不格好なやさしさ/Ironhide
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「ホント助かったよ。お前のお陰であの野郎を椅子から引き摺り下ろすことが出来たからな」
《俺は何もしてない》
「またまた。朝一で俺んとこ来たくせに」
《うるさいぞ、ウィル》
武器の手入れ中格納庫へやってきた相棒に、アイアンハイドは目を離さず軽口を叩いた。
ウィルと呼ばれた男_レノックスの手には、今までレノックスの部下や他の隊員たちにパワハラやモラハラを行っていた人間の処分が決定されたという通知書類が握られていた。
違う部署の人間ということもあり、陰湿な行為はいつもレノックスの目の前では行われず、彼が介入しようにも、確実にキャリアを無くす物的証拠などもなく。
今までただ話に聞くくらいしか出来なかった所へ、アイアンハイドからの証言と協力者の助力あって、快挙を成し遂げたレノックスが嬉しさのあまりこうして触れ回っていたのである。
アイアンハイドは、仲間が苦しむのをただ黙って見ていることしか出来ない痛みを知っていた。だからレノックスの気持ちにも深く共感していた。ただ、素直に一緒に喜ぶのは自分の柄じゃないので、そういう役目はバンブルビーに任せて自分はキャノン砲を磨くことに専念する素振りをしていた。
しかし、内心は自分の仲間を軽く見るような態度をとっていた人間が、ひとりここからいなくなったことに気分が良くなっていた。
自然と武器を磨く手が、いつもと違ってきてしまう。
「あ、そうそう。それでその協力者がな、ソイツに変わって昇進したんだ。これからは彼女もオートボットに関わる機会が増えるから、紹介しようと思ってたんだよ。こっちへ来てくれるか」
バンブルビーの流した陽気な音楽で踊っていたレノックスがそう言うと、格納庫内にいた全員の視線がレノックスの視線の先へ向けられた。
彼が見ていたのは、格納庫の入口だ。
レノックスが話す間そこで待たされていたのか、と相棒の長話癖にアイアンハイドは少し同情した。彼の長話は娘似のようだ。
少し間を置いてから、カツコツ、というヒールの音が格納庫内に響き渡る。
アイアンハイド以外のオートボットは、入ってきた女性の笑顔に(前回の人間のせいもあって)友好的な態度を返していた。
「皆さん初めまして。私はクイン・ベル。あなた達の助けになれるように、精一杯頑張りますね!」
「そういうことだ。みんな、よろしくな」
レノックスに続いて、オートボットが軽く自己紹介をする中、赤ん坊みたいにギャン泣きしてた癖に……とアイアンハイドは心の中で呟いていた。
「なにか失礼そうなことを考えていそうね?アイアンハイド」
いつの間にか自己紹介のターンが自分に回っていたらしく、彼女はアイアンハイドの遥か下の方で、彼の顔を見上げていた。
『……べつに。目が腫れたからって化粧を厚くしすぎだと思ってな』
「え、うそ!そう見えるの!?ちゃんと冷やしたのにっ」
『ああ、嘘だ』
「なっ、あ、アイアンハイド〜〜?!」
『フッ』
握りこぶしを足に何度も殴りつける小人を鼻で笑い、アイアンハイドはご機嫌そうに武器の手入れに戻った。もちろん、彼女は無視されたことにさらに腹を立てたらしく、キャンキャンと文句を言い出した。
2人の初対面とは思えない態度と、アイアンハイドの穏やかそうな顔に首を傾げたのは、レノックスとその場にいる全てのトランスフォーマーたちであった。
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fin. 不格好なやさしさ