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6
何なんだ、こいつ・・・
アバッキオは、ルナの様子を見ながら考えていた。
俺がチンピラどもをボコった現場を見ても、今、キレてるフーゴとナランチャを見ても、平然としてやがった。
威圧的に睨みつければ、男でもたいていの奴はビビって、話すらできなくなる。
が、ルナは違う。
昨日もそうだったが、恐がる様子が一切ない。普通に話しかけてくる。
素人の女にしちゃあ、度胸がありすぎる。
マイペースすぎてこっちの調子が狂うほど。
ただのバカか?
だがそんな中身の無い女に、ブチャラティが惚れるわけねえしな。
敵の色仕掛けに引っかかる男じゃあないが、用心するに越したことはない。
アバッキオが溜まり場のリストランテにルナを連れて来た理由は、そういう疑念もあった。
しかしーーーー。
「あははー。16×55が28になったの?それはフーゴもキレるね。でもナランチャのほっぺたをフォークで刺すのはやりすぎ。」
「俺、バカだから・・・ごめんな、フーゴ。俺、一生懸命勉強するよ。だからまた教えてくれ。」
「僕の方こそ許してください、ナランチャ。」
「うあああっ!!馬鹿野郎ルナっ、そのピッツァ取るんじゃあねえ!残り4枚になっちまうだろ!?4はなあ、縁起が悪いんだよっ。4つから選ぶとロクなことねえんだ!!」
「はあ?何その謎のゲン担ぎ。4じゃなきゃあいいのね。ーはいどうぞ、フーゴ。」
「すみません、ルナ。女性に取り分けてもらうなんて。こちらのカプレーゼもいかがですか?」
「フーゴって、キレてない時は紳士なのね・・・」
「でもフーゴは俺より年下なんだぜ!すっげえ頭いいけど。てか、ルナっていくつ?」
「ナランチャ!女性に年齢をきくなんて、失礼だろっ!」
「18よ。みんなは?」
「あれ、ルナ、俺より1コ上なんだ。フーゴが16歳、ミスタが18歳、アバッキオは21歳でー、ブチャラティは20歳だよな。」
「みんな若いのね〜。ギャングって、もっとおじさんのイメージだったわ〜〜。」
アバッキオの心配も虚しく、チームのメンバーとルナは、かなり盛り上がっていた。
「・・・これは、いったいどういう状況だ?」
ーー来たか。
アバッキオが確信しながら振り向くと、苦々しい顔をした<リーダー>が近づいて来ていた。
「よう、ブチャラティ。遅かったな。」
ブチャラティはジロリとアバッキオを見た。
「アバッキオ、おまえの仕業か。」
「街でバッタリ会ったもんで。まあいいだろ?どうせこいつらにはー、遅かれ早かれ、だ。」
「・・・」
ブチャラティは真意を図るような目でアバッキオを見ていた。
そして、ルナの方を向き直ると、
「ルナ、そろそろ暗くなる。行こう、ホテルまで送る。」
「えっ、でもー」
「えーっ!!?まだいいじゃんブチャラティ !オレ、まだルナと話したいっ。」
「・・・まだ食事の途中ですし。帰りも、あんたが送るのなら、少しくらい遅くなっても平気でしょう。」
「ま、違う意味でアブねーかもしれねえけどーーっ!!!?」
ニヤリと笑って言ったミスタの顔が、苦痛で歪む。恐らくテーブルの下で、スティッキィ・フィンガーズを食らったのだろう。
「ー仕方ないな。」
涙目で訴えるミスタをスルーして、ブチャラティは椅子に座る。
ふとその時、アバッキオは、ルナが寂しげな表情を浮かべていたように見えた。
♢
帰り道。
ルナは、ブチャラティに送ってもらっていた。
「ご馳走してくれてありがとう。ほんとは、こっちがお礼をしなくちゃいけなかったのに。」
ブチャラティは、何でもないというふうに微笑んだ。
どきん、と、ルナの胸が鳴る。
どうしてかしら。この人の前だと、ドキドキする。
それをごまかすように言った。
「ブローノの仲間って、みんなカッコいいのね。あなたのチームに入る条件って、顔なの?」
ブチャラティは苦笑した。
「まとまらなくて苦労する。だいたい、ギャングになる奴らなんて、他人の指図を素直にきくような連中じゃあないからな。」
「でも、そんな人たちが仲間なんだから、ブローノは人望があるのね。」
さっき、短い間話しただけでも、彼らがブチャラティを尊敬し、慕っていることはルナにもわかった。
「ルナは不思議だな・・・」
突然ブチャラティは、ルナをじっと見つめて言った。
「え?」
思わずルナは首を傾げる。
「あいつらはー、ああ見えてギャングだ。仕事では、君には言えないようなこともやる。だから警戒心は人一倍強い。でも君には、初対面なのに随分心を許しているようだった。」
「それはアバッキオがーー・・・」
ブチャラティが惚れてる女、なんて言うから。とは言えない。本人を前にして。
ホテルの近くまで来ると、ブチャラティは言った。
「よかったら、今度、どこかに出かけないか。ルナの行きたい所を案内するよ。」
「えっ、いいの!?」
「ああ。」
「嬉しい!ありがとう。」
ルナは素直に喜んだ後、はた、と気づいた。
待って待って!迷子になって助けてもらったからお礼をしなきゃいけないのに、夕飯ご馳走になった上にさらに観光案内までさせたら、お礼じゃなくない!?
