イベント系
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あと40人。
夜も深まり始める時間帯。右手に借り物のスーツ、左手にスマホを持って一点にドアを見つめる。
今日は講義が入っていた為バタついて鍵は持ってるのに彼の部屋にスーツを取りに行けなかった。
200万の時は絶対、と思ったけどもうその時は罰ゲーム終わってるか、なんて思考だけが忙しなく右往左往する。
ガチャリ。
「ただいま。」
「おかえり。これ、スーツ。お手洗い空けてるからそこで着替えて。数的にもうすぐ生配信始めるかも。」
「了解。」
勇み足どころかダッシュでオフィス内を走る足音をを聞きつけて「お、伊沢間に合った?」という須貝さん。
「今着替え渡したけど微妙かもです。」
「OK。じゃあもうカメラ回すね。」
須貝さんがボタンを押した数秒後、スタジオ側にいるこうちゃんと山本さんから明るい声。「編集長!」と呼ぶ声が聞こえる。
「拓司さん。なった!!」
「え!!ごめん、ちょっと花子手伝って。」
トイレのドア前、距離があるとはいえカメラに音が入らない様にコソコソと会話を続ける。
ドアを開けた彼はスーツのズボンのみ履ききっているもののシャツは開いてるしジャケットと例のタスキはまだハンガーにかかったままだ。
カメラ側に歩きながらシャツのボタンを閉める彼を横目に私はジャケットとネクタイ、タスキを取って彼を追いかける。
後ろで私がセットしたジャケットに腕を通すと、彼は受け取ったタスキをかけてネクタイを巻きながらカメラの前に歩みを進めた。
離れた手がいつもより暖かくて「あ、酔ってるな」などとどうでもいい事を考えながら「え、これ、もう始まってますよね。」と言って平静を装う彼を見送った。
須貝さんが画面内に入れるようにカメラマンを私に交代する。
暫くするとふくらさんがなんとか間に合って、締めの言葉が始まった。
こうちゃんの話くらいから涙が止まらなくなって手ブレが酷い。
ファルコンさんが変わろうか?というようなアイコンタクトを送ってくれるけど、
「この瞬間は絶対に私が収めなくては。」
という責務感が私に首をふって断らせた。
拓司さんの言葉1つ1つが私の胸に染み渡っていく。ああもう、また涙が落ちちゃった。
「で」という助詞に「まだ続くの?」と思いながらも言葉を聞くと、そこにはスタッフへの感謝の言葉が綴られていたわけで。
「一緒にいろんな所に行きましょう。もしくは一緒に行けない、またはバラバラになる事があったとしても、QuizKnockにいたという事は変わりません。ですから一緒に、それぞれが信じた物を一歩一歩、作っていければ、それがQuizKnockが作る文化なのかなと思っております」
社長になるという事は、人を雇い、人を切るという事。なかよこしこよしでおててなんて繋ぎ続けられないということ。ただでさえ諸行無常な上に芸能という一際不条理な世界の中、ひとつの集団を成り立たせ、会社化し、今日まで伸び続けている。
きっと本人は気付いていないだろうけど、拓司さんは調子が悪い時期はいつも無意識に斜め下を見つめている。
彼がみつめた斜め下には、不安と人気が衰退してみんなが散り散りになってしまう、そんな未来があったのかもしれない。
私が今まで声に出さなかった事を実は彼も心のどこかで思っていたのかもしれない。それを努力と謙虚さで跳ね除けてここにいる。
そんな彼が、誇らしく本当にたまらなく愛おしい。
そんなことを思うと面越しに目が合う私は泣き過ぎて声を抑える為に最早常時片手でしかスマホを持てていないけど、そこは許して欲しい。
放送終了ボタンを押して「はい」というと「お疲れ様でした〜。」という声と共に一斉にみんなが野次が飛んでくる。
