モーニングラブコール/Ironhide
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私の恋人は、地球外からやってきたエイリアンで、人類を侵略しようという悪の組織ディセプティコンから地球を守ってくれている戦士のひとりである。
ただのしがない兵士が彼と付き合うまでには、それはもう
話すと長いので今回は省略するけれど、とにかく。
私は今……正義の組織オートボットで、武器のスペシャリストとして日々戦いに身を投じる彼と、絶体絶命の危機を迎えていた。
話は3日前に遡る。
◇◇◇
〈―3日前―〉「会えないってどういうことよ?!!」
「落ち着けクイン。な?深呼吸して」
「落ち着いてられるもんですか!!離して、レノックス! アイアンハイド!何とか言いなさいよ!」
《くどいぞ。土曜は任務が入った。お前と出掛けることは出来なくなった。それだけだ》
「私が言ってんのはアンタの態度についてよ〜ッ!!」
NEST基地管制塔のオペレータ主任、そしてレノックスの同期として、私が仕事場で平静を失うことなんて、立場の関係もあって今まで一度たりともなかった。…この時を除けば。
今だって、レノックスが抑えてくれなければアイアンハイドをボコボコにしてやってた。
ミッションシティの戦いの後、所属していた軍の基地から異動を言い渡され、そこからずっと、オートボットを……ひいてはアイアンハイドを支えてきた。私が冷静で居なければ、戦場で散る仲間が増すばかりだと思い続けていたからだ。
その信念が、今激しく揺らいでいる。
それもこれも、1か月前から予約していた恋人との休日を、恋人本人によってぶち壊されたからだ。
まだ百歩…………いや、千歩譲って、任務なら仕方がない。
この日のためにシフトを調整して、当日土曜は例え出動があっても、私が居なくとも回るように指導してきたし、アイアンハイドが現場に行けば救われる人がいることも知っていたから、ちゃんとした理由だけなら自分をコントロールすることは出来た。
問題は、彼の一切悪びれてない態度と、私のことをなんとも思ってなさそうな後ろ姿である。こいつ、顔も見ずに私を突き放しやがって!
私を羽交い締めにするレノックスから逃れ、持っていたバインダーをアイアンハイドの足に投げつける。いつもなら絶対にやらない。煮えたぎってゴチャゴチャな感情……言葉にできない怒りをどうにかぶちまけてやりたくて、右手の中指を立てた。
バインダーがぶつかった感覚に反応したのか、振り返ったアイアンハイドは私を見下ろして顔を顰めていた。
「もういい。言っても聞かないんでしょ? わかってるわよ。アンタが、間違いを謝れない失礼なヤツってことくらい。良いわ、好きにすれば良い。二度と顔も見たくないわ」
《なんだと? 言ってくれるじゃないか。俺が居なけりゃ家にも帰れないくせに》
「ちょっと距離があるだけ! タクシー呼べば帰れるわ!!」
私に目線を合わせるため迫った大きな顔に唾を飛ばして喚く。
彼も負けじと、語気を強める度に握りこぶしを地面に叩きつけるので、その度にコンクリートの破片が宙に飛んで空間が揺れた。
流石に止めようと思ったのか、格納庫の隅にいたラチェットがアイアンハイドの肩を掴んだ。
けれど、ヒートアップしていた彼はそれを振り払うと、いっそう私に顔を寄せて口からオイルを飛ばした。
《失礼で結構。小煩いイカレ女に頭を下げてやる義理なんてない。俺だってお前の顔なんか見たくないわ!!》
「っ……?!」
シーン……
と、辺りに水を打ったような静けさが重たくのしかかった。
気まずそうな声を出しながらも状況を変えようとしたのはレノックスだった。
「あー、アイアンハイド、今のは言い過g「イカレ女……? イカレ女ですって……?!!」……ほら…」
言われてすぐはショックで反応できなかった。
でも言われた言葉を噛み締めるように繰り返して、その言葉が体の隅々にまで浸透すると、つま先から頭のてっぺんまで気持ちの悪い震えが迸った。
ふつふつと込み上げた怒りが溶岩のような熱さを纏って目尻から溢れ出す。
《お、おい》
ハッとした様子の彼が慌てて私に指を差し伸べてきたけど、私はそれを無視して背中を向けた。
レノックスが私を説得しようとしていたが、それも無視した。
バターンッと大袈裟に扉の音を立ててその場を後にする。
家に帰っても涙は止まらず、結局私が泣き止んだのは、眠りに落ちて意識を無くしてからだった。