そう伝えると、ブチャラティは一瞬、虚をつかれたような顔をしたが、すぐにくっくっと笑い出した。
「そっちが気になるのか・・・俺としては、デートに誘ったつもりだったんだけど。」
「ーーえっ!?」
かああっ、と、頰が熱くなる。
そんなルナの様子を目を細めて見ながら、ブチャラティは長身を優雅にかがめると、彼女の片手をとった。
「おやすみ、俺の女神。」
手の甲にそっと落ちてくるキス。
電話する、と言って、ブチャラティは踵を返した。
ルナは、ふらふらとホテルのロビーに入ると、ソファに座り込む。
ーーイタリアーノって・・・(以下略)
人がわんさか通っていようが、おかまいなしなのね。
気のせいかホテルのスタッフからも、好奇の視線を感じる・・・
承太郎さんに叱られそう。
ネアポリスに何しに来たんだ、私。
ーーでも。
ルナは、リストランテでの出来事を思い出す。
一瞬だったけれど、確かに、ブチャラティからスタンドの気配を感じた。
きっと、彼は、スタンド使いだ。
そして、自分もーーーー。
「これも、運命なの・・・?」
思わず口からもれた呟き。
明るいロビーとは対照的な心を抱えて、しばらくの間、ルナは動けなかった。
何なんだ、こいつ・・・
アバッキオは、ルナの様子を見ながら考えていた。
俺がチンピラどもをボコった現場を見ても、今、キレてるフーゴとナランチャを見ても、平然としてやがった。
威圧的に睨みつければ、男でもたいていの奴はビビって、話すらできなくなる。
が、ルナは違う。
昨日もそうだったが、恐がる様子が一切ない。普通に話しかけてくる。
素人の女にしちゃあ、度胸がありすぎる。
マイペースすぎてこっちの調子が狂うほど。
ただのバカか?
だがそんな中身の無い女に、ブチャラティが惚れるわけねえしな。
敵の色仕掛けに引っかかる男じゃあないが、用心するに越したことはない。
アバッキオが溜まり場のリストランテにルナを連れて来た理由は、そういう疑念もあった。
しかしーーーー。
「あははー。16×55が28になったの?それはフーゴもキレるね。でもナランチャのほっぺたをフォークで刺すのはやりすぎ。」
「俺、バカだから・・・ごめんな、フーゴ。俺、一生懸命勉強するよ。だからまた教えてくれ。」
「僕の方こそ許してください、ナランチャ。」
「うあああっ!!馬鹿野郎ルナっ、そのピッツァ取るんじゃあねえ!残り4枚になっちまうだろ!?4はなあ、縁起が悪いんだよっ。4つから選ぶとロクなことねえんだ!!」
「はあ?何その謎のゲン担ぎ。4じゃなきゃあいいのね。ーはいどうぞ、フーゴ。」
「すみません、ルナ。女性に取り分けてもらうなんて。こちらのカプレーゼもいかがですか?」
「フーゴって、キレてない時は紳士なのね・・・」
「でもフーゴは俺より年下なんだぜ!すっげえ頭いいけど。てか、ルナっていくつ?」
「ナランチャ!女性に年齢をきくなんて、失礼だろっ!」
「18よ。みんなは?」
「あれ、ルナ、俺より1コ上なんだ。フーゴが16歳、ミスタが18歳、アバッキオは21歳でー、ブチャラティは20歳だよな。」
「みんな若いのね〜。ギャングって、もっとおじさんのイメージだったわ〜〜。」
アバッキオの心配も虚しく、チームのメンバーとルナは、かなり盛り上がっていた。
「・・・これは、いったいどういう状況だ?」
ーー来たか。
アバッキオが確信しながら振り向くと、苦々しい顔をした<リーダー>が近づいて来ていた。
「よう、ブチャラティ。遅かったな。」
ブチャラティはジロリとアバッキオを見た。
「アバッキオ、おまえの仕業か。」
「街でバッタリ会ったもんで。まあいいだろ?どうせこいつらにはー、遅かれ早かれ、だ。」
「・・・」
