戦線前夜/Optimus
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月や星の光を見えなくしている、ホテル街のネオンの下を素足で歩く。
単純にヒールが高すぎて足が痛くなるから、というのもあったが、右手に引っ掛けたクリスチャン・ルブタンはおろしたての新品だった。
雨上がりのアスファルトで900ドルの靴をダメにするより、裸足で水溜まりを避けた方がマシだと思った。完全に酔いが回ってるから、尖った石を踏んでもそんなに痛くないし。
覚束無い足取りでも、路上で寝るなんて考えられないので無心で歩道を歩き、アパートメントを目指した。
深夜過ぎだというのに未だ人がごった返す繁華街を抜けると、見慣れた風景が私を出迎える。
なんてことはない。
薄暗い場所を無理やり住宅街にした一角。
治安がいいとは言えないここら一帯は、家と隣合う柵を植木ではなく金網などで仕切っている。
それを見て、子供の頃のことを急に思い出した。
金網を等間隔に支えている金属の支柱。それを固定する、歩道の上に置かれたコンクリート。
キンダーガーデン時代はこのコンクリートの上を歩いて、金網に掴まって、空想上の溶岩に落ちないようにしながら帰るなんて遊びをしていた。
心の奥底に閉まっていた少女時代の遊び心が顔を出し、ルブタンを履き直した私は、狭いコンクリートと金網の間につま先だけ差し込み、カニ歩きの要領で進み始めた。
「なんか楽しくなってきた……」
子供の時に見ていた風景を投影しながら歩くと、今の自分を全部忘れられた気がして、自然と鼻歌が漏れた。
曲のタイトルは忘れたけど、前に客の同伴で行ったアウトドアシネマで流れていた曲だったと思う。
80'を彷彿とさせるメロディが独特で頭に残ってたんだろう。
「♪〜La…Lala……」
歌詞が分からないのでハミングで誤魔化してサビを歌う頃には子供時代の遊びも飽きてしまい、さっきまで何であんなに楽しそうにしてたかわからなくなりながら金網から手を離した。これは、明日絶対二日酔いするわね。