一.後ろを振り向くことなかれ
「籠屋ってあれだよ、料亭。和物揃いの観光商店街の一番奥にあるでっかい屋敷」
翌日の午後、校舎の窓側に寄りかかりブリック飲料のストローを噛みながら黒髪赤メッシュの少年は言った。
「ああよかった大体合ってる」
「なんだ知ってるなら訊くなよ」
「頼む榊、一緒に来てくれ」
「動機は」
「小生意気な美人と会話したいむしろ一言文句を言いに」
羽鶴が両手を合わせ眉間にしわを寄せたまま言えば、榊はにやりと笑ってストローを噛むことをやめた。
「ははあ、恋か」
「からかうなよ。男だっつの。自分を見世物だと言ってたから気になって」
「お前の銀髪も珍しいがな。見た目のいいやつ揃えてるから目の保養になるんだと」
「榊、お前何となく詳しいな」
「姉貴が通っててな。何より飯が美味いんだと。制服のままでいいか?」
「学生だしいいんじゃないか?」
「そういう意味じゃない。羽鶴、お前人に会いに行くんだろ。俺は付き添い」
「あー……このまま行くわ……しっかり着てくと笑われそうだ、なんか」
「そりゃ癖のありそうな美人だなあ」
榊が苦笑してブリック飲料をごみ箱へ捨てた。
チャイムが鳴り、それぞれの席へ着く。友人に頼み込んで人に会うのは正直かっこ悪いだろうが、榊は恋人の『お願い! 今すぐ来て!』がない限り付き合う男だ。
羽鶴がそっと感謝をしながら榊を拝むと小さくシャーペンで教壇を指し『馬鹿やってないで前を向け』と伝える背中にこっそり笑った。
翌日の午後、校舎の窓側に寄りかかりブリック飲料のストローを噛みながら黒髪赤メッシュの少年は言った。
「ああよかった大体合ってる」
「なんだ知ってるなら訊くなよ」
「頼む榊、一緒に来てくれ」
「動機は」
「小生意気な美人と会話したいむしろ一言文句を言いに」
羽鶴が両手を合わせ眉間にしわを寄せたまま言えば、榊はにやりと笑ってストローを噛むことをやめた。
「ははあ、恋か」
「からかうなよ。男だっつの。自分を見世物だと言ってたから気になって」
「お前の銀髪も珍しいがな。見た目のいいやつ揃えてるから目の保養になるんだと」
「榊、お前何となく詳しいな」
「姉貴が通っててな。何より飯が美味いんだと。制服のままでいいか?」
「学生だしいいんじゃないか?」
「そういう意味じゃない。羽鶴、お前人に会いに行くんだろ。俺は付き添い」
「あー……このまま行くわ……しっかり着てくと笑われそうだ、なんか」
「そりゃ癖のありそうな美人だなあ」
榊が苦笑してブリック飲料をごみ箱へ捨てた。
チャイムが鳴り、それぞれの席へ着く。友人に頼み込んで人に会うのは正直かっこ悪いだろうが、榊は恋人の『お願い! 今すぐ来て!』がない限り付き合う男だ。
羽鶴がそっと感謝をしながら榊を拝むと小さくシャーペンで教壇を指し『馬鹿やってないで前を向け』と伝える背中にこっそり笑った。