きみの見た景色/+Optimus
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立ち上る硝煙の臭い。
視界を遮る煙幕。
同胞だったものの残骸。
首都とはかなり離れたこんな僻地でさえ、かつての姿が見る影もなく戦場になり果ててしまった。荒れ果てた故郷の大地を這い進み、もたれかかることができそうな瓦礫を見つける。
オートボットとの戦闘で破壊され、もはやスクラップとなった下半身を投げ出し、体を瓦礫に預ける。痛覚回路を切ってあるから痛みなんかは問題ないが、こんな移動を続けていればいつかは見つかって、殺されてしまうだろう。
メガトロンやスタースクリームのような大義や野心も無ければ、彼らに対する忠誠心も無いので「志半ばで」というような感情は抱かないが、このまま何も世に残せず死んでしまうのは少し気に入らない。
(…せめて、あのオートボットを見逃さず殺しておけばよかった)
先制攻撃をしかけ有利であった自身をこんなふうにしたのは、他でもない、追い詰めた獲物を前に土壇場で引き金を引けなかった自分だ。
《なんでかな…》
ぽつりと、思わず口をついて出た。
中途半端な自分を嘆いたところで時間は戻らないのに。
それに中途半端は自分だけではない。
こうして私が生きながらえていられるのは、私が殺そうとした相手が、私と同類だったお陰だ。
さて、ここからどうしたものか。
どうせ、ディセプティコンには(元々影が薄いのもあるけど)死んだと思われているだろうし、私的にはオートボットとかディセプティコンとかどうでもいいし。
どうにか両方から逃げつつ、平穏に暮らせないものだろうか。
とりあえず、使い物にならない足の代わりが欲しいな。と、周囲の残骸から使えそうなパーツなどがないか見回し出したところ、煙幕が揺らいでハッとした。
息を潜め、それが過ぎ去るのを期待したが、人生はいつだって私の思うようにはならない。
《お前、先程私を見逃したディセプティコンだな》
重厚な足音をさせ、風をきって現れたのは、さっき私が殺し損ねたトランスフォーマーだった。
ボディにはオートボットのエンブレム。
彼からも、私のボディに刻まれたディセプティコンのエンブレムが見えたはずだ。顔もとっくに割れているし。
だが、私がそうしたように、彼もまた武器を抜こうとはしなかった。疑問に思った。
私には"そういう状態ではないから"という立派な理由があったけれど、五体満足な彼には不利な条件が一つもない。
やろうと思えば、いつだって私を殺すことが出来たはずだ。
だが彼は私を注視するばかりで、一向に襲いかかってくる様子はなかった。
《瀕死の女を見て楽しむ趣味でもおありで?》
《生憎、私にそういった趣向はない》
クソ真面目な返答に辟易とする。
《じゃあ、どうして敵をむざむざと生かしておくようなマネを?》
《それは、こちらのセリフだ》
《はぁ?》
《あの時、どうして私を撃たなかった》
《あー……》
そんなの、私だって知りたい。
《さあね。私は生粋のディセプティコン信者とは違って、勝ち馬に乗りたくてオートボットを蹴っただけだし…。案外、ディセプティコンのあり方や、メガトロンの高慢な態度にムカついてて、見せかけですら忠誠心みたいなのを示すのが嫌だったのかもね》
《ディセプティコンが勝つと思っていたのか》
《逆に、オートボットが勝てると思ったの?センチネルがいなくなって、強いリーダーを失った烏合の衆のあなたたちが?冗談言わないでよ》
《……》
図星をついて、挑発してしまっただろうか。
私の発言を機に、彼は以降黙ってしまった。
私がどれだけこの状況にウンザリしようと、移動手段も戦うすべもない私にはどうしようもない。他人に主導権を握られるのは嫌いだ。自分が弱い立場にいるのだと思い知らされているようで不快だった。
《では、強いリーダーがいれば、君はオートボットに鞍替えしてくれるのか?》
《……………………………………は???》
長い沈黙の末おかしなことを言われて、私のブレインは数分フリーズしていた。
《ちょ、ちょちょ、なんでそんな話になるの?》
《君は先程、ディセプティコンのあり方やメガトロンに不満を持っていたと言ったろう。勝ち馬に乗るためにディセプティコンを選んだだけだとも。それならば、オートボットに鞍替えをしてもいいはずだ。そうすれば、私も君を手にかけないで済む》
《……つまり、私を殺したくないからオートボットに鞍替えしてくださいって勧誘してます〜……ってワケ?》
《そうだ》
《は〜〜〜〜〜……ちょっと待って、頭痛くなってきた》
《大丈夫か》
《ちょっと、黙ってて》
何を言い出すかと思えば、どういうつもりだこの脳内お花畑ヤロー。
さっきまで殺しあっていた相手をオートボットに勧誘するって、どういう神経してんの?
