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何なんだ、こいつ・・・

アバッキオは、ルナの様子を見ながら考えていた。

俺がチンピラどもをボコった現場を見ても、今、キレてるフーゴとナランチャを見ても、平然としてやがった。

威圧的に睨みつければ、男でもたいていの奴はビビって、話すらできなくなる。

が、ルナは違う。

昨日もそうだったが、恐がる様子が一切ない。普通に話しかけてくる。

素人の女にしちゃあ、度胸がありすぎる。

マイペースすぎてこっちの調子が狂うほど。

ただのバカか?

だがそんな中身の無い女に、ブチャラティが惚れるわけねえしな。

敵の色仕掛けに引っかかる男じゃあないが、用心するに越したことはない。

アバッキオが溜まり場のリストランテにルナを連れて来た理由は、そういう疑念もあった。

しかしーーーー。

「あははー。16×55が28になったの?それはフーゴもキレるね。でもナランチャのほっぺたをフォークで刺すのはやりすぎ。」

「俺、バカだから・・・ごめんな、フーゴ。俺、一生懸命勉強するよ。だからまた教えてくれ。」

「僕の方こそ許してください、ナランチャ。」

「うあああっ!!馬鹿野郎ルナっ、そのピッツァ取るんじゃあねえ!残り4枚になっちまうだろ!?4はなあ、縁起が悪いんだよっ。4つから選ぶとロクなことねえんだ!!」

「はあ?何その謎のゲン担ぎ。4じゃなきゃあいいのね。ーはいどうぞ、フーゴ。」

「すみません、ルナ。女性に取り分けてもらうなんて。こちらのカプレーゼもいかがですか?」

「フーゴって、キレてない時は紳士なのね・・・」

「でもフーゴは俺より年下なんだぜ!すっげえ頭いいけど。てか、ルナっていくつ?」

「ナランチャ!女性に年齢をきくなんて、失礼だろっ!」

「18よ。みんなは?」

「あれ、ルナ、俺より1コ上なんだ。フーゴが16歳、ミスタが18歳、アバッキオは21歳でー、ブチャラティは20歳だよな。」

「みんな若いのね〜。ギャングって、もっとおじさんのイメージだったわ〜〜。」

アバッキオの心配も虚しく、チームのメンバーとルナは、かなり盛り上がっていた。

「・・・これは、いったいどういう状況だ?」

ーー来たか。

アバッキオが確信しながら振り向くと、苦々しい顔をした<リーダー>が近づいて来ていた。

「よう、ブチャラティ。遅かったな。」

ブチャラティはジロリとアバッキオを見た。

「アバッキオ、おまえの仕業か。」

「街でバッタリ会ったもんで。まあいいだろ?どうせこいつらにはー、遅かれ早かれ、だ。」

「・・・」

ブチャラティは真意を図るような目でアバッキオを見ていた。

そして、ルナの方を向き直ると、

ルナ、そろそろ暗くなる。行こう、ホテルまで送る。」

「えっ、でもー」

「えーっ!!?まだいいじゃんブチャラティ !オレ、まだルナと話したいっ。」

「・・・まだ食事の途中ですし。帰りも、あんたが送るのなら、少しくらい遅くなっても平気でしょう。」

「ま、違う意味でアブねーかもしれねえけどーーっ!!!?」

ニヤリと笑って言ったミスタの顔が、苦痛で歪む。恐らくテーブルの下で、スティッキィ・フィンガーズを食らったのだろう。

「ー仕方ないな。」

涙目で訴えるミスタをスルーして、ブチャラティは椅子に座る。

ふとその時、アバッキオは、ルナが寂しげな表情を浮かべていたように見えた。





帰り道。

ルナは、ブチャラティに送ってもらっていた。

「ご馳走してくれてありがとう。ほんとは、こっちがお礼をしなくちゃいけなかったのに。」

ブチャラティは、何でもないというふうに微笑んだ。

どきん、と、ルナの胸が鳴る。

どうしてかしら。この人の前だと、ドキドキする。

それをごまかすように言った。

「ブローノの仲間って、みんなカッコいいのね。あなたのチームに入る条件って、顔なの?」

ブチャラティは苦笑した。

「まとまらなくて苦労する。だいたい、ギャングになる奴らなんて、他人の指図を素直にきくような連中じゃあないからな。」

「でも、そんな人たちが仲間なんだから、ブローノは人望があるのね。」

さっき、短い間話しただけでも、彼らがブチャラティを尊敬し、慕っていることはルナにもわかった。

ルナは不思議だな・・・」

突然ブチャラティは、ルナをじっと見つめて言った。

「え?」

思わずルナは首を傾げる。

「あいつらはー、ああ見えてギャングだ。仕事では、君には言えないようなこともやる。だから警戒心は人一倍強い。でも君には、初対面なのに随分心を許しているようだった。」

「それはアバッキオがーー・・・」

ブチャラティが惚れてる女、なんて言うから。とは言えない。本人を前にして。

ホテルの近くまで来ると、ブチャラティは言った。

「よかったら、今度、どこかに出かけないか。ルナの行きたい所を案内するよ。」

「えっ、いいの!?」

「ああ。」

「嬉しい!ありがとう。」

ルナは素直に喜んだ後、はた、と気づいた。

待って待って!迷子になって助けてもらったからお礼をしなきゃいけないのに、夕飯ご馳走になった上にさらに観光案内までさせたら、お礼じゃなくない!?

そう伝えると、ブチャラティは一瞬、虚をつかれたような顔をしたが、すぐにくっくっと笑い出した。

「そっちが気になるのか・・・俺としては、デートに誘ったつもりだったんだけど。」

「ーーえっ!?」

かああっ、と、頰が熱くなる。

そんなルナの様子を目を細めて見ながら、ブチャラティは長身を優雅にかがめると、彼女の片手をとった。

「おやすみ、俺の女神。」

手の甲にそっと落ちてくるキス。

電話する、と言って、ブチャラティは踵を返した。

ルナは、ふらふらとホテルのロビーに入ると、ソファに座り込む。

ーーイタリアーノって・・・(以下略)

人がわんさか通っていようが、おかまいなしなのね。

気のせいかホテルのスタッフからも、好奇の視線を感じる・・・

承太郎さんに叱られそう。
ネアポリスに何しに来たんだ、私。

ーーでも。

ルナは、リストランテでの出来事を思い出す。

一瞬だったけれど、確かに、ブチャラティからスタンドの気配を感じた。

きっと、彼は、スタンド使いだ。

そして、自分もーーーー。

「これも、運命なの・・・?」

思わず口からもれた呟き。

明るいロビーとは対照的な心を抱えて、しばらくの間、ルナは動けなかった。





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