私を月へつれてって/*Jazz
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
♪Fly me to the moon
Let me play among the stars〜
ぴたりと、彼女の作業する手が止まった。
流れる曲をなぞるように、俺も歌詞を口ずさむ。
「♪And let me see what spring is like
On a-Jupiter and Mars__」
「……」
やれやれというように眉尻を下げたクインがゆっくりこちらを振り返り、しばらく俺の歌を聴いていた。
どうにかクインの心を動かしたいという俺は、身振り手振りも交えながら彼女を誘惑にかける。
「♪In other words, hold my hand
In other words, baby, kiss me__」
「………ふふ、降参よ」
「よし来た」
微笑んで両手を上げた彼女を待ってましたと言わんばかりに抱きしめ、左手は彼女の右手を絡め取り、右手は彼女の腰に回した。
ほぼゼロ距離にくっついた体を、音楽に合わせてゆっくりと揺らす。
人間の音楽という文化はネットで知った日から好きだったが、チークダンスというものを覚えてからはいっそう好きになった。
好きな物と好きな人を一緒に味わえるのが、人間のオキシトシンに似たものを感じさせた。
「……私の好きな曲で釣るなんて、考えるじゃない?」
「どうしてもクインに触れたかったからな」
「……あー、もう………。そういう……さらっと恥ずかしいこと言うところ、」
「嫌か?」
「……ううん、好き」
随分耳触りのいい言葉をくれる。
感情がオーバーヒートしそうになったのを誤魔化すように、彼女をターンさせる。
人間に似たこの人工皮膚は、容易く俺の気持ちを表現してしまうから困る。
クインの一挙手一投足に、いちいち顔が赤くなるのは、ロボットモードの時には無い悩みだ。
「顔赤いよ?」
「……キミのせいさ」
すでにバレていたようだ。
今度はクスクスと笑ったクイン。
「……」
ああ。やっぱり。
人間の姿でいるのは困ってしまう。
本来ならば遠い距離にある彼女の唇に、簡単にキスしてしまえるから。