三.菊花百景
「あの人が銀次か」
籠屋への帰り道、ぽつりとこぼした羽鶴に朝日と宵ノ進が同時に顔を向けたので、慌てて首を振る。
「いやな意味じゃなくて!! 前大瑠璃が言ってたから誰だろうって思ってたんだ。優しい人だったね」
「銀次ちゃんのお店はクセになるからね! ていうかヤな意味とか思ってないから大丈夫だよ~心配さんめ! 二人とも付き合ってくれてありがとね! 朝日一人だと持ちきれなくてっていうかみんなで出掛けたかったんだよね、最近なんか窮屈でしょ? 宵ちゃんも謹慎とか重く考えないでいいと思うんだよねー。息抜き大事だし!」
「ありがとうございます」
「ありがとう朝日……窮屈かあ僕あんまりわからなかったなあ」
「おお鶴ちゃんはそれでいいと思うよ!」
「荷物持ちも真実ですが」
「えへへばれた? だってたくさんお買い物したいじゃん!」
「何が本当なんだ……」
「えー朝日が言ってるのは全部本当なんだけどなー。鶴ちゃんと宵ちゃんとお出かけして楽しかったし! おおー着いた着いた! たっだいまー!」
籠屋に着くと玄関で出迎えた白鈴に朝日が小包を渡している。
「お土産! 銀次ちゃんのとこも寄ったのー!」
「わあ、ありがとう朝日……! 嬉しい……!」
「さて荷物は上までですかね」
「三階までかあ朝日やるなぁ……」
「頼んだぜ野郎共!」
無事三階まで荷物を運ぶと、後は自分で部屋に持っていくという朝日は晴れやかな顔で手を挙げ半分の荷物と共に廊下の奥へ去った。残り半分も往復して運ぶのだろう、手伝おうか、と声を掛けたが、晴れやかに断られてしまった。
「あ、いたいた二人とも。お疲れ。明日山に行くから支度をしておいて」
「はあ!? 山!? 何大瑠璃何考えてるの!?」
「わかりましたお弁当を作らねば」
「遊びに行くのか……! でも山って!! 僕多分小さいとき以来なんだけど!!」
「落ち着きなよ鶴。歩いて行ける距離だから心配ないよ。虎雄の持ち山があって……まあいいかこの話は。あれ宵なにそれいい匂い」
「おやきです、皆の分あります故お茶にしましょうか」
「おいおい鼻が効くなぁ大瑠璃お腹空いてたの?」
「うるさいなあ鶴の分も食べてやろうか」
「うぁーちょっとからかっただけじゃん! 僕の分は僕の分!」
「慌てずとも皆の分ありますから……」
「宵も真に受けないの」
その日はみんなでお茶をして、なんてことはない会話をだらだらとしたと思う。けれどそれが居心地がいいと、羽鶴は茶を啜りながら思うのだった。
籠屋への帰り道、ぽつりとこぼした羽鶴に朝日と宵ノ進が同時に顔を向けたので、慌てて首を振る。
「いやな意味じゃなくて!! 前大瑠璃が言ってたから誰だろうって思ってたんだ。優しい人だったね」
「銀次ちゃんのお店はクセになるからね! ていうかヤな意味とか思ってないから大丈夫だよ~心配さんめ! 二人とも付き合ってくれてありがとね! 朝日一人だと持ちきれなくてっていうかみんなで出掛けたかったんだよね、最近なんか窮屈でしょ? 宵ちゃんも謹慎とか重く考えないでいいと思うんだよねー。息抜き大事だし!」
「ありがとうございます」
「ありがとう朝日……窮屈かあ僕あんまりわからなかったなあ」
「おお鶴ちゃんはそれでいいと思うよ!」
「荷物持ちも真実ですが」
「えへへばれた? だってたくさんお買い物したいじゃん!」
「何が本当なんだ……」
「えー朝日が言ってるのは全部本当なんだけどなー。鶴ちゃんと宵ちゃんとお出かけして楽しかったし! おおー着いた着いた! たっだいまー!」
籠屋に着くと玄関で出迎えた白鈴に朝日が小包を渡している。
「お土産! 銀次ちゃんのとこも寄ったのー!」
「わあ、ありがとう朝日……! 嬉しい……!」
「さて荷物は上までですかね」
「三階までかあ朝日やるなぁ……」
「頼んだぜ野郎共!」
無事三階まで荷物を運ぶと、後は自分で部屋に持っていくという朝日は晴れやかな顔で手を挙げ半分の荷物と共に廊下の奥へ去った。残り半分も往復して運ぶのだろう、手伝おうか、と声を掛けたが、晴れやかに断られてしまった。
「あ、いたいた二人とも。お疲れ。明日山に行くから支度をしておいて」
「はあ!? 山!? 何大瑠璃何考えてるの!?」
「わかりましたお弁当を作らねば」
「遊びに行くのか……! でも山って!! 僕多分小さいとき以来なんだけど!!」
「落ち着きなよ鶴。歩いて行ける距離だから心配ないよ。虎雄の持ち山があって……まあいいかこの話は。あれ宵なにそれいい匂い」
「おやきです、皆の分あります故お茶にしましょうか」
「おいおい鼻が効くなぁ大瑠璃お腹空いてたの?」
「うるさいなあ鶴の分も食べてやろうか」
「うぁーちょっとからかっただけじゃん! 僕の分は僕の分!」
「慌てずとも皆の分ありますから……」
「宵も真に受けないの」
その日はみんなでお茶をして、なんてことはない会話をだらだらとしたと思う。けれどそれが居心地がいいと、羽鶴は茶を啜りながら思うのだった。