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「 」
言葉が出て来なかった。初めてスポットライトに当たった時の様な変な汗が出る。
混雑するショッピングモール、偶然鉢合わせた数メートル先にいる女性は多分、俺の彼女だ。
万が一の見間違えを願ってよく観察する。
整えられた純麗な黒髪、円らな瞳、日向のように柔らかく歯を見せてにっこりと笑う姿、右目の下にある涙黒子。
間違えなく花子だ。
隣に男がいる事以外。
鞄から水を取り出して一口、渇いた喉を潤わせて緊張をほぐす。
まさか、花子に限ってそんなこと。
彼女は今日、友達とランチに行っているはず。
我ながら、俺への気がなくなる素振など一切なかった。
“じゃあ、何故?”
仲のよさそうにする二人を目前にすれば抑えた理性も探求心に負け後を追う。
二人が入っていった先は、カップル向けの商品が並ぶコーナー。
成程。ここまでくれば、最早確信的。証拠の写真を撮って己惚れた自分の滑稽さを嘲笑いながら、これ以上のダメージを食らわない為に二人に背を向けた。
そんなことがあってから、かれこれ約一週間が経った3月13日。
PDFを開いたら並んでいる数多の数字たちの中に俺の受験番号はあった。
受験時の手応え的に心配は少なかったが、
やはり念願の医者へとまた一歩近づけたとなると、全身から緊張と不安がどっと抜け落ち、入れ替わるように喜びが体中の血管を駆け巡っていく。
親への電話を済ませて暫くした後、指がゆっくりとディスプレイに彼女の名前を表示させる。ボタンを押せば、きっと名実ともに俺達は別れることになるだろう。記憶の懐古で混沌とした頭の中、通話ボタンを押した。
「もしもし」
「もしもし颯…。どうだった?」
「受かってたよ。合格。」
やったー!!!という自分が受かったかのような大声に端末を一端耳から遠ざける。
「うるさいよ。笑」
「そっちいっていい?」
「うん。待ってる。」
通話終了を押してから、「実はもう近くまで来てるんだ。」なんて笑う声を脳内で反芻させていたら、割とすぐにチャイムが鳴った。やばい、思った以上に俺は彼女に惚れていたのかもしれない。
「おめでとう!これ、ケーキ。買ってきちゃった。ふたりで食べよ?」
小皿に移されたケーキを美味しそうに頬張る上機嫌な横顔を見ていると、嫉妬と疑念が口を滑らせてしまった。
「他の男のところ、行かなくていいの?」
「・・・え?」
「もう、俺の事好きじゃないんでしょ?」
「なに、言ってるの?」
あまりにも俺が鋭利な顔をしていたのか、彼女のふざけようとした声は行き場をなくして不安定に宙を舞った。
「俺、見たんだよ。」
あの日の出来事を話しながら証拠となる写真を見せる。
まさか、こんな現場の本人になるとは。
「あ~!!」
写真を見た彼女の顔は一変、一気に柔らかい顔に逆戻り。
益々、俺の頭にクエスチョンが浮かぶ。
「では、問題です。デェーデン!この日、私は何故わざわざ男友達とこの場所に行ったでしょうか?」
「…ほかの男が「残念!!」
「え?」
そんな訳ないじゃん。と笑う彼女を見てホッとしつつも、本題に戻る。
何故?
「おーっと、流石の東大医学部のプリンスも恋愛の問題は苦手か?」
「やーめろって。もう卒業したんだから笑」
「でも、東大王の卒業はまだじゃん。はい、じゃあヒント!
これはなんでしょう?」
彼女の鞄から出てきたのは小さめの箱。
「開けてみて。」
中には、赤と青の二つのアンクレット。
「はい。じゃあ正解をどうぞ!」
「…これ買いに行ってた?」
「正解!」
「ごめん。絶対フられると思ってた。」
「え~。信用ないなあ。ペアリングもいいかなと思ったんだけど、消毒とか手術の練習とか手作業の時に邪魔かなと思って意見もらってたの。」
「俺だって最初はまさかと思ったよ?でもカップルコーナーは怪しむでしょ。」
「えへへ。確かに。颯こそ、病院で美人敏腕女医に惹かれたりしないでよ。」
「はーい。」
「うわっ、棒読み。笑」
なんて笑い合いながら過ごした、春の一日。
言葉が出て来なかった。初めてスポットライトに当たった時の様な変な汗が出る。
混雑するショッピングモール、偶然鉢合わせた数メートル先にいる女性は多分、俺の彼女だ。
万が一の見間違えを願ってよく観察する。
整えられた純麗な黒髪、円らな瞳、日向のように柔らかく歯を見せてにっこりと笑う姿、右目の下にある涙黒子。
間違えなく花子だ。
隣に男がいる事以外。
鞄から水を取り出して一口、渇いた喉を潤わせて緊張をほぐす。
まさか、花子に限ってそんなこと。
彼女は今日、友達とランチに行っているはず。
我ながら、俺への気がなくなる素振など一切なかった。
“じゃあ、何故?”
