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57
「・・・奇跡だわ。生きてたどり着けたなんて。」
ルナはぐったりと息を吐いた。
すぐそばまで急な崖が迫っているせいだろうか、小さな入り江のような海岸沿いはひとけがない。車の音が聞こえるので崖の上が道路になっているらしい。ここは、サルディニア島のどこら辺になるのだろう。
アバッキオが呆れたようにルナを見る。
「大げさだろ。」
「いやいやいやいや!飛行機墜落したよね!?てゆーかまだ飛べそうなのにあなたたちが海に墜としたよね!?ぜんっぜん大げさじゃないから!」
「おまえは亀に入ってブチャラティに運んでもらったんだから一番安全だったろ。溺れずにすんでよかったな。」
ぐっ、、、カナヅチのせいで常識が敗北してる。
(あの状況で!)さんざん笑われた後、ルナは半強制的に亀の中に詰め込まれ、その亀はブチャラティがジッパーを使って自分の身体の中に入れて運んでくれた。
聞いたところによると、飛行機は海面に墜落する前にジョルノの能力で植物に変えられ、着水による衝撃を最小限に抑えたらしい。そうよね、じゃないと、ものすごい波が起こって、後から降りてくるパラシュートやボートまで波にのまれちゃうもんね。
それにしても、カプリ島へのヨットもヴェネツィアへの特急列車も今回のジェット機も、ただ移動するのがなんでこんなにアドベンチャーなのよ、イタリアって国は、、、
「・・・ひとつだけ教えろ。」
改まった声音にふと顔を上げる。
岩に腰かけたルナの前に、いつのまにかアバッキオの長身があった。
「おまえたちは、いつ、ヒットマンチームと手を組むことを決めた?」
ーーごまかすことは許さない。
そんな張り詰めた凄みのある目だった。
ルナは、ゴクリと息をのむ。
「カプリ島から戻ってー、あの、葡萄畑の家にいた時に・・・」
「ーはっ。ペリーコロから話を聞いた直後じゃあねえか・・・それからヴェネツィアで奴らが現れるまでの間、俺たちには黙ってたってわけだ。」
と、アバッキオは顔を歪めるように笑って言う。ルナは思わず立ち上がった。
「っ、違うの!私が言い出したことなの!うまくいくかわからないけど、もしプロシュートたちと力をあわせて戦えたら、その方がいずれボスをーー・・・」
ブローノは、ヴェネツィアで私を助ける前から、いずれはボスを倒すつもりだった。
『ブチャラティ、僕は、ギャングスターになります!』
・・・ジョルノと初めて出会った時。
麻薬をなくすためには、街を支配するパッショーネごと乗っ取るというジョルノの夢に、ブローノの心が共鳴したから。
でもそれを、アバッキオは知らない。ミスタやナランチャやフーゴも。
ルナは、どこまで自分の口から話していいのかわからず口ごもった。
そんな彼女を、アバッキオは静かに見下ろすと、
「・・・最初に気がついたのはフーゴだ。」
フーゴ?