ブチャラティは真意を図るような目でアバッキオを見ていた。
そして、ルナの方を向き直ると、
「ルナ、そろそろ暗くなる。行こう、ホテルまで送る。」
「えっ、でもー」
「えーっ!!?まだいいじゃんブチャラティ !オレ、まだルナと話したいっ。」
「・・・まだ食事の途中ですし。帰りも、あんたが送るのなら、少しくらい遅くなっても平気でしょう。」
「ま、違う意味でアブねーかもしれねえけどーーっ!!!?」
ニヤリと笑って言ったミスタの顔が、苦痛で歪む。恐らくテーブルの下で、スティッキィ・フィンガーズを食らったのだろう。
「ー仕方ないな。」
涙目で訴えるミスタをスルーして、ブチャラティは椅子に座る。
ふとその時、アバッキオは、ルナが寂しげな表情を浮かべていたように見えた。
♢
帰り道。
ルナは、ブチャラティに送ってもらっていた。
「ご馳走してくれてありがとう。ほんとは、こっちがお礼をしなくちゃいけなかったのに。」
ブチャラティは、何でもないというふうに微笑んだ。
どきん、と、ルナの胸が鳴る。
どうしてかしら。この人の前だと、ドキドキする。
それをごまかすように言った。
「ブローノの仲間って、みんなカッコいいのね。あなたのチームに入る条件って、顔なの?」
ブチャラティは苦笑した。
「まとまらなくて苦労する。だいたい、ギャングになる奴らなんて、他人の指図を素直にきくような連中じゃあないからな。」
「でも、そんな人たちが仲間なんだから、ブローノは人望があるのね。」
さっき、短い間話しただけでも、彼らがブチャラティを尊敬し、慕っていることはルナにもわかった。
「ルナは不思議だな・・・」
突然ブチャラティは、ルナをじっと見つめて言った。
「え?」
思わずルナは首を傾げる。
「あいつらはー、ああ見えてギャングだ。仕事では、君には言えないようなこともやる。だから警戒心は人一倍強い。でも君には、初対面なのに随分心を許しているようだった。」
「それはアバッキオがーー・・・」
ブチャラティが惚れてる女、なんて言うから。とは言えない。本人を前にして。
ホテルの近くまで来ると、ブチャラティは言った。
「よかったら、今度、どこかに出かけないか。ルナの行きたい所を案内するよ。」
「えっ、いいの!?」
「ああ。」
「嬉しい!ありがとう。」
ルナは素直に喜んだ後、はた、と気づいた。
待って待って!迷子になって助けてもらったからお礼をしなきゃいけないのに、夕飯ご馳走になった上にさらに観光案内までさせたら、お礼じゃなくない!?
そう伝えると、ブチャラティは一瞬、虚をつかれたような顔をしたが、すぐにくっくっと笑い出した。
「そっちが気になるのか・・・俺としては、デートに誘ったつもりだったんだけど。」
「ーーえっ!?」
かああっ、と、頰が熱くなる。
そんなルナの様子を目を細めて見ながら、ブチャラティは長身を優雅にかがめると、彼女の片手をとった。
「おやすみ、俺の女神。」
手の甲にそっと落ちてくるキス。
電話する、と言って、ブチャラティは踵を返した。
ルナは、ふらふらとホテルのロビーに入ると、ソファに座り込む。
ーーイタリアーノって・・・(以下略)
人がわんさか通っていようが、おかまいなしなのね。
気のせいかホテルのスタッフからも、好奇の視線を感じる・・・
承太郎さんに叱られそう。
ネアポリスに何しに来たんだ、私。
ーーでも。
ルナは、リストランテでの出来事を思い出す。
一瞬だったけれど、確かに、ブチャラティからスタンドの気配を感じた。
きっと、彼は、スタンド使いだ。
そして、自分もーーーー。
「これも、運命なの・・・?」
思わず口からもれた呟き。
明るいロビーとは対照的な心を抱えて、しばらくの間、ルナは動けなかった。