戦線前夜/Optimus
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視界が真っ白で何も見えない。
あまりにも眩しすぎる光にまぶたを閉じたまま目を動かす。
だんだん抜けていた意識が横たえている体に引き寄せられていくと、自然に目が開いていく。
見慣れた天井。
眩しかったのは開け放した窓から差し込んでいた朝日だった。
ゆっくり瞬きをして、ぐーっと伸びをしながら上体を起こす。
昨夜見たものは、全部夢だったみたいだ。ていうか、なんで巨大ロボット?そんな趣味ないんだけどな。
ベッドで寝たのは久しぶりだ。最近はホテルにそのまま泊まることが多かったから。
こんな綺麗にベッドに入ってたってことは、着替えもせずにそのまま寝ちゃったってことね。昨日は太客が沢山来たし、疲れてたのかも。
頭の痒いところをかいて、その手で右側の髪をひと房取ってみる。
くんくん。ヴォエ!!くさっ!!
さっさとシャワー入ろ。
シーツをめくって足をカーペットに下ろした。
「いっ……」
ビキッと走る電撃。
なんだろうと思って膝を見ると………………
「ウソ………………」
そこには、夢で見た時と同じ擦り傷と、ボロボロの服が残っていたのだ。
◇◇◇
とりあえず気分を落ち着けるのと、傷口を洗うのとでシャワーを終えた。
仕事柄一日に何度もシャワーに入るけど、家でひとりで入るシャワーが、やっぱり1番気持ちい。
ドライヤーをざっと終わらせて、リビングの棚から救急箱を取って、消毒と絆創膏をする。ちょうど今日から1週間は休みを入れていたので、それまでに治しちゃわないと。
ジャグジーのジェットって、怪我があると痛いのよね……。
片足だけになってしまったルブタンは箱に入れて靴箱にしまい、ワンピースは迷った挙句にゴミ箱に捨てた。
お気にのコーデが台無しになったことにガックリ肩を落として、そこでようやく空腹に気付いた。
家の冷蔵庫に何かあるわけもないので、財布と家の鍵だけを持って、ラフな格好で外に出た。
なにか早く食べれて、二度寝しても問題なさそうなご飯を買いに行こう。今すぐ現実逃避がしたい。
他の住人と顔を合わせないように、螺旋階段をスーッと降りていく。
エントランスを抜け、郵便物を見るだけ見て中身は取り出さずに外へ出た。んー、いい天気。
……そういえば、あのロボットはどこに行ったんだろう?
もうあんな事に巻き込まれるのはごめんだから、会いたくはない。ないけど。
ミキサー車から守ってくれたことにお礼を言いたい気持ちもあった。
今思えば、ピータービルトから出られなくなったのって、近くにあのヤバい奴がいたからなんだろうな。
隠れろとか言ってくれたし。もし私がいなければ、彼だけ逃げればよかっただろうし。
《お前の首をメガトロン様への土産にしてやるぜ!____!!》
たしか、彼の名前は……
「……オプティマス」
パァァアアーーーッ!!
ぼそりと呟いた声に応えるように、けたたましいクラクションが駐車場から鳴り響いて驚いた。
私が音のした方を見ると、クラクションは止んだ。
同じだ。あの時見た彼だ。
アパートメントの駐車場では違和感しかない、ゴツいピータービルトがそこにいた。
なにか訴えかけるような、ホットロッドのボンネットが私を見つめていた。