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58
「菜食主義ってよォ、あるだろ。あれって、チーズとかは食っちゃっていいわけ?」
オルビアから北へ約30キロほど行った海沿いの街。そこが、ルナの夢に出てきた(正確にはスタンドが彼女に見せている記憶らしいが、)場所だった。
「そいつはダメだろーな。牛乳や卵は牛とかニワトリのもんだからな。クリームとか使ってるケーキもダメだろうよ。」
街、といっても大きくはない。昔は違ったかもしれないが、今はCosta Smeraldaのリゾートへ集まる客たちを相手に、観光業で成り立っているようだ。サルディニアの土産品、珊瑚のアクセサリーを売る店がぽつぽつと並んでいる。適度に近代的な、悪く言えばこれといった特徴のない、よくある田舎町のように思える。
「へええええ、ケーキもダメ〜!?でも、その方が身体の調子いいのかなあ〜?」
ひとつ不思議なのは、街の感じがー、道や建物の感じがなんとなく新しい。なぜだろうか。
「ジョルノ、それ、オレにも1コくれよ。」
街の中心にあるレストランのテラス席で、ナランチャがジョルノの前にある皿をフォークで指した。
「ええ。どうぞ。」
ジョルノはナランチャの方へミニケーキの載った皿を押しながら、
「ブチャラティたち、遅いですね。」
カフェや露店が並ぶ広場に面した真新しい建物を見る。町役場であるそこへ、ブチャラティとルナが入って行ってしばらく経っていた。
「お役所ってのはよォ、時間がかかるもんなんだよ。何をするにしてもな。特にこんな田舎じゃあなァ。」
ミスタがトリッパを頬張りながら言う。その周りでは小さなスタンドたちが生ハムを奪い合っている。
「おめーは黙って待ってりゃあいいんだ、ジョルノ。」
「・・・」
ジョルノは、白ワインの入ったグラスを傾けるアバッキオから、テーブルに置いた亀へと視線を移動させた。
ーーあの、ボスから奪った<矢>は、ヴェネツィアからずっと、亀の中に保管している。
いや、奪った、というのは正確ではない。あの矢はもともと、ソアラさんのものだったのだから。もしそれが真実なら、正統な所有者は娘であるルナだ。
しかし、当のルナは、あの矢にあまり触れようとしない。おそらく彼女もほとんど知らないであろう、若い頃の母親が持っていたものだ。気にならないはずがないのに。
どうにも違和感がある。ここ最近のルナの様子にも、あの<矢>にもーーーー。
そこまで考えて、ジョルノは、はっと息をのんだ。
ーーそうだ!
ルナの<矢>は、僕が以前見たー、ポルポのスタンドに仕込まれていた<矢>とは、形状がやや違うのだ!
「あ!戻って来た。お〜い!ブチャラティ、こっち!」
ナランチャの声に顔を上げると、こちらに気づいたブチャラティとルナが近づいて来ていた。
♢
「そのナントカっていうおっさん、ホントに知ってるのかなあ?20年以上前の話なんてさァ。」
言いながら、ナランチャは頭の後ろで両手を組んで車のシートにもたれる。
「う〜ん、、、」
「可能性は低いだろうが、当たってみるしかない。ボスとソアラさんについて、どんな些細な情報でも今は知りたい。」
ブチャラティの運転する車の中で、ルナは、小さな役場の窓口で聞いた話を思い出す。
この町(当時は村だったらしいけど)は、20数年前、大火事に見舞われていた。その規模は村の半分を焼失するほどで、町は再建されたけれど、当時の役場は燃えてしまい、火事以前の記録や資料は残っていないーーー。
ブチャラティとルナが思わず絶句していると、奥の方にでんと座っていた、どことなく信楽焼のタヌキの置き物みたいな風貌のおじさんが教えてくれたのだ。
『もしかしたら、メルヴィルさんならその頃の話も知ってるかもしれないなァ。数年前からこの島に居着いて、土地の歴史やら成り立ちやらを調べてる学者さんでね。たいていの学者は遺跡の多いバルミニやヌーオロ辺りに住んでるっていうのに、この町に興味があるとかで、こんな辺鄙な町に住み着いちまって。外国人なのに、熱心なもんだよ。町の年寄りからも、いろいろ話を聞いてたはずさ。』
レストランでみんなと合流した後、チームは二手に分かれた。
ブチャラティ・ルナ・ナランチャは役場で聞いた学者さん?の家へ。
アバッキオ・ミスタ・ジョルノは、20年前の火事について町で聞き込み。
『ボスの生まれ故郷かもしれない村で、運良く火事があってすべての記録が消えるなど、都合が良すぎる。もしボス自身が手を下したとすれば、当時のボスを知る人間が誰かいるはずだ。アバッキオ、ミスタ、ジョルノ。ボスの正体につながる、手がかりを探せ・・・!』
『ー了解した。』
アバッキオの言葉とともに、ミスタとジョルノもブチャラティの目を見て頷く。
『ただし、油断するな。俺たちがこのサルディニアに上陸してすでに1日が経過している。すでにボスの追っ手がこの島に来ているかもしれん。くれぐれも気をつけろ。』
ーー昔、ママはこの土地にいた。
ルナは膝の上に置いた亀を見つめた。
なんとなく、わかる。
スタンドからーー、アブソリュート・ブレスから、それを感じるから。
ボスも一緒だったとしたら、ママのことを調べれば、ボスの正体もわかるかもしれない。
そして、この、<矢>についても。
どうしてだろう。矢の近くにいると、なんだか、全身から力が抜けていくような感覚に襲われてしまう。おかげでスタンドパワーが全然回復しない。私の気のせいなの?
