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別の人の彼女になった。
新しい年上の彼とのデートは彼がオススメのDVDを完璧に整えられた部屋での鑑賞になった。
当然だけど航平の部屋とは全く違う間取り。
たまに部屋に遊びに行ったときには私が来るために掃除してくれてたのか、周りをちらちら見るし、あからさまに緊張してたよなあ。トプ画にしてくれてたぬいぐるみ、まだ持ってるかな。
「今コーヒー淹れるから先にそこ座ってて。カフェオレでよかったよね?」
「うん。ありがとう。」
ソファーに座ってスマホを見ながら彼を待つ。
本当はコーヒーは苦手だけど、
紳士な彼の前で子供っぽいと思われないようにと一度言いそびれてしまった手前、
もうずっと言えない気がする。
「花子何飲む?コーヒー?お茶?オレンジジュースもあるけど。」
「コーヒー飲めないから大人じゃないなんて偏見だと思わない?」
口を大きく開けて文句を言っていた頃が懐かしい。
「いや誰もそんなこと言ってないでしょ。笑」
「言ってないし言われないけどさ。なんか感じちゃうんだよね。オレンジジュースで。」
「おっけー。じゃあいいじゃん。
俺はそんなこと感じないし、これからは俺が(名前)にずっとオレンジジュースを渡せばこれで解決。じゃない?」
「まあ、確かに。私オレンジジュース好きだし。ありがとう。ってなんか恥ずいよもう。」
なんて笑いあって以来、いつも飲み物の選択肢からコーヒーを消して、出来るだけオレンジジュースを入れてくれた彼の笑顔が頭に浮かんで離れないから、ブラックアウトしたスマホをもう一度起動させた。
ブラックコーヒーとカフェオレ、ポップコーンを並べて見始めた映画。
実は航平とも一緒に見た定番の感動系ラブロマンス。
本当、運命って悪戯。
ストーリーが分かっていてもやはり作品がいいので涙が止まらない。ああ、メイクが崩れる。
友達が「自分より泣いてる人を見ると急に覚めちゃう派なんだよね。」と言っていた際はなんだそれと思っていたけれど、意外と私もその類なのかもしれない。
隣で航平が「なんでそんなに泣かずにいられるの?ごめん、俺もう無理。ティッシュ取ってくる。」と中盤辺りで言われた時には全然泣かずにむしろおちょっくって笑ってたのにな。
映画を観終わって彼との優雅なお話タイムに入る。
付き合いたての頃は新しい彼に少し浮かれていたけれど、彼の地雷を踏みそうになるポイントだと知ってしまった今は少し緊張が増える。講義の愚痴なんて言えそうもない。
唇を湿らせたカフェオレはやっぱり苦い。
「春から大学4年って言ったら卒論と就活か~。
そういえば花子さん、何か聞きたいことある?俺でよければ何でも答えるけど。」
「うーん。○○さんはどうやって今の職業を見つけました?」
「うーん。『なりたい』というよりかは、僕は人手が足りない安定した『なれる』今の業種を選んだって感じかな。」
当たり障りのない質問に安堵しふむふむと頷きながら「就活」言葉だけがぼんやりと頭の中を漂っている。
この流れで「大学が言う様な、理想の先生になれる気なんて到底しない。」なんて言ったらきっと咎められてしまうな。
航平と揉めたあの日だって原因はそれだった。必修の就活の講義終わりへと脳内が新しい彼の話を片手間に時間を戻す。
「航平はQuizKnockに就職するの?」
「うん。まあ、今も殆ど正社員みたいなもんだからね。」
「いままで教職一緒に取ってきたのに?」
「そりゃ、やっぱり教師って仕事が好きし1年の頃みたいだったら掛け持ちしながら採用試験受けただろうけど、今の仕事量じゃさすがに無理でしょ。
