戦線前夜/Optimus
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瞬間、全身からぶわっと冷たい汗が噴き出した。
最初は「気のせいだ」とか、「きっとドアロックの噛み合わせが悪かっただけだ」とかなんとか不安を誤魔化してガチャガチャとドアを開けようとした。
でも、何度やったってドアは開かないし、ロックピンは上がらない。
どうして、なんで。自分で閉めたわけでもないのに。
「開いて…!あいてよ……!!」
このままここにいるのが店主にバレたら、車泥棒をしようとしたとか、誤解をされてしまうかもしれない。
ただでさえ仕事中、路上で警察に注意を受けることもあるのに、警察の厄介になったなんて言う噂が流れたら、私の仕事がなくなってしまう。
どうしよう……。
焦る気持ちを誤魔化すように、一度手を離して深呼吸する。
車内になにか、窓ガラスを割れたりするもの……ないわね。
困り果ててハンドルに頭を突っ伏する。
その時だった、
……ブオンッ!!ガシャーン!!!!
「っ?!」
前からの衝撃で後ろに体が引っ張られる。
シートがちゃんとしてる奴で良かった…。強く頭をうちつけたものの、どこにも怪我はない。
何かと思ってフロントガラスを見ると…ありえない光景が広がっていた。
ピータービルトにミキサー車が正面衝突していたのだ。眼前に迫った白い運転席がことの異常さを伝えている。
どちらの車にもなぜか大きな損傷はなかった。
と、いうかそれよりもっとやばい事がある。
相手の運転席に人がいないのだ。
ミキサー車の故障かもしれなかった。
せめて降りて逃げられれば…!
またガチャガチャとドアを押しているうちに、第二波が来た。
再び襲ってくる衝撃。まるで意図的にこっちを殺そうとしてるみたいだ。
(はやく、はやく…!!)
「なんで開かないのよ…!!」
ここまで来るともはや涙目だった。
キイーーーッ!
ふと、ミキサー車が後ろに大きくバックしている。
独特なエンジン音が消えると、暗闇の中でヘッドライトの赤い光だけが私を見つめていた。
……ブオーン……ブオーン……
「や、やめて……」
ミキサー車がしようとしていることが分かり、息が荒くなる。
やめてほしいと何度言ってもエンジンをふかす音はやまない。
ブーン………ブーン………ブオオオオオオ!!!
アクセル全開で迫ってくるミキサー車に死を覚悟する。こんなところで死にたくなかったけど、ちょっと死期が早まってしまったらしい。
あー。なんもない人生だったなあ………。
涙が頬を伝った。
それと同時に、私は開ききった目で見た。
私を手づかみする巨大なロボットが、ミキサー車を殴り飛ばしたところを……。