アバッキオは、少し離れた場所にいるブチャラティたちへ視線を向けた。
「あの、特急列車の中での攻撃を最後に、奴らからー、ヒットマンチームからの攻撃がパタリと止んだだろう。目立つ高速沿いを移動しても奴らは現れなかった・・・その辺りだ、フーゴがおかしいと言い出したのは。ポンペイでもネアポリス駅でも、先回りするぐらいの情報網を持った追っ手が、急にいなくなるのは変だってな・・・まあ今となっちゃあ、フーゴの奴がどこまで勘づいてたかはわからねえがな。」
「・・・」
「サン・ジョルジョ・マッジョーレ島でブチャラティはボスを裏切った。おまえは気を失ってたから知らねえだろうが、あの時、ジョルノの野郎だけは、驚きもせず・・・<こうなるのは最初からわかっていた>っていう態度だった。その時、俺は確信した。ブチャラティとジョルノと、おまえはー、俺たちの知らないところで、何かを計画していたんだと。」
「アバッキオ・・・」
責めるふうではなく、ただ淡々と語るその口調に、かえって胸を刺された。
ーーいくら街から麻薬をなくす為とはいえ、ボスを倒して組織を乗っ取るなんていう命しらずの行為に、アバッキオたちを巻き込むわけにはいかない。
きっとブローノはそう考えてみんなに話すつもりはなかったのだろう。少なくとも、しかるべき時期がくるまでは。
けれど、私やジョルノなんかより、ブローノとは付き合いの長いアバッキオたちからしたら、それって、ひどいことだったのかもしれない。
どんな理由があろうと、アバッキオたちに隠し事をして、彼らをないがしろにしてしまったことになるから。
頭のいいフーゴなら、きっと、いろいろなことに気づいていたに違いない。
『ブチャラティが自分のための我儘を通すのを見たのは、これが初めてだった。あなたは、彼をそうさせてくれた唯一の人だ。』
それなのに彼は、ひとことも責めることなく、私たちを陰ながら支援する為に、ひとりネアポリスへ戻った・・・
ルナはうつむいてぎゅっと目をつぶる。
私はーー・・・みんなの気持ちも考えずに、優しさに甘えてばかりだ。
その時、
「おーいッ!アバッキオ!ルナ!そんなとこで何してるんだよォ?アシが見つかったからオルビアに向かうって!」
ナランチャの大声にはっとして顔を上げる。
アバッキオは溜め息をついた。
「・・・これはただの<確認>だ。この期に及んで文句が言いたいわけじゃあねえよ。俺もフーゴも、ブチャラティが決めたことなら、それに従うだけだ。」
くしゃり、と、彼の手がルナの頭を撫でる。涙が出そうなほどに大きくて温かい手のひらだった。
「ルナ・・・おまえは強いから、優しすぎるアイツにちょうどいい。」
えっ?
彼女が呆然と目を見開くのとほぼ同時に、アバッキオは踵を返してみんなの方へ歩き出した。
モデルのように均整のとれた美しい後ろ姿で、細くすべらかな銀色の髪がきらりと輝きながら風に舞っている。身体に透明な光をまとっているようだった。
一瞬、ルナは眩しくて目を細める。
追いかければすぐ触れられるはずの広い背中がなぜか、追いかけても追いかけてもー、けっして手の届かないほど遠くに感じられた。
「・・・奇跡だわ。生きてたどり着けたなんて。」
ルナはぐったりと息を吐いた。
すぐそばまで急な崖が迫っているせいだろうか、小さな入り江のような海岸沿いはひとけがない。車の音が聞こえるので崖の上が道路になっているらしい。ここは、サルディニア島のどこら辺になるのだろう。
アバッキオが呆れたようにルナを見る。
「大げさだろ。」
「いやいやいやいや!飛行機墜落したよね!?てゆーかまだ飛べそうなのにあなたたちが海に墜としたよね!?ぜんっぜん大げさじゃないから!」
「おまえは亀に入ってブチャラティに運んでもらったんだから一番安全だったろ。溺れずにすんでよかったな。」
ぐっ、、、カナヅチのせいで常識が敗北してる。
(あの状況で!)さんざん笑われた後、ルナは半強制的に亀の中に詰め込まれ、その亀はブチャラティがジッパーを使って自分の身体の中に入れて運んでくれた。
聞いたところによると、飛行機は海面に墜落する前にジョルノの能力で植物に変えられ、着水による衝撃を最小限に抑えたらしい。そうよね、じゃないと、ものすごい波が起こって、後から降りてくるパラシュートやボートまで波にのまれちゃうもんね。
それにしても、カプリ島へのヨットもヴェネツィアへの特急列車も今回のジェット機も、ただ移動するのがなんでこんなにアドベンチャーなのよ、イタリアって国は、、、
「・・・ひとつだけ教えろ。」
改まった声音にふと顔を上げる。
岩に腰かけたルナの前に、いつのまにかアバッキオの長身があった。
「おまえたちは、いつ、ヒットマンチームと手を組むことを決めた?」
ーーごまかすことは許さない。
そんな張り詰めた凄みのある目だった。
ルナは、ゴクリと息をのむ。
「カプリ島から戻ってー、あの、葡萄畑の家にいた時に・・・」
「ーはっ。ペリーコロから話を聞いた直後じゃあねえか・・・それからヴェネツィアで奴らが現れるまでの間、俺たちには黙ってたってわけだ。」
と、アバッキオは顔を歪めるように笑って言う。ルナは思わず立ち上がった。
「っ、違うの!私が言い出したことなの!うまくいくかわからないけど、もしプロシュートたちと力をあわせて戦えたら、その方がいずれボスをーー・・・」
ブローノは、ヴェネツィアで私を助ける前から、いずれはボスを倒すつもりだった。
『ブチャラティ、僕は、ギャングスターになります!』
・・・ジョルノと初めて出会った時。
麻薬をなくすためには、街を支配するパッショーネごと乗っ取るというジョルノの夢に、ブローノの心が共鳴したから。
でもそれを、アバッキオは知らない。ミスタやナランチャやフーゴも。
ルナは、どこまで自分の口から話していいのかわからず口ごもった。
そんな彼女を、アバッキオは静かに見下ろすと、
「・・・最初に気がついたのはフーゴだ。」
フーゴ?