まあ、この先もし仮に傾いてきたら?またそっちの道に戻るかもしれないけど。」
確かに、教員になるカリキュラムを4年受けたら、誰でも教員免許は貰える。
免許だけもらって試験は受けずに教員にならない先輩も多くはなかった。
「でもさ、免許だけもってあとからもう一回試験受けるの大変じゃん。
航平は先生してるときの方が輝いてるよ。航平の模擬授業同期で1番楽しかったし。」
「それはまあ、ね。ありがとう。」
「どうにかなるでしょ。そっちの方は7人もメインメンバーいるんだから。」
「は?」
軽率な一言だった。今でも後悔している。
その後はお互いにヒートアップして喧嘩別れだった。
お互い大学生にもなれば友達の前では同級生としてギクシャクしないようにと気を利かせることは出来たけれど、本質的な心の穴は何も埋まってなかったのかもしれない。
彼の夢を受け止めなかった私が誰かに夢や希望を語れないなんて因果応報かな。
航平。私、別の人の彼女になったよ。貴方も早く、ほかの人の彼氏になりなよ、なんて。
電車にまだ余裕があるからと彼の家を出た後も脳内はあの頃を遡っていく。
「花子は、どんな先生になりたいの?」
「えー、なんだろう。
私が相談に乗ってもらったみたいに何でも頼ってもらえる先生かな。」
「いいじゃん。俺も。そんな感じかな。ほかの先生も生徒も気付かなかった良さを引き出せるような先生になりたいかな。あ、でも授業が分かりやすいのは大前提ね。」
「当たり前じゃん。笑」
気付けば毎晩開いてしまっている、LINEアプリ。
「…もしもし。どうしたの?」
押してしまった。
騒がしい声が遠巻きに聞こえてくる。外にでもいるのだろうか。
「…航平。」
こんなに彼を傷つけておいて今更、私が何を言えるのだろう。
「何、もうこれからはみんなと同じ様にこうちゃんって呼ぶんじゃ…」
笑い飛ばすような優しい声が止まった。
聞こえてしまったのだろうか、ちゃんと殺したはずの嗚咽が。
「どこ?」
「え?」
「だから、いまどこにいるの?」
「家。今帰ってきた。」
「今から行くから、外に出ないで待ってて。」
途切れた電話、暫くして鳴る家のチャイム。
ドアを開けると、会いたかった人がいた。
「ごめん、お邪魔するね。」
そう言って中に入ってドアを閉める。
何がごめんなの。私が呼び出したみたいなものなのに。
どんどん流れていく涙が止まらない。
「もう、こんなに泣いて…。話せる?」
指で涙をぬぐってくれる航平の手、外の温度で冷たくて、でも大きい。
「なんで、来てくれたの?もう、彼氏じゃないんだよ?ただの同級生なんだよ?」
「何言ってんの。好きだからに決まってんじゃん。」
悪い事だと分かっていても、心は止められなかった。
抱きしめられたその肩を押す事なんて、私には出来なかった。
「結局好きなまんまだから、別れても(名前)よりいい人なんて見つからない。
(名前)が笑ってたら嬉しいし、泣いてたら辛いし一番に助けたいんだよ。」
いつもは恥ずかしがって「好き」だなんて言葉絶対言わないのに、こんな時だけキメてくるだから本当に狡い。好き。
堕ちていく涙の滴が航平のコートに染みを作る。
「私、別の人の彼女になったの。」
「え?」
離しそうになった肩を、今度は私が離さない。
「でも、好きなの。大好きなの。
私の方から傷つけたくせに、航平のことばっかり思い出しちゃうの。」
「うん。」
背中を優しく撫でてくれる手は、もう少し暖かい。
「ごめん。あの時も、今も。私が最低で、巻き込んで。
明日絶対あの人とは別れる。絶対。
だから今夜だけ、もう少しだけ、そばにいて?」
暫くの沈黙。「今の忘れて」と言おうとしたその時。
「…仕方ないな。
俺と花子、共犯ね。」
