It's all yours /+Soundwave
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頑丈な花の制作で必要となる、石の調達をメールでディランに申し出たら、「用意してやる代わりに俺の足兼ボディガードとして無償で働け」と取引を持ちかけられ、NESTとしての活動もしなければならないのにおよそ1ヶ月、散々アメリカ各地を連れ回され。
やっと解放される頃には計画の準備に使えるタイムリミットは、あと数週間程しか残っていなかった。
…まあ、当然期間内に滞りなく終わらせられたが。それに対して不安に思うことは無い。
気がかりなのは、アメジストが俺と離れていた間にショックウェーブに何かされていないかという点と、彼女が彼の研究室に居心地の良さを感じてしまい俺の元から離れていってしまうのではないかという点である。
一抹の不安を抱えながらショックウェーブの元へ向かうと、廊下で、ちょうどアメジストが彼に向かって頭を下げているところに居合わせた。別れの挨拶をしていたようだ。ほっと胸を撫で下ろす。少なくとも彼女は素直に俺の所へ戻ってくるつもりだったのだ。
《サウンドウェーブ様》
彼女が気配を察知し、こちらを振り返った。
普段あまり感情を表に出さない彼女だから、顔パーツが少し変化したのを感知して内心喜びで気持ちが乱れていた。
《ご苦労だった。今日からまた俺の元で働いて貰うが……その前に見せたい物がある。少し部屋で休んでいてくれ。10分後に迎えに行く》
《本当にサウンドウェーブの元で良いのか? やっと仕事を覚えられたのに…。なんならもう少しここに居てもいいんだぞ。優秀な助手を返したくないしな》
俺の言葉に首を縦に振ろうとしていたアメジストの肩へ、ショックウェーブの手が乗った。途端に激しい感情が爆発し、気付くとその手を捻りあげてショックウェーブを壁に押し付けていた。
《ふざけるな。アメジストは俺のモノだ。お前なんかに取られて堪るか!》
中枢部を押さえつけられて身動きの取れないショックウェーブと俺の間に、慌てた様子のアメジストの腕が差し入れられた。
メガトロン様と同等の実力を持ち、一応、自身よりも少し上の地位にいる彼に自分が何をしてしまったのか、彼女の行動でやっと冷静になって理解する。
俺はアメジストほど上下関係を気にしていない(メガトロン様だけがトップだと考えている)から、ショックウェーブのことも対等に扱っていたし、彼もそれに理解を示していたが、何も知らない彼女からすれば、上官に楯突いた俺は懲罰の対象にされるように見えたんだろう。
《チッ》
発声回路から舌打ちの音を再現し、ショックウェーブから手を離すと未だに戸惑いの色を見せているアメジストの手を掴み、この場から去ろうとした。
が、ショックウェーブに引き留められ嫌々振り返る。冷静になれず感情任せになってしまった手前、無視することは憚られた。
彼は、俺だけがこの場に残り、彼女には席を外すように促した。
《ショックウェーブ様、何かあれば私は必ず手伝いに来ますから、どうかサウンドウェーブ様に罰を与えるのは考え直して頂けないでしょうか》
《大丈夫だ。最初からそのつもりで引き留めたわけじゃない。行け》
《はい》
俺の手から離れた彼女は、この場の最高指導者の命令に従う事にしたようだ。
安心したように短く返答すると、俺に一瞬だけ微笑んで行ってしまった。
久しぶりに触れた彼女の手の感触を思い出すように右手を見下ろしていると、呆れたような排気がショックウェーブの方から聞こえてきて、苛立ちを必死に抑えながらそちらを見やった。
《何のつもりだショックウェーブ。釘は刺しておいたはずだが》
《ハア……。お前は自分の事しか考えていないんだな。寂しがってる彼女の気も知らずに感情的になったりして》
《なんだと?》
ショックウェーブから打ち明けられた衝撃の言葉に燃え上がっていた怒りが一気に鎮火され、聴覚回路が一言も聞き逃すまいと過敏になる。
俺はショックウェーブから、アメジストが胸に秘めて、1人で抱えていた悩みを聞いた。
ショックウェーブの言う通り、彼女の真意を汲み取ることも出来ず、あまつさえ2ヶ月も距離を置いて不安にさせて、その上目の前で荒々しい態度を取ってしまうなんて。
彼が呆れるのも納得の理由である。
目に見えて俯いてしまった俺に慌ててショックウェーブがフォローを入れてきたが、ぐうの音も出なかった俺の気持ちは沈んだままだ。
《…掴みかかってすまなかった。教えてくれて感謝する》
それだけ告げて、くるりと踵を返した。
ショックウェーブはもう何も言ってこなかった。