吐血/※Ratchet
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"帰ったら、損傷した中枢部の直し方、いちから教えてくださいね"
"ああ、お易い御用だ"
まぶたの裏に浮かんだのは、上海での掃討作戦に赴く前に交わした約束だ。
あれから色々あって、結局まだ教えてあげられていないこと。
なぜ、今思い出すんだ。
今必要な情報は、思い出ではなく、人の命を救う方法なのに。
ブレインサーキットがうまく作動していないようだ。
スパークも引き裂かれてしまいそうなくらい痛くて、全身が不具合を起こしている。こんなこと初めてだ。
砂漠の真ん中で横たわるクインの顔色はみるみる悪くなっている。
腹部からとめどなく溢れる血は、新たに取り入れた人命救助プログラムをもってしても止めることができない。
割れた砂時計から流れる砂を元に戻すことが出来ないように、損傷してしまった彼女の命は刻一刻と掌からすり抜けていっている。
いざという時、彼女を守れるように……救えるように覚えた知識だと言うのに、
「ラチェット………う、ゴボッゴホッ、ぅ"ッ」
《喋るな!傷口が開く……!》
「……、すごい、ラチェットが軍医っぽいこと……っふ、……ゲホッゲホッ」
なにが面白い。何がおかしい。
全くもって笑えない。
言葉の合間に苦しそうに咳をして、赤黒い血が彼女の口内と口元を汚す。
窒息しないように気道は確保していたが、輸血か止血が出来ないかぎり、彼女の命は保証されていないも同然だ。
先程無線で後方の部隊へ連絡をとったが、人間の衛生兵はまだ来ない。
俺の手ですべての処置をしてやれないことが悔しい。
《応援はまだかっ!?》
「………………も、いいです……あなたは、仲間を助けに行って、くださ、ッゲホ……!?ゲホゴホッ!!」
《もういい……頼むから!!》
喋るなという意思を込めてクインを睨んでも、彼女は困ったように笑うばかりで意味をなさなかった。