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48
ここはーー・・・
ルナはまったく知らない場所に立っていた。
場所というよりも、<空間>だ。
周りには何もない。ただ、深い霧のようなものが一面に立ち込めているだけ。
『私・・・』
どうしてこんな所にいるの?
えっと、確かーーー。ブローノと一緒にボスに会いに行く途中だった。教会に入って、エレベーターに乗って・・・それから・・・?
必死に思い出そうとしていた、次の瞬間、
『ルナ。』
背後から懐かしい声が聞こえた。
『ーママ!?』
振り向いた彼女の目に飛び込んできたのは、昔と変わりない母親の姿だった。
ルナは呆然と立ちすくむ。
最初に思ったのは、自分は死んでしまったのかも、ということだった。
『・・・違うわ。ルナ、あなたは生きている。彼が守ってくれたから。』
娘の思考を見透かすように、ソアラは微笑む。
『これは、スタンドの記憶・・・とでもいうのかしら。本来スタンドはひとりひとり異なるけれど、私たちの一族のスタンドは少しずつ姿を変えながらもその本質は代々受け継がれてゆく・・・だから、アブソリュート・ブレスの中には私の心が存在している。それが、スタンドを通じてあなたと話をしているのよ。』
『・・・なるほど。よくわからないけど、まあ、一種の夢みたいなものよね。うん、オッケー。』
娘の反応にソアラは苦笑する。
『あなたのそういうところ、パパにそっくりね。』
『それより!ママって昔ギャングだったの!?聞いてないんだけど!』
『そうね。言ってなかったものね。』
『いやいや、そうね、じゃあないわよ、ママ。そのせいでちょっと大変な目に遭ってるわよ?私。』
と、ルナは呆れながら言った。
ママってば相変わらず、おっとりしているというか、何というか・・・とぼけたところがあるわ。
『・・・私たちのスタンドは、人の運命を都合よく変えることはできないし、自分自身の運命はどうすることもできない。』
そう静かに言ってソアラは、目を細めて娘を見つめる。何かを懐かしむような眼ざしだった。
『ごめんね、ルナ・・・出来ればあなたを巻き込みたくはなかった。でも、あなたならきっと乗り越えられる。私にはできなかったことができるわ。あなたは強い・・・ホリィさんやジョセフさんやーー、承太郎くんのおかげかしらね。』
『・・・』
『時間がないわ。さあ、早く戻りなさい、ルナ。手遅れになる前に。早く行って、あなたの・・・』
ソアラの姿が透けるように薄くなり、声が遠くなる。自分の意識がどこか別のところへ引っ張られていくような感じがして、ルナは慌てて手を伸ばした。
『ちょっと待って!ママ!まだききたいことがー』
ーー愛する人を救いなさい。
「え・・・?」
最初に感じたのは、白い背景から一転した、闇の深さ。
ルナは2、3度、瞬きする。
目は、、、開けているわよね?よく見えないのは暗いから?どこ?私、寝てたの?
反射的に起き上がろうとしたその時、ぬるり、と、生暖かい感触が手のひらから伝わり、なにげなくそちらを見た。
「・・・」
その光景を、私は、一生忘れないと思う。
まるで私をかばうようにして、おびただしい血の海の中で倒れているブローノの姿を。
「ブローノ!!」
考えるよりも先にスタンドを発動していた。アブソリュート・ブレスのプラチナの光が、少しだけ周囲を照らす。
ルナは祈るような気持ちでブチャラティの顎下に触れた。指先にかすかな振動が伝わる。
ーー生きてる・・・
ほっと息を吐く。
でも出血がひどすぎる。いったいどんな攻撃を受けたらこんな傷になるの?ここまでひどかったら私の能力では無理だわ。ハルくんがいなければーーー。
ふと、足下に携帯電話が転がっていることに気がつく。手を伸ばしかけたその時、
「スタンドの姿は、母親と違うな・・・」
「!?」
どこからともなく響いた低い声に、ルナはびくりと身を起こす。声の持ち主が誰なのか尋ねなくてもわかった。なぜなのか理由はわからない。でも、この声を、気配を、存在をーー、<知っていた>。
「しかし、間違いなく能力は継承している・・・ソアラが消えて力を失っていたこの<矢>がー、おまえがスタンドを出した途端に、こうして再び息を吹き返したのだからッ・・・!」
キラリ、と、闇の中で何かが光る。目を凝らして見るとそれは、金色の矢のように見えた。
「・・・本当にあったのね。でもあんたにとっては、矢の封印を解く、だなんて、本当はどうでもよかったんじゃあないの?」
と、全開にしたスタンドでブチャラティの傷を治しながら言った。冷たい汗が背中を伝い落ちる。
まだ血が止まらない。時間が欲しい・・・!