それとも、この矢は、私の知っている<スタンド能力を発現させる矢>とは、何かが違うのだろか・・・
「どうやらこの家のようだ。」
ブチャラティの声にルナは我に返った。
何の変哲もない小さな家だった。小さな庭の隅ではオレンジの木が実をつけている。ブチャラティが車を停めると、3人は玄関へ向かった。
階段を上がった玄関の横には小さなウッドデッキがあり、その天井から、いかにも澄んだ音を奏でそうな真鍮製のウィンドチャイムがぶら下がっている。デッキの床は一部がスロープ状になり庭へと続いていた。
ブチャラティが玄関ドアの横の呼び鈴を押す。が、中はしんとしたまま。
・・・留守かなあ?
ブチャラティの後ろで、ルナとナランチャが目で会話していると、ドアの向こうから、ギィッと何かが軋むような音が聞こえた。
「誰だ?」
あ、いた。
「突然申し訳ない。あなたにききたいことがある。」
「・・・ききたいこと?」
「20年前にこの町で起きた火事・・・当時、この町にいたはずのー、ある男を探している。」
「・・・」
カチャリ、と、ドアノブが動く。
半円を描きながら、ゆっくりとドアが開いた。
まばゆい光が薄暗い室内に侵入し、中の人物を斜めに照らす。反射した金属がきらりと光るのと同時に、軋むような音の正体に気がついた。
「ー待っていた。」
・・・この、人は・・・
「君たちが訪ねてくるのを・・・もう長い間、私は待っていたよ。」
『あれ?自分が写ってる写真なんてめずらしいね。エジプトの時の?』
『ああ・・・まだエジプトに入ってすぐの頃か。』
『ふうん。この、ジョセフおじいちゃんの横にいる人、だあれ?』
ーー承太郎さん。
これは、私のスタンドのせいなの?
どうしてーー・・・
喉の奥から、絞り出すような声がもれた。
「・・・ポルナレフ、さん・・・」
「菜食主義ってよォ、あるだろ。あれって、チーズとかは食っちゃっていいわけ?」
オルビアから北へ約30キロほど行った海沿いの街。そこが、ルナの夢に出てきた(正確にはスタンドが彼女に見せている記憶らしいが、)場所だった。
「そいつはダメだろーな。牛乳や卵は牛とかニワトリのもんだからな。クリームとか使ってるケーキもダメだろうよ。」
街、といっても大きくはない。昔は違ったかもしれないが、今はCosta Smeraldaのリゾートへ集まる客たちを相手に、観光業で成り立っているようだ。サルディニアの土産品、珊瑚のアクセサリーを売る店がぽつぽつと並んでいる。適度に近代的な、悪く言えばこれといった特徴のない、よくある田舎町のように思える。
「へええええ、ケーキもダメ〜!?でも、その方が身体の調子いいのかなあ〜?」
ひとつ不思議なのは、街の感じがー、道や建物の感じがなんとなく新しい。なぜだろうか。
「ジョルノ、それ、オレにも1コくれよ。」
街の中心にあるレストランのテラス席で、ナランチャがジョルノの前にある皿をフォークで指した。
「ええ。どうぞ。」
ジョルノはナランチャの方へミニケーキの載った皿を押しながら、
「ブチャラティたち、遅いですね。」
カフェや露店が並ぶ広場に面した真新しい建物を見る。町役場であるそこへ、ブチャラティとルナが入って行ってしばらく経っていた。
「お役所ってのはよォ、時間がかかるもんなんだよ。何をするにしてもな。特にこんな田舎じゃあなァ。」
ミスタがトリッパを頬張りながら言う。その周りでは小さなスタンドたちが生ハムを奪い合っている。
「おめーは黙って待ってりゃあいいんだ、ジョルノ。」
「・・・」
ジョルノは、白ワインの入ったグラスを傾けるアバッキオから、テーブルに置いた亀へと視線を移動させた。
ーーあの、ボスから奪った<矢>は、ヴェネツィアからずっと、亀の中に保管している。
いや、奪った、というのは正確ではない。あの矢はもともと、ソアラさんのものだったのだから。もしそれが真実なら、正統な所有者は娘であるルナだ。
しかし、当のルナは、あの矢にあまり触れようとしない。おそらく彼女もほとんど知らないであろう、若い頃の母親が持っていたものだ。気にならないはずがないのに。
どうにも違和感がある。ここ最近のルナの様子にも、あの<矢>にもーーーー。
そこまで考えて、ジョルノは、はっと息をのんだ。
ーーそうだ!