裏切られるとか思わないわけ?
もしかして、裏切りとか知らない環境で育ったぬくぬく温室育ちのお坊ちゃんか?
《ちなみに、そのリーダー候補は?》
《私だ》
《おお、プライマスよ……》
迷いなく即答された答えに思わず零して天を仰ぎ見る。
一体、なんなんだこいつは。
本気で私を殺したくないとでも思っているのか?
《断る》
《言っておくが、君に選択肢は無いと思った方がいい。一帯を見て回っていたが、君のボディに互換性のあるパーツは見かけなかったし、辺りは荒れ果てた荒野があるだけだ。それに、ディセプティコンはオートボットの攻撃から逃れるためにここらから撤退している。君は私の条件を飲んで生きながらえるか、私に撃たれて朽ちるかしかないんだ。そして私は、後者を選ぶつもりはない》
世間を知らないお坊ちゃんと思っていたが、意外と言うじゃないか。
何も言い返せなくなった私は、考えた。
考えて、考えて、考えた挙句、仕方なく、ほんっっっとうに仕方なーーーーく首を縦に降った。
彼は、賢い判断だと上から目線でものを言って、また私を苛立たせた。
《どうしてそこまでして私を生かす? 戦争が始まってしばらく経ってる。まさか、一度もディセプティコンを殺したことがないなんてありえないでしょう?》
《そうだな。考え方の違いで、私は何人もの同胞を殺めた。その度に、身を引き裂かれるような思いをした。だからこそ、1人でも殺さずに済むのなら、そうして平和に手を取りあって暮らせる故郷を再び取り戻せるのなら、私はその道を選びたいだけだ》
《故郷……》
ふと、煙幕が晴れた。
見る影もなく戦場に成り果てた故郷の景色が目に飛び込んだ。
思い出も、生活も、すべてなくなった。
人よりいい暮らしをしていたとは言えなかったけれど、たしかにここは、私の生まれ育った故郷であり、居場所だった。
勝ち馬に乗れば支配される生き方から開放されると思った。
しかし、現実は違っていた。
結局メガトロンのいいように使われ、捨てられ、忘れられ。
意味もなさないまま隷属と迎合で人生を終わらせるのだと思っていた。
この男を信用した訳では無い。
ただ、この男が語る夢のような話の中でなら、私も誰にも支配されずに自由に生きられる気がしたのだ。
彼が、私の眼前に手を差し出した。
《君、名前は?》
《……ユースティシア。あんたは?》
《私はオプティマス。オプティマス・プライムだ》
オプティマスの手を取ると、私の体は簡単に持ち上げられ、いわゆるお姫様抱っこの状態にさせられた。なんて不本意な……。
精一杯頭上にある顔を睨みつけて言った。
《……よろしくは言わないわ、プライム。せいぜい、私に寝首をかかれないようにしなさいな》
《そうだな、気をつけることにしよう》
《……そのムカつく話し方やめれない?》
憎まれ口を叩いたところで、この男には通用しないのだろう。
その文句を最後の捨て台詞にして、私はむっつりと黙りこくった。
オプティマスははじめ私に話しかけていたが、私に話す気がないと悟ると諦めて口を閉ざした。
私たちが去った後、不毛の大地には静けさだけが残った。
*_*_*_*_*_*_*_*_*_*
fin.きみの見た景色
(コイツがあまりにも真っ直ぐに語る理想を、私も見て見たくなった)
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