「あんたの目的は最初からひとつだけ。私をこの世から消し去ること・・・違う?」
「消したつもりでも、<過去>というものは人間の真の平和をおびやかす・・・おまえのことだ、ルナ。ソアラの血を引くおまえさえ消せば、私は人生の絶頂のままでいられるのだ。」
「・・・あんたとは気が合いそうにない、と思ってたわ。」
その時、
ーールナ!落ち着いて!スタンドパワーを使いすぎている!力をセーブしなければっ!
頭の中に直接、アブソリュート・ブレスの声が響いた。
ーーこのままでは、昨日以上に肉体に不調が出る!体力がもたない!
「わかってる!でも今やめたらブローノが死んでしまう・・・やるしかないわ!」
思わず口に出したその時、
「・・・ほう。みずからの命を削ってでも、ブチャラティを助けるというのか?」
ルナは目を見張った。
ーー<どうして>。
どうしてこの男は、それを知っているの?
「おまえたちは、パンドラの業(ごう)を背負う一族。強大な力と引き換えに、残りの命を差し出さねばならない・・・つまり、」
短命だ。と、男の声が無機質に告げる。
「死ぬのがほんの少し早まるだけだ・・・その見上げた気丈さに免じて、せめてブチャラティと共にあの世へ送ってやろう。」
「・・・」
自分に向けられる敵意が、ぞわりと膨らむのを感じた。
「キング・クリムゾン!」
わずかに空気が揺れたような気がした、次の瞬間。
自分を取り巻いている4次元の空間そのものが、<歪んだ>。
そしてーーーーー。
「っ・・・!?」
何が起こったのかわからない。
でも気づいたら、アブソリュート・ブレスが、いつのまにか背後にいた<何か>に、攻撃を仕掛けていた。
それは、大きな人型のスタンドだった。額のところにもう一つ小さな顔が付いている。そして、その後ろに人影があった。
ーーいた!
やっと見えたそのスタンドに続けて攻撃しようと身構えた瞬間、素早く距離をとられて思わず舌打ちした。
ーー今の感覚は、まるで・・・
張り詰めた緊張感の中、ルナの心臓は早鐘のように打ち続ける。
まるで、わずかな間のー、数秒間の<時>が消し飛んだようだった。<止まった>わけじゃあない。だって、その数秒間を覚えてない。でもそんなことがあるの?もしかして、この男もーー・・・!?
「我がキング・クリムゾンをかわすとは驚きだ・・・ソアラの入れ知恵か!?」
確かにそう言えなくもない。
もしこれが、<スタンドの記憶>っていうものだとしたら・・・けれど。
「さあ・・・自分でもよくわからないわ。ただ、ひとつだけ確かなことはー、」
ーーけれど、今、不思議と思い出す。
子供の頃、たくさんせがんで話をきかせてもらって、教わったさまざまなことを。
『やれやれだぜ・・・』
あの、世界で一番強くて優しいスタンド使いからーーーー。
「<時>を支配するのは、あんたの専売特許じゃあないってことよ・・・!」
言うと同時に、床に落ちている携帯をつかんだ。
緑色のライトが通話中であることを示している。ブチャラティが話していた相手を、ルナは確信していた。
「ーハルくん!」
電話の向こうではっと息をのむ気配がする。
「ルナ!?あなたなんですね!?ブチャラティはー」
「ハルくん!助けてっ!」
ジョルノをさえぎり、ルナは携帯に向かって叫んだ。
「ブローノが、死んじゃう・・・!」
ここはーー・・・
ルナはまったく知らない場所に立っていた。
場所というよりも、<空間>だ。
周りには何もない。ただ、深い霧のようなものが一面に立ち込めているだけ。
『私・・・』
どうしてこんな所にいるの?
えっと、確かーーー。ブローノと一緒にボスに会いに行く途中だった。教会に入って、エレベーターに乗って・・・それから・・・?
必死に思い出そうとしていた、次の瞬間、
『ルナ。』
背後から懐かしい声が聞こえた。
『ーママ!?』
振り向いた彼女の目に飛び込んできたのは、昔と変わりない母親の姿だった。
ルナは呆然と立ちすくむ。
最初に思ったのは、自分は死んでしまったのかも、ということだった。
『・・・違うわ。ルナ、あなたは生きている。彼が守ってくれたから。』
娘の思考を見透かすように、ソアラは微笑む。
『これは、スタンドの記憶・・・とでもいうのかしら。本来スタンドはひとりひとり異なるけれど、私たちの一族のスタンドは少しずつ姿を変えながらもその本質は代々受け継がれてゆく・・・だから、アブソリュート・ブレスの中には私の心が存在している。それが、スタンドを通じてあなたと話をしているのよ。』
『・・・なるほど。よくわからないけど、まあ、一種の夢みたいなものよね。うん、オッケー。』
娘の反応にソアラは苦笑する。
『あなたのそういうところ、パパにそっくりね。』
『それより!ママって昔ギャングだったの!?聞いてないんだけど!』
『そうね。言ってなかったものね。』
『いやいや、そうね、じゃあないわよ、ママ。そのせいでちょっと大変な目に遭ってるわよ?私。』
と、ルナは呆れながら言った。
ママってば相変わらず、おっとりしているというか、何というか・・・とぼけたところがあるわ。
『・・・私たちのスタンドは、人の運命を都合よく変えることはできないし、自分自身の運命はどうすることもできない。』
そう静かに言ってソアラは、目を細めて娘を見つめる。何かを懐かしむような眼ざしだった。
『ごめんね、ルナ・・・出来ればあなたを巻き込みたくはなかった。でも、あなたならきっと乗り越えられる。私にはできなかったことができるわ。あなたは強い・・・ホリィさんやジョセフさんやーー、承太郎くんのおかげかしらね。』
『・・・』
『時間がないわ。さあ、早く戻りなさい、ルナ。手遅れになる前に。早く行って、あなたの・・・』
ソアラの姿が透けるように薄くなり、声が遠くなる。自分の意識がどこか別のところへ引っ張られていくような感じがして、ルナは慌てて手を伸ばした。
『ちょっと待って!ママ!まだききたいことがー』
ーー愛する人を救いなさい。
「え・・・?」
最初に感じたのは、白い背景から一転した、闇の深さ。
ルナは2、3度、瞬きする。
目は、、、開けているわよね?よく見えないのは暗いから?どこ?私、寝てたの?