別の人の彼女なんて、やっぱり私には無理だ。
私が好きなのは航平、貴方だけ。
新しい年上の彼とのデートは彼がオススメのDVDを完璧に整えられた部屋での鑑賞になった。
当然だけど航平の部屋とは全く違う間取り。
たまに部屋に遊びに行ったときには私が来るために掃除してくれてたのか、周りをちらちら見るし、あからさまに緊張してたよなあ。トプ画にしてくれてたぬいぐるみ、まだ持ってるかな。
「今コーヒー淹れるから先にそこ座ってて。カフェオレでよかったよね?」
「うん。ありがとう。」
ソファーに座ってスマホを見ながら彼を待つ。
本当はコーヒーは苦手だけど、
紳士な彼の前で子供っぽいと思われないようにと一度言いそびれてしまった手前、
もうずっと言えない気がする。
「花子何飲む?コーヒー?お茶?オレンジジュースもあるけど。」
「コーヒー飲めないから大人じゃないなんて偏見だと思わない?」
口を大きく開けて文句を言っていた頃が懐かしい。
「いや誰もそんなこと言ってないでしょ。笑」
「言ってないし言われないけどさ。なんか感じちゃうんだよね。オレンジジュースで。」
「おっけー。じゃあいいじゃん。
俺はそんなこと感じないし、これからは俺が(名前)にずっとオレンジジュースを渡せばこれで解決。じゃない?」
「まあ、確かに。私オレンジジュース好きだし。ありがとう。ってなんか恥ずいよもう。」
なんて笑いあって以来、いつも飲み物の選択肢からコーヒーを消して、出来るだけオレンジジュースを入れてくれた彼の笑顔が頭に浮かんで離れないから、ブラックアウトしたスマホをもう一度起動させた。
ブラックコーヒーとカフェオレ、ポップコーンを並べて見始めた映画。
実は航平とも一緒に見た定番の感動系ラブロマンス。
本当、運命って悪戯。
ストーリーが分かっていてもやはり作品がいいので涙が止まらない。ああ、メイクが崩れる。
友達が「自分より泣いてる人を見ると急に覚めちゃう派なんだよね。」と言っていた際はなんだそれと思っていたけれど、意外と私もその類なのかもしれない。
隣で航平が「なんでそんなに泣かずにいられるの?ごめん、俺もう無理。ティッシュ取ってくる。」と中盤辺りで言われた時には全然泣かずにむしろおちょっくって笑ってたのにな。
映画を観終わって彼との優雅なお話タイムに入る。
付き合いたての頃は新しい彼に少し浮かれていたけれど、彼の地雷を踏みそうになるポイントだと知ってしまった今は少し緊張が増える。講義の愚痴なんて言えそうもない。
唇を湿らせたカフェオレはやっぱり苦い。
「春から大学4年って言ったら卒論と就活か~。
そういえば花子さん、何か聞きたいことある?俺でよければ何でも答えるけど。」
「うーん。○○さんはどうやって今の職業を見つけました?」
「うーん。『なりたい』というよりかは、僕は人手が足りない安定した『なれる』今の業種を選んだって感じかな。」
当たり障りのない質問に安堵しふむふむと頷きながら「就活」言葉だけがぼんやりと頭の中を漂っている。
この流れで「大学が言う様な、理想の先生になれる気なんて到底しない。」なんて言ったらきっと咎められてしまうな。
航平と揉めたあの日だって原因はそれだった。必修の就活の講義終わりへと脳内が新しい彼の話を片手間に時間を戻す。
「航平はQuizKnockに就職するの?」
「うん。まあ、今も殆ど正社員みたいなもんだからね。」
「いままで教職一緒に取ってきたのに?」
「そりゃ、やっぱり教師って仕事が好きし1年の頃みたいだったら掛け持ちしながら採用試験受けただろうけど、今の仕事量じゃさすがに無理でしょ。
まあ、この先もし仮に傾いてきたら?またそっちの道に戻るかもしれないけど。」
