引きこもりという名の

 頭がぼんやりする時ってだらしない。
 朝一番に櫛を通すこともせず、畳の上に体を投げ出して随分長い間そのままでいる気がする。
 上げないままの布団がぐちゃぐちゃなのは何も寝相のせいだけではなく、起きたついでにもつれて転んだ拍子に皺を寄せたからなのだ。

 腹は減ったが動く気はない。
 このまま目を閉じて、何か夢を見た方が体は楽に違いない。
 口を吊り上げる必要も、言葉を選んで口調を変えるのも、しなくてもいいなら。



 少し肌寒い。それくらいだ、今求めるものなんて。



「大瑠璃、熱があるね」



 煩いな、いいとこなんだ。お前の手はえらく冷たいんだからもっと寒くなるだろ、



「宵、寒い」




 頭がぼんやりする時ってだらしない。必ず手を貸す奴に甘えてみるなんて。
 布団を敷き直し、難なく抱き上げ寝かせる姿を普段なら見ている側だというのに。



「皆には非番だと伝えておくよ」
「ん」



 そう長い長い繰り返しの始まりが、こうもあっさり起こるなんて。



 おまえが、いるのに。



 自分だけ眠るには、早すぎるよ。
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