしまったので慌ててドレッサーに前に座らせていただいた。念入りなスキンケア(血行を良くするマッサージ付き)をされた後、宝石みたいなコスメたちで私の顔を彩ってくれた。先輩が持つブラシたちが魔法の杖に見えたので、思わず魔法使いのようだと呟くと先輩は眉を下げて笑った。仕上げにと香水を振りかけられたら完成だ。鏡に映った自分の顔を見て驚いた。ナチュラルな色合いのアイシャドウは瞬きするたびに美しいグラデーションが見える。頬にはじゅわっと内側から広がったような淡いチークがのせられていた。極めつけは唇で、思わず触れたくなるような化粧が施されていた。美の探究者の手にかかればこんなにも変わるものなのかと、思わずまじまじと自分の顔を見つめる。
「完璧ね」
私の髪を撫でつけながら、ヴィル先輩も鏡の中の私を見て満足げに呟く。
「テーマはなんだと思う?」
「ジャガイモからポテトサラダに変身メイクですか」
あははとまたヴィル先輩が笑う。今日の先輩はよく笑う。まだすっぴんなのも相まって、余計に幼く見える。
「違うわよ。もっと素敵なもの」
髪を撫でる手が肩に載せられるとまるで内緒話でもするように耳元に唇に近づけてきた。
「テーマは眠り姫よ」
優しい低い声で囁かれる。私は真っ直ぐ前を見つめることしかできなくて、鏡の中のアメジストの双眼と目が合う。
「王子が思わず口付けてしまいたくなるようなプリンセス。目を瞑って真実の愛を待っているの」
目はうっとりと夢心地に細められ、口元はかすかに弧を描いている。その視線の先には私がいるわけで。
「ずるいわよね。こっちの気も知らないで、眠ったまま人を惑わすの」
「あ、あの……」
「ねえ、お姫様。ちょっと目を瞑ってごらんなさい」
優しいけれど、有無を言わさない声に目を瞑ってしまう。ヴィル先輩が動く気配がして、髪がさらさらと頬にかかるのを感じる。吐息がかかるほど近くにいるのがわかって、体が固くなる。まってまさか。
むにゅ。
唇に柔らかいものが当たった。驚いて目を開けると。
「やっぱりリップが濃かったわね。スポンジで抑えてちょうどいいくらいだわ」
右手に淡く色の付いたスポンジを持ったヴィル先輩が目に入った。先ほどの柔らかいものの正体はこれだろう。一気に体の力が抜ける。今までの甘い雰囲気はなんだったんだ。
「ひ、ひどい……」
「何がよ。アンタがもっと美しくなるためにやってあげたんだから感謝なさい」
「だからって目をつぶる必要無かったですよね」
「あら聞こえなかった?眠り姫なんだから目を瞑ったときも美しくなくっちゃ」
今先輩が浮かべている笑顔はいつもの意地の悪い顔だった。ちょっと先輩のことをかわいいなと思っていたことは無しにしよう。さて、先輩の気も済んだことだし、さっさと出て行こうとするとまたもや呼び止められた。
「あらあら、もう出て行くなんて恩知らずな子。身支度を整えてあげたんだからアタシの準備も手伝いなさい」
「え!?私不器用だから何もできませんよ」
「じゃあ手伝えるように仕込んであげる。そこで待ってなさい」
結局小言を言われながら着替えにメイクまで手伝わされ、部屋を出る頃には寮生たちが廊下を行き来する時間帯になってしまったいた。ヴィル先輩の部屋から出てきた私を目撃したポムフィオーレ寮生に問い詰められたのは言うまでもない。
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