ルナの<矢>は、僕が以前見たー、ポルポのスタンドに仕込まれていた<矢>とは、形状がやや違うのだ!
「あ!戻って来た。お〜い!ブチャラティ、こっち!」
ナランチャの声に顔を上げると、こちらに気づいたブチャラティとルナが近づいて来ていた。
♢
「そのナントカっていうおっさん、ホントに知ってるのかなあ?20年以上前の話なんてさァ。」
言いながら、ナランチャは頭の後ろで両手を組んで車のシートにもたれる。
「う〜ん、、、」
「可能性は低いだろうが、当たってみるしかない。ボスとソアラさんについて、どんな些細な情報でも今は知りたい。」
ブチャラティの運転する車の中で、ルナは、小さな役場の窓口で聞いた話を思い出す。
この町(当時は村だったらしいけど)は、20数年前、大火事に見舞われていた。その規模は村の半分を焼失するほどで、町は再建されたけれど、当時の役場は燃えてしまい、火事以前の記録や資料は残っていないーーー。
ブチャラティとルナが思わず絶句していると、奥の方にでんと座っていた、どことなく信楽焼のタヌキの置き物みたいな風貌のおじさんが教えてくれたのだ。
『もしかしたら、メルヴィルさんならその頃の話も知ってるかもしれないなァ。数年前からこの島に居着いて、土地の歴史やら成り立ちやらを調べてる学者さんでね。たいていの学者は遺跡の多いバルミニやヌーオロ辺りに住んでるっていうのに、この町に興味があるとかで、こんな辺鄙な町に住み着いちまって。外国人なのに、熱心なもんだよ。町の年寄りからも、いろいろ話を聞いてたはずさ。』
レストランでみんなと合流した後、チームは二手に分かれた。
ブチャラティ・ルナ・ナランチャは役場で聞いた学者さん?の家へ。
アバッキオ・ミスタ・ジョルノは、20年前の火事について町で聞き込み。
『ボスの生まれ故郷かもしれない村で、運良く火事があってすべての記録が消えるなど、都合が良すぎる。もしボス自身が手を下したとすれば、当時のボスを知る人間が誰かいるはずだ。アバッキオ、ミスタ、ジョルノ。ボスの正体につながる、手がかりを探せ・・・!』
『ー了解した。』
アバッキオの言葉とともに、ミスタとジョルノもブチャラティの目を見て頷く。
『ただし、油断するな。俺たちがこのサルディニアに上陸してすでに1日が経過している。すでにボスの追っ手がこの島に来ているかもしれん。くれぐれも気をつけろ。』
ーー昔、ママはこの土地にいた。
ルナは膝の上に置いた亀を見つめた。
なんとなく、わかる。
スタンドからーー、アブソリュート・ブレスから、それを感じるから。
ボスも一緒だったとしたら、ママのことを調べれば、ボスの正体もわかるかもしれない。
そして、この、<矢>についても。
どうしてだろう。矢の近くにいると、なんだか、全身から力が抜けていくような感覚に襲われてしまう。おかげでスタンドパワーが全然回復しない。私の気のせいなの?
それとも、この矢は、私の知っている<スタンド能力を発現させる矢>とは、何かが違うのだろか・・・
「どうやらこの家のようだ。」
ブチャラティの声にルナは我に返った。
何の変哲もない小さな家だった。小さな庭の隅ではオレンジの木が実をつけている。ブチャラティが車を停めると、3人は玄関へ向かった。
階段を上がった玄関の横には小さなウッドデッキがあり、その天井から、いかにも澄んだ音を奏でそうな真鍮製のウィンドチャイムがぶら下がっている。デッキの床は一部がスロープ状になり庭へと続いていた。
ブチャラティが玄関ドアの横の呼び鈴を押す。が、中はしんとしたまま。
・・・留守かなあ?
ブチャラティの後ろで、ルナとナランチャが目で会話していると、ドアの向こうから、ギィッと何かが軋むような音が聞こえた。
「誰だ?」
あ、いた。
「突然申し訳ない。あなたにききたいことがある。」
「・・・ききたいこと?」
「20年前にこの町で起きた火事・・・当時、この町にいたはずのー、ある男を探している。」
「・・・」
カチャリ、と、ドアノブが動く。
半円を描きながら、ゆっくりとドアが開いた。
まばゆい光が薄暗い室内に侵入し、中の人物を斜めに照らす。反射した金属がきらりと光るのと同時に、軋むような音の正体に気がついた。
「ー待っていた。」
・・・この、人は・・・
「君たちが訪ねてくるのを・・・もう長い間、私は待っていたよ。」
『あれ?自分が写ってる写真なんてめずらしいね。エジプトの時の?』
『ああ・・・まだエジプトに入ってすぐの頃か。』
『ふうん。この、ジョセフおじいちゃんの横にいる人、だあれ?』
ーー承太郎さん。
これは、私のスタンドのせいなの?
どうしてーー・・・
喉の奥から、絞り出すような声がもれた。
「・・・ポルナレフ、さん・・・」