仲のよさそうにする二人を目前にすれば抑えた理性も探求心に負け後を追う。
二人が入っていった先は、カップル向けの商品が並ぶコーナー。
成程。ここまでくれば、最早確信的。証拠の写真を撮って己惚れた自分の滑稽さを嘲笑いながら、これ以上のダメージを食らわない為に二人に背を向けた。
そんなことがあってから、かれこれ約一週間が経った3月13日。
PDFを開いたら並んでいる数多の数字たちの中に俺の受験番号はあった。
受験時の手応え的に心配は少なかったが、
やはり念願の医者へとまた一歩近づけたとなると、全身から緊張と不安がどっと抜け落ち、入れ替わるように喜びが体中の血管を駆け巡っていく。
親への電話を済ませて暫くした後、指がゆっくりとディスプレイに彼女の名前を表示させる。ボタンを押せば、きっと名実ともに俺達は別れることになるだろう。記憶の懐古で混沌とした頭の中、通話ボタンを押した。
「もしもし」
「もしもし颯…。どうだった?」
「受かってたよ。合格。」
やったー!!!という自分が受かったかのような大声に端末を一端耳から遠ざける。
「うるさいよ。笑」
「そっちいっていい?」
「うん。待ってる。」
通話終了を押してから、「実はもう近くまで来てるんだ。」なんて笑う声を脳内で反芻させていたら、割とすぐにチャイムが鳴った。やばい、思った以上に俺は彼女に惚れていたのかもしれない。
「おめでとう!これ、ケーキ。買ってきちゃった。ふたりで食べよ?」
小皿に移されたケーキを美味しそうに頬張る上機嫌な横顔を見ていると、嫉妬と疑念が口を滑らせてしまった。
「他の男のところ、行かなくていいの?」
「・・・え?」
「もう、俺の事好きじゃないんでしょ?」
「なに、言ってるの?」
あまりにも俺が鋭利な顔をしていたのか、彼女のふざけようとした声は行き場をなくして不安定に宙を舞った。
「俺、見たんだよ。」
あの日の出来事を話しながら証拠となる写真を見せる。
まさか、こんな現場の本人になるとは。
「あ~!!」
写真を見た彼女の顔は一変、一気に柔らかい顔に逆戻り。
益々、俺の頭にクエスチョンが浮かぶ。
「では、問題です。デェーデン!この日、私は何故わざわざ男友達とこの場所に行ったでしょうか?」
「…ほかの男が「残念!!」
「え?」
そんな訳ないじゃん。と笑う彼女を見てホッとしつつも、本題に戻る。
何故?
「おーっと、流石の東大医学部のプリンスも恋愛の問題は苦手か?」
「やーめろって。もう卒業したんだから笑」
「でも、東大王の卒業はまだじゃん。はい、じゃあヒント!
これはなんでしょう?」
彼女の鞄から出てきたのは小さめの箱。
「開けてみて。」
中には、赤と青の二つのアンクレット。
「はい。じゃあ正解をどうぞ!」
「…これ買いに行ってた?」
「正解!」
「ごめん。絶対フられると思ってた。」
「え~。信用ないなあ。ペアリングもいいかなと思ったんだけど、消毒とか手術の練習とか手作業の時に邪魔かなと思って意見もらってたの。」
「俺だって最初はまさかと思ったよ?でもカップルコーナーは怪しむでしょ。」
「えへへ。確かに。颯こそ、病院で美人敏腕女医に惹かれたりしないでよ。」
「はーい。」
「うわっ、棒読み。笑」
なんて笑い合いながら過ごした、春の一日。