彼は傷ついていた。そんな中私を創った。私は喋れこそしなかったけれど、動くことはできたから彼の傍にいることを選んだ。

「泣いているのかい? カンドーラ」

 眼から黒い筋が垂れ、それは後々消えぬものとなる。

 彼は傷ついたまま人形を創った。人形には不思議と命が宿った。喜ばしい反面、それは後に人の欲を駆り立てた。

「僕を置いて逃げなさい」

 悲しかった。私は動けはせど逆らうことが唯一できなかったから。
 言われた通り名も無い仲間を連れて逃げた。ああ、ああああ。せめて、せめて言葉が「逃げなさい」であったなら。貴方も一緒に逃げられたのに!

 彼は傷ついていた。癒える時間が必要だった。
 ああ、ああああああああああ。彼を追い込んだ人間が憎い、憎い、憎い!
 この憎悪、どう晴らしてくれようか!

 彼は今どこに! どうしているのか!
 膨れ上がる憎悪が彼に貰った可愛らしい骸骨馬車を膨らまし、出くわす人間が居れば轢き殺す。

 ああ! 彼が自分へ愛を向けていたなら!

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