溢れるほどの希望を/Soundwave
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母は私に似て病弱な人でした。
資産家の一人娘として生まれたが故に幼少の時から家を出ることを許されず、父との結婚も両親からの勧めがきっかけだったため、式を挙げるまでお互いの顔すら知らなかったそうです。
そんな2人でしたが、愛はあった……らしいです。私を産んですぐ母は他界したので、この目で確かめた訳ではありませんが……。
婿養子として母の一族の事業を引き継ぎ、毅然とした態度で過ごしていた父が、夜ひとりでに泣いていたのを見たことがありましたからね。父なりに、事業の経営と、母の忘れ形見である私を育てるプレッシャーと戦っていたんでしょう。
最初に述べたように、母は私に似て病弱な人でした。
生まれながらに肺が弱く、外を歩くだけでもお付きの者を何人か連れていないと外出が許されないほどで、当然、私も同じような状況になりました。
父の用意したボディガードが常に何人も私を見張っていて、プライベートなんて言葉が非凡に感じられるほど、私は自由を許されていなかった。
状況が状況ですから、父のことも母のことも恨んだことはありません。
ただ、好きなことを好きなように好きなだけできない毎日に不自由を感じて、「なんで自分だけこんな目に」って、嫌気が差していたのもまた事実です。
どうせ私は死ぬんだから良い人を気取っても仕方ないと思って、毎日、私以外の人が不幸になればいいと、私の代わりになればいいと、妬み嫉みからくる浅ましい感情を、不発弾のように心の中に閉じ込めて過ごしていました。
消えてしまいたいと願うほどに。
……あなた方に誘拐されるまでは。