「ねえママ! 天使がいたよ! ほらあの木のところ!!」
「あらマリーナ、また天使様のお話?」
「ママには見えないの? ほら、ながーい金の髪!」
「……そうね、マリーナ、ママには見えないのよ。天使様はどんな顔をしているの?」
「ママみたいに笑っているわ!」

「ぼくのことはナイショだよ、マリーナ」




「君、自分を恥じるのやめたら?」
「だって、私……」

「いつまでも彷徨いていたらリアンナが困るだろう」
「あーっ!! 今リアンナって言ったー!!」
「……」
「ぼく知ってるよ、ハリフォードがリアンナ大好きだって! ずーっとずーっと好きだって!」
「お別れした僕が、彼女の生涯を阻んではいけない」
「ロベルトおじさんのせいなのに?」

 筆を置き、笑う。

「壊してしまおうか、君だけ」

 天使ははっと目を覚ました。気味の悪い夢。

「ハリフォードはもういないのに……ああでも、いつも通り怖かった……」

 逃げてからの気の休まらない日々。疲れていたのかもしれない。みんないなくなった。自分一人無事なのだろうか。捜しに行く勇気もない。
 だって、ハリフォードは。

「ぼくはいくじなしだ、マリーナ」


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