戦線前夜/Optimus
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「それじゃー、あなたはサイバトロン?から来たエイリアンで、オールスパークを探しにきてあんな所に落っこちてきたの?」
『その通りだ。』
「ふうーん……」
ピータービルト、もといオプティマスの運転席に座った私は、ハンバーガーショップで調達したチーズバーガーを頬張りながら彼の身の上話を聞いていた。
本当は彼の軍の斥候が先に来る予定だったのが、宇宙船のエラーでオプティマスが先に来てしまったんだそうだ。
その墜落先が、昨日私と出会った場所で、ディセプテ、……ディセプチ…………。
ンンッ、"敵軍"のミキサー車を倒した、あの中古車屋だったらしい。
『……君は随分落ち着いているんだな。私が怖くないのか』
「んー、正直、話のスケールが大きすぎて着いていけないというか……。戦争とかよくわかんないし。あんま実感ないんだよね。
それに、オプティマスには助けてもらったし、怖いとかは無いかなー。あ、その節はどうも。お礼にガムいる?」
『結構だ。貰っても食べられないからな。
こちらこそ、私のことを人間たちに言い振らさないでいてくれて、ありがとう』
「はあ……」
話しぶりからして随分生真面目そうなロボットだ。思わず生返事で返してしまった。
昨日の戦いぶりからは想像もできないほど、呑気な空間がキャビン内を漂っている。
……無言、気まずい。
車内で鳴る音といったら、私がチーズバーガーを頬張る際に鳴る包装紙の擦れる音と、ドリンクをストローですすった音くらいだ。
その2つと、たまにポテトを手に取る音をローテーションし、残るはポテトと氷が溶けだしたコーラだけになった。
そこで、ふと、疑問に思ったことがあったので、「あー、」と"今から喋りますよ"のサインを出してから発言した。
「……ねえ、本当にアイツ死んだの?」
当然ミキサー車のことだ。
《ああ。確かに、私がこの手で葬った》
「そうだよね……。ならどうして、オプティマスは私の所へ来たの?しかも、そんな大事そうな話までして……」
そう。オールスパークを探しに来たのが本当の目的なら、ミキサー車を倒した時点で彼はそれを探しに行くべきなんだ。
私のような何の関係もない地球人に自分の正体を明かしてまで、私の所へ戻ってきた意図はなんだろう。
《そうだな……。中古屋に私が墜落して、その場にあった車に変形したことは話したな? ひとつの店に、全く同じ車があったら不自然だろう……。それで、私たちの戦いを目の当たりにした君の元であれば、理解して身を置かせて貰えるのではないかと思ったんだが》
「えっ、なに勝手に決めてるのよ!無理です、嫌です!お・こ・と・わ・り! あなたといると、あの時みたいに死ぬ機会が増えるってことなんでしょ?!私、現状に嫌気はさしてるけど死ぬ気はないわ!」
《私もできれば君を巻き込みたくなかったがね。あのミキサー車が、君の顔が写ったホログラムをディセプティコンに送ったようなのだ。これを見てくれ》
さらっと大事なことを言われて突っ込む暇も与えられない。
オプティマスが、降りるよう促してきたので、食料をホルダーにしっかり固定して従う。
ロボモードになって遥か遠くに行った顔を見上げると、彼は膝を折り胸のボタンを押した。空中に青いホログラムが浮かび上がる。オプティマスが見て欲しいと言ったものは、この間抜け面のことだろうか。
《ミキサー車の記憶回路をジャックして保存した映像だ。君は、人類を虫ケラとしか思っていない連中に顔を知られているんだ》
「いやいや!ここに映ってるの別人だから!私じゃないから!」
《そんな反応をしてしまうのはわかるが、どうか理解してくれ。私が傍にいれば君を守ることが出来る。しかし拒めば、ディセプティコンの存在を認知した人間として排除されてしまうのだ》
「排除って……つまり、」
《ああ、君が予想した通りだ》
あのミキサー車のような巨大ロボに自分が捻り潰される想像をしてしまい、ゾッとする。
あの時は、たまたまオプティマスがいてくれたから良かったものの、彼がいなかったら今ごろ、私の首はメガトロン、とやらにデリバリーされていたかもしれないのか。
キャビンにある紙カップの中で氷がカラ、と鳴った。
《……もちろん、無理強いするつもりは無いがね》
腕を組んでうーんと唸ると、オプティマスは案外残酷なことを言う。
命をかけて私を守ってくれた人の発言だと思えない。……いや、優しすぎるゆえなんだろうか?
「……何言ってるのよ、最初から選択肢なんて無いじゃない」
《では、》
「ええ。これからどうぞよろしくね、エイリアンさん」
断られるとでも思っていたのか、まん丸になった青い目と視線が合う。彼の戦いぶりから、冷静な印象を強く抱いていたがために、拍子抜けして笑ってしまった。
握手するために彼の大きな顔の前に手を差し出すと、戸惑った後に、壊れ物を扱うかのように手を優しくつままれ、上下に揺らされる。
《本当にすまない。地球にいるディセプティコンを殲滅しオールスパークを取り戻したら、速やかに君の元を去ると約束しよう》
「わかったわ。上手くやってちょうだいね」
《ああ》
キリリとした顔で言われると私の不安だった心も少しは晴れた。
オプティマスがオールスパークを見つけられずにディセプ
こうして、何の変哲もない日常を送っていた私は人気のない空き地で、変わった生命体と約束を交わした。
あとでこの時のことを……それこそ
この時の私は全く知る由もなかった__。
+─────*─────+
fin. 戦線前夜