私を月へつれてって/*Jazz
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テーブルを拭き終わった俺は、すぐ傍のキッチンで皿を洗っている彼女の後ろ姿を盗み見た。
背中に回ったエプロンのリボンを見て、顔がにやけるのがわかる。
このエプロンは彼女が好きなブランドの品で、バレンタインに花束と共に送った物だ。
前々からこれが欲しいと言いながら、中々買おうとしない性格の彼女に、俺がしびれを切らしたと言ってもいい。
嬉しそうなクインの笑顔は、何ものにも変え難い。
そこから紐付けるように次々と2人の思い出をメモリー装置から引っ張り出す。
そうして浸っていたら、どうにも我慢できなくなってくる。つまりは、目の前の彼女を独り占めしたいのだ。
オートボットのメンバーが久々に全員集まったということもあって、皿を洗う彼女の手は未だに動いていた。
抜き足、差し足で忍び寄り、後ろからがばりと抱きしめる。
「きゃっ」と驚いて上げる声でさえも可愛らしい。
「ジャズ」
その声には、"邪魔しないで"という意味と"仕方ないわね"といった感情が籠っていた。
「ホットガール、俺と一緒に踊らない?」
「だめよ。まだ仕事が残ってるんだから」
「そんな事言うなよ〜。な、1曲だけ。」
甘えるように無防備な首筋にキスを落とす。こうすると大抵、彼女は俺に構ってくれるということを知っていた。
でも今日は違うようだ。
「ふふ、甘えたってダメよ。終わったらいくらでも構ってあげるから、先にベッド行ってて」
顔だけこちらを向いた彼女が、俺の唇を人差し指で押し戻す。
触れたところから電撃が走るようで、まあ、こういうのも嫌じゃないけれど。
俺は今キミと触れ合ってたいんだ。
するりと回した腕を振り払われてしまえば、言葉による説得はもう叶わない。
泣く泣く体を離し、さっきまで拭いていたテーブルの端によりかかった。
どうにかクインの気を引けないだろうか?
ブレインサーキットで思案していると、あるアイデアが思い浮かび、早速録音したデータを読み込んだ。
スピーカーからざらついたノイズが流れた後、お目当ての歌声が流れ始めた。