それは君のせい/Ratchet
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ディセプティコンとの戦闘が終わり、荒廃した街の中。
私はロボットモードのラチェットの手のひらを屋根にして、彼と2人雨を凌いでいた。
激しい戦闘で舞い散った塵や砂埃を打ち消すような突然の土砂降りがやってきたのは、ラチェットのトランスフォームコグが故障して、どうしようかと思案しているときだった。なんてタイミング。
一応、迎えに来てくれるよう無線で連絡はしたものの、この雨ではヘリを向かわせることも難しいだろう。私たちは、雨止みを待つしかなかった。
一向に止む気配のない雨模様にため息をついて、私は瓦礫の山に腰掛けた。
するとラチェットも同じことを思ったのか、片膝を立てて屈む。見上げるほど体の大きな彼が窮屈そうに体を丸める様子は、なんだか可愛らしいと思う。
「日本じゃないのに、結構蒸し暑いね」
肌にまとわりつくような湿度に故郷を思い出し、ふと零す。
《そういえば、君の故郷は日本という島国だったな。夏の前に雨季があるんだったか》
「梅雨って言うの。さすが先生、よく知ってるね」
《大したことではないさ。君と話しているうちに、君の生まれ育った場所に興味を持ったから知りたくなっただけだよ。……そうだ、ただ待つのもなんだ。君の故郷のことを私に教えてくれないか》
「いいね。最近はこうやって話せる機会も減ってたし、ずっとゆっくり話をしたいと思ってたんだ」
私の言葉に、ラチェットの顔が僅かにほころぶ。
温和で、知的な彼のことはずっと友人として尊敬しているのだけど、ふとした時に彼があどけない姿を見せると、私はまた違った気持ちになる。
私はラチェットにいろいろな話をした。
育った場所、そこで有名だった観光名所、食べ物、通った学校、そこでの様々な思い出……。
思い出を追体験するように語れば、その詳細をラチェットが質問して、記憶を手繰り寄せながらそれに答えると、キャンバスが色付いていくかのように記憶がより鮮やかに、鮮明になっていった。
しかし、想定外のことが起こる。
雨足がさらに強くなってきたのだ。
視界の端で少しずつ多くなっていく雨量に違和感を覚えながらも、ラチェットと話す時間が心地よくて、どうせすぐに止むだろうと高を括っていたのが仇になった。
撥水性のある皮膚を持つ私はまだしも、金属製の体(しかも雨から私を庇ってくれている)ラチェットにはこの環境は心地いいとは言えないのではないか、と気づくと、次第に罪悪感が重たくのしかかってきた。
「ごめん、雨強くなっちゃったね。こんなことなら、話のキリのいいところでとにかく応援を呼ぶべきだったよ」
《いいや、そもそも話したいと言い出したのは私だ。クインは気にしなくていい》
「でも……」
言いかけて、やめた。
ラチェットが何か言おうと口を開きかけていたからだ。
しばらく、口を閉じて待ってみる。
しかし彼はなぜか、言いあぐねているようだった。
「どうしたの?大丈夫?」
《ああ、いや……その……》
彼の曖昧な態度が気になってじっと見つめていると、ラチェットは観念したように排気をして、揺らしていた青い目をおずおずと私に向けながら言った。
《君と二人でいられるのが嬉しくて、わざと引き留めるように話題を振ったのだと言ったら、君は怒るかい》
ザアザアと振り荒ぶ雨の音が一瞬消えたような気がした。
外気は雨の肌寒さもあったが、湿気を帯びてじっとりとした蒸し暑さも孕んでいる。
私の顔はみるみる茹でダコのように赤く染まっていった。
もちろん、ラチェットの発言に怒ったわけでも、蒸し暑さのせいでもない。
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fin.それは君のせい
