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川上さんside
あれから、もう3か月近くが経とうとしている。
暦が夏から秋に変わっても、1週間に2日、彼女との文通は幸か不幸か存外長く続いてしまっている。
俺の無機質なものとは違う可愛らしい封筒に包まれたそれを、崩れないようにファイルに挟んで鞄にしまう。
そのまま近くの自習室へ。
よし、つけられている気配はない。
個別で仕切られた無機質な机に座り、例のものを開く。
「拓朗へ
いつも似た内容だとつまらないと思うので、今日はクイズを出そうと思います。
第1問
月曜日に私が食べたスイーツは何でしょう?
ヒント:フランス語で「キャベツ」
第2問
水曜日の私の晩ご飯は何でしょう?
ヒント:日本で初めて食したのは水戸黄門とされていたその説は誤りであった。
その後も、自分の近況や感情・俺への心配を埋め込まれたベタ問が続き、「じゃあ、また来週。」で締めくくられた手紙をそっと指でなぞった。
時計を見ると集合時間が近い。
今日は何時にもまして大切な会議だ、遅れるわけにはいかない。
これから起こることを知ったら、花子は何というだろうか。
伊沢さんside
「ふう。」
どちらかというと報告と確認の方が多かった会議。
写真に収めてホワイトボードを眺めながら一息つく。
「議題Ⅰ 今後の動画メンバーの変遷」
川上が正式に降りる事の確定。
入れ替わりで出演をお願いしていた候補者の返事報告。
具体的な変更方針。
その際の注意点。
一般への報告の有無。
「議題Ⅱ 役員の変更」
後任が川上・山森さんになったことの報告。
俺が全ての記事を編集しなくなることで発生した問題の報告・解決策の提案。
先週の会議で分担した編集量に問題はなかったかの確認。等々。
内容に漏れがないことを確認して、コーヒーを一口飲む。
東大王・QuizKnock の知名度上昇に伴って、ありがたいことにTV等へ個人としての出演・俺を使って何かを広告したいというお話が増加した。
結果、広報としての時間が圧迫して、展開される編集長として記事の最終チェックをできる時間が物理的に限られていた。
そこに現れたのが、ストーカー事件。
川上の「ライター業務だけに専念したい。」という申し出である。
最初は道を外れた一人の犯行かと思われたが、
弁護士になった知り合いを通して誓約書にサインさせても被害が収まらず本格的に調べ直したところ、
模倣犯が複数人いるという想定外の展開だった。
ただでさえQuizKnock という集団の印象がアイドルの様な偶像的なものに変化していた事に加えて、クイズ王として演出される俺と比べてイケメンとして演出されてきた弊害がここにきて大きく具現化した。
当初、QuizKnock におけるYouTubeの活動はWebメディアの宣伝を目的とする小規模なものだったが、現在は状況が違う。
動画に出られるメンバーも増え組織としての安定が確立されてきている今、あまり公でプライベートを明らかにすることを好まない川上を、
一度くくった腹を変えさせるまでの事件が起こったうえで、このまま無理に出させ続ける事は、酷以外の何物でもなかった。
これから自分が目を通しきれていない記事が少しずつ世の中に上がっていくと思うと一抹の名残惜しさは残るが、偉大なるダーウィンの名言、「唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」にあやかれば、仕方のない事なのかもしれない。
いつの間にか生ぬるくなっていた最後の一口を飲み干すと、何かを口に出そうとしては止めて思考を繰り返している川上が目に飛び込んでくる。
「かわかみ~。」
「はい。」
「問題。」
顔が変わる。
「元々は『立派な男子』/」
「大丈夫」
「まあ、そういうことだ。お疲れ。」
「…。お疲れ様です。」
急にすべてを託すわけではない。
誰も心配なんかしてねえよ。
お前なら、大丈夫だ。
川上さんside
あの人には、本当にかなわない。
日頃はボケ倒す癖に、いざという時は心から頼りになる。
そんなことを思いながら通常業務を終わらせた後で、俺もオフィスを後にする。
久しぶりに感じる、誰にも見られていない開放感。
空のポスト。
あと1週間も待てば、日常が戻ったと言ってもいいだろう。
花子に会えるまで、もう少し。
来たる日をどう過ごそうか。
久しぶりに俺を見て、彼女は何と口にするだろう。
俺はどんな顔をするのだろう。
気付けばアルバムをスクロールして、花子の写真を探していた。
見つけたのは寝顔の盗撮。
寝不足の癖に本を開くと頑なに読み続けようとして、結果寝落ちする。
「ほんま、可愛いな。」
限界なのは、俺の方かもしれない。
あれから、もう3か月近くが経とうとしている。
暦が夏から秋に変わっても、1週間に2日、彼女との文通は幸か不幸か存外長く続いてしまっている。
俺の無機質なものとは違う可愛らしい封筒に包まれたそれを、崩れないようにファイルに挟んで鞄にしまう。
そのまま近くの自習室へ。
よし、つけられている気配はない。
個別で仕切られた無機質な机に座り、例のものを開く。
「拓朗へ
いつも似た内容だとつまらないと思うので、今日はクイズを出そうと思います。
第1問
月曜日に私が食べたスイーツは何でしょう?