確かに、教員になるカリキュラムを4年受けたら、誰でも教員免許は貰える。
免許だけもらって試験は受けずに教員にならない先輩も多くはなかった。
「でもさ、免許だけもってあとからもう一回試験受けるの大変じゃん。
航平は先生してるときの方が輝いてるよ。航平の模擬授業同期で1番楽しかったし。」
「それはまあ、ね。ありがとう。」
「どうにかなるでしょ。そっちの方は7人もメインメンバーいるんだから。」
「は?」
軽率な一言だった。今でも後悔している。
その後はお互いにヒートアップして喧嘩別れだった。
お互い大学生にもなれば友達の前では同級生としてギクシャクしないようにと気を利かせることは出来たけれど、本質的な心の穴は何も埋まってなかったのかもしれない。
彼の夢を受け止めなかった私が誰かに夢や希望を語れないなんて因果応報かな。
航平。私、別の人の彼女になったよ。貴方も早く、ほかの人の彼氏になりなよ、なんて。
電車にまだ余裕があるからと彼の家を出た後も脳内はあの頃を遡っていく。
「花子は、どんな先生になりたいの?」
「えー、なんだろう。
私が相談に乗ってもらったみたいに何でも頼ってもらえる先生かな。」
「いいじゃん。俺も。そんな感じかな。ほかの先生も生徒も気付かなかった良さを引き出せるような先生になりたいかな。あ、でも授業が分かりやすいのは大前提ね。」
「当たり前じゃん。笑」
気付けば毎晩開いてしまっている、LINEアプリ。
「…もしもし。どうしたの?」
押してしまった。
騒がしい声が遠巻きに聞こえてくる。外にでもいるのだろうか。
「…航平。」
こんなに彼を傷つけておいて今更、私が何を言えるのだろう。
「何、もうこれからはみんなと同じ様にこうちゃんって呼ぶんじゃ…」
笑い飛ばすような優しい声が止まった。
聞こえてしまったのだろうか、ちゃんと殺したはずの嗚咽が。
「どこ?」
「え?」
「だから、いまどこにいるの?」
「家。今帰ってきた。」
「今から行くから、外に出ないで待ってて。」
途切れた電話、暫くして鳴る家のチャイム。
ドアを開けると、会いたかった人がいた。
「ごめん、お邪魔するね。」
そう言って中に入ってドアを閉める。
何がごめんなの。私が呼び出したみたいなものなのに。
どんどん流れていく涙が止まらない。
「もう、こんなに泣いて…。話せる?」
指で涙をぬぐってくれる航平の手、外の温度で冷たくて、でも大きい。
「なんで、来てくれたの?もう、彼氏じゃないんだよ?ただの同級生なんだよ?」
「何言ってんの。好きだからに決まってんじゃん。」
悪い事だと分かっていても、心は止められなかった。
抱きしめられたその肩を押す事なんて、私には出来なかった。
「結局好きなまんまだから、別れても(名前)よりいい人なんて見つからない。
(名前)が笑ってたら嬉しいし、泣いてたら辛いし一番に助けたいんだよ。」
いつもは恥ずかしがって「好き」だなんて言葉絶対言わないのに、こんな時だけキメてくるだから本当に狡い。好き。
堕ちていく涙の滴が航平のコートに染みを作る。
「私、別の人の彼女になったの。」
「え?」
離しそうになった肩を、今度は私が離さない。
「でも、好きなの。大好きなの。
私の方から傷つけたくせに、航平のことばっかり思い出しちゃうの。」
「うん。」
背中を優しく撫でてくれる手は、もう少し暖かい。
「ごめん。あの時も、今も。私が最低で、巻き込んで。
明日絶対あの人とは別れる。絶対。
だから今夜だけ、もう少しだけ、そばにいて?」
暫くの沈黙。「今の忘れて」と言おうとしたその時。
「…仕方ないな。
俺と花子、共犯ね。」
別の人の彼女なんて、やっぱり私には無理だ。
私が好きなのは航平、貴方だけ。