その町には小さい頃、何度か行ったことがある。いや、正確に言えば通りすぎた・・・になるけど
もっと正確に言えば、母さんが幼稚園児の俺を連れて買い物へ出掛けるとき。バスでちらっと通りすぎるだけ

俺が住んでいる都内から車で１時間走ったところにある小さな町。町並みは普通にきれいで洋風レトロテイストな家ばかり


それに合うように、いや、合わせているのか木々や山や川が季節それぞれとてもよく映えていた
俺が唯一覚えている景色は、春、満開の桜並木が道路脇に並んでてまるで桜のトンネルを通っているみたいな・・・


バスは月に数回程度しか利用しなかったけど行く度に変わる町の景色がとてもきれいで、新鮮で買い物に行くのが楽しかった理由の１つでもある

バスでその町を通ると、ここはきれいだね！と興奮しながらよく母さんに言っていたらしい



日本は四季のはっきりした国だって言われるけど、この町は更に四季折々が美しい景色を見せているような気がした

でも、１年ぐらいで買い物してた店が移動してしまったからそれからその町を見ることはできなかったけどね


今ではどういう景色だったか他にあまりよく覚えていない。だけど、景色を見たときの心が晴れやかになっていく感覚は、残っている




その町は四季織（しきおり）町という─────