ヒント:フランス語で「キャベツ」
第2問
水曜日の私の晩ご飯は何でしょう?
ヒント:日本で初めて食したのは水戸黄門とされていたその説は誤りであった。
その後も、自分の近況や感情・俺への心配を埋め込まれたベタ問が続き、「じゃあ、また来週。」で締めくくられた手紙をそっと指でなぞった。
時計を見ると集合時間が近い。
今日は何時にもまして大切な会議だ、遅れるわけにはいかない。
これから起こることを知ったら、花子は何というだろうか。
伊沢さんside
「ふう。」
どちらかというと報告と確認の方が多かった会議。
写真に収めてホワイトボードを眺めながら一息つく。
「議題Ⅰ 今後の動画メンバーの変遷」
川上が正式に降りる事の確定。
入れ替わりで出演をお願いしていた候補者の返事報告。
具体的な変更方針。
その際の注意点。
一般への報告の有無。
「議題Ⅱ 役員の変更」
後任が川上・山森さんになったことの報告。
俺が全ての記事を編集しなくなることで発生した問題の報告・解決策の提案。
先週の会議で分担した編集量に問題はなかったかの確認。等々。
内容に漏れがないことを確認して、コーヒーを一口飲む。
東大王・QuizKnock の知名度上昇に伴って、ありがたいことにTV等へ個人としての出演・俺を使って何かを広告したいというお話が増加した。
結果、広報としての時間が圧迫して、展開される編集長として記事の最終チェックをできる時間が物理的に限られていた。
そこに現れたのが、ストーカー事件。
川上の「ライター業務だけに専念したい。」という申し出である。
最初は道を外れた一人の犯行かと思われたが、
弁護士になった知り合いを通して誓約書にサインさせても被害が収まらず本格的に調べ直したところ、
模倣犯が複数人いるという想定外の展開だった。
ただでさえQuizKnock という集団の印象がアイドルの様な偶像的なものに変化していた事に加えて、クイズ王として演出される俺と比べてイケメンとして演出されてきた弊害がここにきて大きく具現化した。
当初、QuizKnock におけるYouTubeの活動はWebメディアの宣伝を目的とする小規模なものだったが、現在は状況が違う。
動画に出られるメンバーも増え組織としての安定が確立されてきている今、あまり公でプライベートを明らかにすることを好まない川上を、
一度くくった腹を変えさせるまでの事件が起こったうえで、このまま無理に出させ続ける事は、酷以外の何物でもなかった。
これから自分が目を通しきれていない記事が少しずつ世の中に上がっていくと思うと一抹の名残惜しさは残るが、偉大なるダーウィンの名言、「唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」にあやかれば、仕方のない事なのかもしれない。
いつの間にか生ぬるくなっていた最後の一口を飲み干すと、何かを口に出そうとしては止めて思考を繰り返している川上が目に飛び込んでくる。
「かわかみ~。」
「はい。」
「問題。」
顔が変わる。
「元々は『立派な男子』/」
「大丈夫」
「まあ、そういうことだ。お疲れ。」
「…。お疲れ様です。」
急にすべてを託すわけではない。
誰も心配なんかしてねえよ。
お前なら、大丈夫だ。
川上さんside
あの人には、本当にかなわない。
日頃はボケ倒す癖に、いざという時は心から頼りになる。
そんなことを思いながら通常業務を終わらせた後で、俺もオフィスを後にする。
久しぶりに感じる、誰にも見られていない開放感。
空のポスト。
あと1週間も待てば、日常が戻ったと言ってもいいだろう。
花子に会えるまで、もう少し。
来たる日をどう過ごそうか。
久しぶりに俺を見て、彼女は何と口にするだろう。
俺はどんな顔をするのだろう。
気付けばアルバムをスクロールして、花子の写真を探していた。
見つけたのは寝顔の盗撮。
寝不足の癖に本を開くと頑なに読み続けようとして、結果寝落ちする。
「ほんま、可愛いな。」
限界なのは、俺の方かもしれない。