風呂嫌い/*Ratchet
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「ただいま〜……あ"ー!!づがれだ!もう一歩も動けなーい!!」
「おかえり」
読んでいた本を閉じてサイドテーブルに置き、ダブルベッドの定位置にスーツのまま飛び込んできた恋人の肩をつつく。
クインはうつ伏せの状態から起き上がる気はないようで、枕に顔を埋め俺の無言の圧力にもうんうん唸るだけ。
いつも決まった時間でなく、朝か夜のどちらかで入浴をする彼女が、今朝は寝坊してそんな時間が無かったことを知っていたから、俺も引き下がる訳には行かず執拗につつき回した。
「こら、入浴してきなさい。寝ずに待っているから」
「やだ!人工皮膚で皮脂腺のないラチェットには私の気持ちなんてわからないくせに!」
「残念だったな、人間で言うところの皮脂腺は無いが俺にだってちゃんと似た働きをするオイルが通ってるし、なんなら汗も出るんだぞ」
「え、そうなんですか」
「ああ。冷却水の汗だ」
「道理で!ラチェットからいつも甘い匂いがすると思ってました。あれって石鹸とかじゃなかったんですね」
エチケットには
俺はわざとらしく咳払いをした。
「んん!……そういう訳で、俺だって面倒臭いと思ってるが毎日風呂に入ってるんだ。条件はイーブンだろう? それに俺は、不衛生なせいで君が病気などに罹患することを懸念しているから言っているんだ。君はすぐに体調を崩すんだから」
「そりゃラチェットみたいな病気とは無縁の人からしたら、人間なんてみんなか弱い生き物だよ……」
腹這いのまま顔はこちらを向けていたクインが、ぐぬぬと言った顔で黙り込んだ後、「でもやっぱり行きたくないんですー!」と仰向けになってベッドの上をゴロゴロと転がって暴れだした。全く……服にシワがついてしまうだろう。
「はぁ……。君がそのつもりなら、俺にだって考えが……あるっ!」
「わあっ?!」
クインがちょうど仰向けになったタイミングで彼女の肩を押さえ付けると、さっと体を移動させ彼女の腰に馬乗りになる。
体重はそこまで掛けていない(体格差があるから掛けすぎると彼女が潰れてしまう)が、クインの動きを封じるのには成功し、鼻先がぶつかりそうなほど至近距離にある顔は呆気にとられたようにぽかんとしていた。
「ちょっ?!!」
そんなクインを無視して、ネイビーのジャケットに手を掛ける。前の開いたジャケットをするりと肩から脱がせ、白いシャツのボタンもぷちぷちとひとつずつ外していく。
「待って待って!」
「待たん」
耳まで真っ赤になった彼女にちょっとした嗜虐心を覚えてしまい、心配だった感情が好奇心と下心に塗り替えられる。
鼻歌を歌い出したい気分で、俺の手に縋り付いてきた彼女の右手首をベッドに縫い止めると、利き手でない左手で抵抗はできないと悟ったクインの顔が一層赤く染め上げられていった。
ぷちん、と最後のボタンを器用に外すと、レースのあしらわれた白いキャミソールと、襟に隠されていた彼女の綺麗な鎖骨、首筋が無防備にさらけ出された。
迷わずその首筋に顔を埋め、舌で舐めあげると、彼女が朝つけて、今は効能が薄れた香水や、汗の成分などがセンサーで分析できた。嗅覚からも彼女の体から発されるフェロモンを計測し、データとしてブレイン内で統計する。
「ふむ。暑いところで長時間仕事をしたせいか、カリウムとマグネシウムの分泌が活発だったようだな。ストレスを抱えすぎると女性ホルモンの分泌が変化し、若年性更年期障害になる確率も倍増s「ラチェット!」」
唇に付着した体液を舌でぺろりと舐めようとして、クインの潤んだ瞳が目に入る。しまった、また夢中になってやりすぎてしまった。
研究する時と同じ熱量で温まっていた体が、彼女の表情でさっと冷えていく。
「す、すまない!泣くな!」
「ちが、……違います…」
涙の膜を張っているのに、何が違うというのだろう。
俺は息を飲んで、次の言葉を紡ごうとしている彼女を見下ろしていた。
「う……き、気持ちよく……て」
「!」
それだけ言ってぼふんと、発火したような顔を腕で隠したクインになんだか色々と飛んでいってしまい、彼女を起き上がらせると、俺は膝立ちになって彼女を腕に閉じ込めた。
「わ」
俺の肩口に鼻先を埋めた彼女から驚きの声があがった。
しかし、一瞬で、俺に抱きしめられたことを理解するとおずおずとクインの両手が背中にまわされた。
そうして暫しの間、俺たちは隙間なくぴったりと抱き合っていた。
「……? あの、ラチェット。どうして手を服の裾からいれてくるんです?」
「ん?今から君を襲うからに決まってるだろう」
「へ」
シャツと同じように、差し込んだ手で彼女の下着に手を掛けホックを外すと、キャミソールごと取り払おうとして、クインの両手が服の裾を掴み、脱がそうとする俺の行動を阻止した。ぐぐぐ……と服が嫌な音をたてる。
「待って待って待ってどうしてそんな急展開になったんです?!」
「恋人の無防備な格好を見て興奮しない男がいると思うか?」
「そういう恥ずかしいことなんでサラッと言っちゃうんですか!!?あ、せめて!せめてお風呂行かせてください!汗臭いので!お風呂行きますから〜ッ!」
「はは、行かせるわけないだろう」
「あ、あ、あ〜〜〜〜ッ!!!」
……結局、彼女が風呂に入ったのは散々抱き潰した翌日の朝だった。
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fin.風呂嫌い
「絶対汗臭かったですよね……」
「いいや?君の体臭はむしろ赤子のようn「だからいちいち恥ずかしいことを言わないでください!!(泣)」はっはっはっ」