正午、とある日曜日/Ironhide
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「…………私すっごく恥ずかしいこと言っちゃいましたよね……」
『……お前のボーイフレンドになった覚えは無い』
「うっ、すみません……」
交差点で信号待ちをしていると、冷静になってきたのか両手で顔を覆ったクインが謝ってきた。耳が赤い。
アイアンハイドは皮肉っぽく返したが、彼女が思ったより落ち込んでしまったのでばつが悪くなり、柄にもないことをした。
『……あー!……別に気にしてない。だからもうそんな態度やめろ! 調子狂うわ』
青信号になったのを確認して右折すると、彼女の呆気にとられた顔が見えた。
やはり、慣れてないことはするもんじゃないとアイアンハイドは思った。
「……アイアンハイド」
『……あ?』
モジモジするクインを見ないように、正面だけ向いて返事をする。
彼女はホログラムのアイアンハイドをじっと見つめていた。
「助けてくれて、その……ありがとうございました」
『……ん』
素直に感謝された事がむず痒くなり、そんな声しか出なかった。
無音の車内も、静かなクインも、どうにも居心地が悪くて。
『まあ、ああいうヤツはウザイからな。目の前で騒がれたのもやかましかったし。俺じゃなくても、間違いなくああしてた』
取り繕うようにそう言うと、「そうですか」なんて言葉が返ってくる。
不本意ながら、アイアンハイドはいつも通りの鬱陶しい彼女に戻ってくれと、思い始めていた。
……彼女が黙っていると、嫌でも考える時間が出来てしまう。
あの時、自分がどうしてあんな行動をしたのか。あの感情はなんだったのかと。
いつもなら、一人の時間を与えて欲しいと思うくらい付きまとわれるのに。
横にいる彼女を一瞥して、スパークが1度だけ、ドクンと高鳴った。
自分が?まさか。ありえない。
余計なことは考えないように。
いつもより饒舌なアイアンハイドは喋ることをやめなかった。クインはただ相槌をうつだけ。
立場が逆転した二人きりの時間は、基地にたどり着くまで続いていた。
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fin. 正午、とある日曜日