ふくらさん「ちょっと花子ちゃん泣かないでよ〜。俺も貰いそうになっちゃったじゃん。」
須貝さん「も〜、本当にそれよ。もう最後の方そっちが気になって須貝さん全然笑えなかったもん。めでたい席なんだから笑っとき?」
こうちゃん「俺まじサングラスかけてて良かった目がうるうるしてたもん。」
山本さん「嘘、僕後ろにいたから全然気づかなかった。」
談笑が生まれる中、私を泣かせた張本人が何やらソワソワしだした。
「ちょっと花子こっち来て?」
「え、なになに。」
収録用の机の前に立たされると河村さんの「伊沢さん、どうしたんですか。」という棒読みを筆頭に周りから
「あれ〜、なんだなんだ。」
というあからさまな演技が始まる。
いや、須貝さんちゃっかりビデオ回し始めてるし。
「え、配信?」
「いやいや、ただのホームビデオだから、続けて?」
いや須貝さんそのニヤニヤは何。
向かい合う拓司さんがじっと私を見つめる。
「えー、山田花子さん。いつも俺の事を支えてくれて本当にありがとうございます。」
「何、みんなの前で改まって。」
「単刀直入に言います。僕と結婚してください。どんな困難が待っていたとしても、絶対幸せにします。」
ま、まさか。空いた口が塞がらない。
跪いて指輪を差し出してくれた彼の表情は俯いていてよく見えないけれど本当にスーツがよく似合う。ありがとう東海さん。
「返事は。」
「勿論です。」
動揺、喜び、涙で返事が遅れたけれどしっかりと指輪を受け取る。
「よっ編集長!」というこうちゃんの謎のかけ声や「おめでとう〜。」という祝福の言葉に更に涙が止まらなくなる。
「ほら、伊沢カメラに見えるように指輪はめてあげな。」
カメラマン須貝さんのナイスなアシストで箱から指輪を取り出して嵌めてもらう。サイズまでピッタリなんて、どこまで完璧な男なんだ。「ありがとう」と言って感情のままモーレツにだきしめながら、この人の不安も悲しみも全部抱きしめてこの先何があっても一生この人の隣を歩こうと心に誓った。
夜も深まり始める時間帯。右手に借り物のスーツ、左手にスマホを持って一点にドアを見つめる。
今日は講義が入っていた為バタついて鍵は持ってるのに彼の部屋にスーツを取りに行けなかった。
200万の時は絶対、と思ったけどもうその時は罰ゲーム終わってるか、なんて思考だけが忙しなく右往左往する。
ガチャリ。
「ただいま。」
「おかえり。これ、スーツ。お手洗い空けてるからそこで着替えて。数的にもうすぐ生配信始めるかも。」
「了解。」
勇み足どころかダッシュでオフィス内を走る足音をを聞きつけて「お、伊沢間に合った?」という須貝さん。
「今着替え渡したけど微妙かもです。」
「OK。じゃあもうカメラ回すね。」
須貝さんがボタンを押した数秒後、スタジオ側にいるこうちゃんと山本さんから明るい声。「編集長!」と呼ぶ声が聞こえる。
「拓司さん。なった!!」
「え!!ごめん、ちょっと花子手伝って。」
トイレのドア前、距離があるとはいえカメラに音が入らない様にコソコソと会話を続ける。
ドアを開けた彼はスーツのズボンのみ履ききっているもののシャツは開いてるしジャケットと例のタスキはまだハンガーにかかったままだ。
カメラ側に歩きながらシャツのボタンを閉める彼を横目に私はジャケットとネクタイ、タスキを取って彼を追いかける。
後ろで私がセットしたジャケットに腕を通すと、彼は受け取ったタスキをかけてネクタイを巻きながらカメラの前に歩みを進めた。
離れた手がいつもより暖かくて「あ、酔ってるな」などとどうでもいい事を考えながら「え、これ、もう始まってますよね。」と言って平静を装う彼を見送った。
須貝さんが画面内に入れるようにカメラマンを私に交代する。
暫くするとふくらさんがなんとか間に合って、締めの言葉が始まった。
こうちゃんの話くらいから涙が止まらなくなって手ブレが酷い。