アバッキオは、少し離れた場所にいるブチャラティたちへ視線を向けた。
「あの、特急列車の中での攻撃を最後に、奴らからー、ヒットマンチームからの攻撃がパタリと止んだだろう。目立つ高速沿いを移動しても奴らは現れなかった・・・その辺りだ、フーゴがおかしいと言い出したのは。ポンペイでもネアポリス駅でも、先回りするぐらいの情報網を持った追っ手が、急にいなくなるのは変だってな・・・まあ今となっちゃあ、フーゴの奴がどこまで勘づいてたかはわからねえがな。」
「・・・」
「サン・ジョルジョ・マッジョーレ島でブチャラティはボスを裏切った。おまえは気を失ってたから知らねえだろうが、あの時、ジョルノの野郎だけは、驚きもせず・・・<こうなるのは最初からわかっていた>っていう態度だった。その時、俺は確信した。ブチャラティとジョルノと、おまえはー、俺たちの知らないところで、何かを計画していたんだと。」
「アバッキオ・・・」
責めるふうではなく、ただ淡々と語るその口調に、かえって胸を刺された。
ーーいくら街から麻薬をなくす為とはいえ、ボスを倒して組織を乗っ取るなんていう命しらずの行為に、アバッキオたちを巻き込むわけにはいかない。
きっとブローノはそう考えてみんなに話すつもりはなかったのだろう。少なくとも、しかるべき時期がくるまでは。
けれど、私やジョルノなんかより、ブローノとは付き合いの長いアバッキオたちからしたら、それって、ひどいことだったのかもしれない。
どんな理由があろうと、アバッキオたちに隠し事をして、彼らをないがしろにしてしまったことになるから。
頭のいいフーゴなら、きっと、いろいろなことに気づいていたに違いない。
『ブチャラティが自分のための我儘を通すのを見たのは、これが初めてだった。あなたは、彼をそうさせてくれた唯一の人だ。』
それなのに彼は、ひとことも責めることなく、私たちを陰ながら支援する為に、ひとりネアポリスへ戻った・・・
ルナはうつむいてぎゅっと目をつぶる。
私はーー・・・みんなの気持ちも考えずに、優しさに甘えてばかりだ。
その時、
「おーいッ!アバッキオ!ルナ!そんなとこで何してるんだよォ?アシが見つかったからオルビアに向かうって!」
ナランチャの大声にはっとして顔を上げる。
アバッキオは溜め息をついた。
「・・・これはただの<確認>だ。この期に及んで文句が言いたいわけじゃあねえよ。俺もフーゴも、ブチャラティが決めたことなら、それに従うだけだ。」
くしゃり、と、彼の手がルナの頭を撫でる。涙が出そうなほどに大きくて温かい手のひらだった。
「ルナ・・・おまえは強いから、優しすぎるアイツにちょうどいい。」
えっ?
彼女が呆然と目を見開くのとほぼ同時に、アバッキオは踵を返してみんなの方へ歩き出した。
モデルのように均整のとれた美しい後ろ姿で、細くすべらかな銀色の髪がきらりと輝きながら風に舞っている。身体に透明な光をまとっているようだった。
一瞬、ルナは眩しくて目を細める。
追いかければすぐ触れられるはずの広い背中がなぜか、追いかけても追いかけてもー、けっして手の届かないほど遠くに感じられた。