It's all yours /+Soundwave
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諜報任務に当たっていたレーザービークをマークしていたポイントで回収し、同行していたアメジストにNEST基地へ帰還する旨の通信を入れるように指示する。
その間俺は、通信を傍受されていないかレーダーで確認しつつ、有事の際は戦えるよう警戒態勢を取る。
《サウンドウェーブ様、通信が完了しました。直ちに帰還せよとの命令です》
《よくやった。では、いくぞ》
都市部から少し離れた郊外の小高い丘は狙い通り人通りが全く無い。
少し離れた所にあるのは一車線のアスファルトの道路と速度制限の標識。それ以外は一面緑一色となっており、つま先すら隠せない背の低い草の海原と、俺より頭一つ分小さいアメジストと同じ大きさの木々が
機密情報を輸送するポイントとしてはこれ以上最適な場所はないだろう。
小さな草花を踏み潰さないように道路へ移動し、ビークルモードにトランスフォームしようとしてハッとした。
隣を歩いていたはずの俺と同型のトランスフォーマー……アメジストが、忽然と姿を消していたからである。
辺りを見渡すと、彼女は俺から数歩離れた後ろの位置にいた。ホッと排気を漏らす。
アメジストは木々がある方に体を向けて突っ立っており、顔は俯き、視線は見下ろすように地面に注いでいた。
その方向に自分もオプティックを向けて、彼女が、どうして足を止めてしまったのかを察する。アメジストは気付いてないだろうが、"それ"を見る時の彼女はいつも顔のパーツを緩めて笑っているのだ。
《自生したバラのようだな。採取して持ち帰るか?》
答えはわかりきっていたが、一応聞いてみた。
俺が花を踏み潰さないようになったのは、彼女のためだから、どんなセリフを言うのかなんて予想出来た。
《いいえ……傷つけてしまいますから、見ているだけで十分です》
《…そうか》
控えめな声に、スパークがぎゅうと締め付けられたようだった。
彼女の態度や声や性格は、まるでそこに咲く一輪の薔薇のようだ。しとやかで、簡単に手折ってしまえそうなほど儚く……。
それなのにどこか不思議な生命力を思わせる。こういう時、恋人である彼女を酷く愛おしく思い、腕に閉じ込めて愛を囁いてしまいたくなる。
恋人同士の触れ合い方に慣れていない彼女にそんなことをすれば困らせてしまう未来が見えるので、いつも我慢しているが。
欲しいなら奪えばいい。手に入れられないのなら壊してしまえばいい。
ディセプティコンとオートボットが終戦を迎えて数ヶ月。
俺を始めとした軍団の兵士たちは、いくらか友好的な性格になってきたが、上記のような考えが完全に無くなったという訳では無い。以前より、弱まったと言うだけ。軍用機として生まれた
だからこそ、誰に対しても礼儀正しく、地球の有機生命体にも愛情深く接する彼女が際立って、俺は彼女を特別に想っているのだろう。
この地球にある花全て、彼女の為にあればいいのに。
そうすればきっと、俺はこの顔をずっと見ていられる。
どうにか実現できないものかとブレインを回転させていると、バラの近くに転がっている小石が目に入って、ある名案が浮かんだ。
俺たちのような存在が触れても、容易く壊れない花を作ってしまえばいいのだ。
《そろそろ行きましょう。時間を取らせてしまい、申し訳ございません》
《問題ない》
任務の性質上そこまで急ぐ必要性はないのだから、道端の花を見るくらい気にしなくてもいいのに。
むしろ、恋人なのだから、遠慮なく《もっと見たい》と言ってくれれば、俺がメガトロン様や人間共に怒られる事になってでも望みを叶えてやるのに。
戦時中でもあるまいし、もっと甘えてほしいものだ。まあ、そんな所も好きなんだが。
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