ファルコンさんが変わろうか?というようなアイコンタクトを送ってくれるけど、
「この瞬間は絶対に私が収めなくては。」
という責務感が私に首をふって断らせた。
拓司さんの言葉1つ1つが私の胸に染み渡っていく。ああもう、また涙が落ちちゃった。
「で」という助詞に「まだ続くの?」と思いながらも言葉を聞くと、そこにはスタッフへの感謝の言葉が綴られていたわけで。
「一緒にいろんな所に行きましょう。もしくは一緒に行けない、またはバラバラになる事があったとしても、QuizKnockにいたという事は変わりません。ですから一緒に、それぞれが信じた物を一歩一歩、作っていければ、それがQuizKnockが作る文化なのかなと思っております」
社長になるという事は、人を雇い、人を切るという事。なかよこしこよしでおててなんて繋ぎ続けられないということ。ただでさえ諸行無常な上に芸能という一際不条理な世界の中、ひとつの集団を成り立たせ、会社化し、今日まで伸び続けている。
きっと本人は気付いていないだろうけど、拓司さんは調子が悪い時期はいつも無意識に斜め下を見つめている。
彼がみつめた斜め下には、不安と人気が衰退してみんなが散り散りになってしまう、そんな未来があったのかもしれない。
私が今まで声に出さなかった事を実は彼も心のどこかで思っていたのかもしれない。それを努力と謙虚さで跳ね除けてここにいる。
そんな彼が、誇らしく本当にたまらなく愛おしい。
そんなことを思うと面越しに目が合う私は泣き過ぎて声を抑える為に最早常時片手でしかスマホを持てていないけど、そこは許して欲しい。
放送終了ボタンを押して「はい」というと「お疲れ様でした〜。」という声と共に一斉にみんなが野次が飛んでくる。
ふくらさん「ちょっと花子ちゃん泣かないでよ〜。俺も貰いそうになっちゃったじゃん。」
須貝さん「も〜、本当にそれよ。もう最後の方そっちが気になって須貝さん全然笑えなかったもん。めでたい席なんだから笑っとき?」
こうちゃん「俺まじサングラスかけてて良かった目がうるうるしてたもん。」
山本さん「嘘、僕後ろにいたから全然気づかなかった。」
談笑が生まれる中、私を泣かせた張本人が何やらソワソワしだした。
「ちょっと花子こっち来て?」
「え、なになに。」
収録用の机の前に立たされると河村さんの「伊沢さん、どうしたんですか。」という棒読みを筆頭に周りから
「あれ〜、なんだなんだ。」
というあからさまな演技が始まる。
いや、須貝さんちゃっかりビデオ回し始めてるし。
「え、配信?」
「いやいや、ただのホームビデオだから、続けて?」
いや須貝さんそのニヤニヤは何。
向かい合う拓司さんがじっと私を見つめる。
「えー、山田花子さん。いつも俺の事を支えてくれて本当にありがとうございます。」
「何、みんなの前で改まって。」
「単刀直入に言います。僕と結婚してください。どんな困難が待っていたとしても、絶対幸せにします。」
ま、まさか。空いた口が塞がらない。
跪いて指輪を差し出してくれた彼の表情は俯いていてよく見えないけれど本当にスーツがよく似合う。ありがとう東海さん。
「返事は。」
「勿論です。」
動揺、喜び、涙で返事が遅れたけれどしっかりと指輪を受け取る。
「よっ編集長!」というこうちゃんの謎のかけ声や「おめでとう〜。」という祝福の言葉に更に涙が止まらなくなる。
「ほら、伊沢カメラに見えるように指輪はめてあげな。」
カメラマン須貝さんのナイスなアシストで箱から指輪を取り出して嵌めてもらう。サイズまでピッタリなんて、どこまで完璧な男なんだ。「ありがとう」と言って感情のままモーレツにだきしめながら、この人の不安も悲しみも全部抱きしめてこの先何があっても一生この人の隣を歩こうと心に誓った。
1/5ページ