反射的に起き上がろうとしたその時、ぬるり、と、生暖かい感触が手のひらから伝わり、なにげなくそちらを見た。
「・・・」
その光景を、私は、一生忘れないと思う。
まるで私をかばうようにして、おびただしい血の海の中で倒れているブローノの姿を。
「ブローノ!!」
考えるよりも先にスタンドを発動していた。アブソリュート・ブレスのプラチナの光が、少しだけ周囲を照らす。
ルナは祈るような気持ちでブチャラティの顎下に触れた。指先にかすかな振動が伝わる。
ーー生きてる・・・
ほっと息を吐く。
でも出血がひどすぎる。いったいどんな攻撃を受けたらこんな傷になるの?ここまでひどかったら私の能力では無理だわ。ハルくんがいなければーーー。
ふと、足下に携帯電話が転がっていることに気がつく。手を伸ばしかけたその時、
「スタンドの姿は、母親と違うな・・・」
「!?」
どこからともなく響いた低い声に、ルナはびくりと身を起こす。声の持ち主が誰なのか尋ねなくてもわかった。なぜなのか理由はわからない。でも、この声を、気配を、存在をーー、<知っていた>。
「しかし、間違いなく能力は継承している・・・ソアラが消えて力を失っていたこの<矢>がー、おまえがスタンドを出した途端に、こうして再び息を吹き返したのだからッ・・・!」
キラリ、と、闇の中で何かが光る。目を凝らして見るとそれは、金色の矢のように見えた。
「・・・本当にあったのね。でもあんたにとっては、矢の封印を解く、だなんて、本当はどうでもよかったんじゃあないの?」
と、全開にしたスタンドでブチャラティの傷を治しながら言った。冷たい汗が背中を伝い落ちる。
まだ血が止まらない。時間が欲しい・・・!
「あんたの目的は最初からひとつだけ。私をこの世から消し去ること・・・違う?」
「消したつもりでも、<過去>というものは人間の真の平和をおびやかす・・・おまえのことだ、ルナ。ソアラの血を引くおまえさえ消せば、私は人生の絶頂のままでいられるのだ。」
「・・・あんたとは気が合いそうにない、と思ってたわ。」
その時、
ーールナ!落ち着いて!スタンドパワーを使いすぎている!力をセーブしなければっ!
頭の中に直接、アブソリュート・ブレスの声が響いた。
ーーこのままでは、昨日以上に肉体に不調が出る!体力がもたない!
「わかってる!でも今やめたらブローノが死んでしまう・・・やるしかないわ!」
思わず口に出したその時、
「・・・ほう。みずからの命を削ってでも、ブチャラティを助けるというのか?」
ルナは目を見張った。
ーー<どうして>。
どうしてこの男は、それを知っているの?
「おまえたちは、パンドラの業(ごう)を背負う一族。強大な力と引き換えに、残りの命を差し出さねばならない・・・つまり、」
短命だ。と、男の声が無機質に告げる。
「死ぬのがほんの少し早まるだけだ・・・その見上げた気丈さに免じて、せめてブチャラティと共にあの世へ送ってやろう。」
「・・・」
自分に向けられる敵意が、ぞわりと膨らむのを感じた。
「キング・クリムゾン!」
わずかに空気が揺れたような気がした、次の瞬間。
自分を取り巻いている4次元の空間そのものが、<歪んだ>。
そしてーーーーー。
「っ・・・!?」
何が起こったのかわからない。
でも気づいたら、アブソリュート・ブレスが、いつのまにか背後にいた<何か>に、攻撃を仕掛けていた。
それは、大きな人型のスタンドだった。額のところにもう一つ小さな顔が付いている。そして、その後ろに人影があった。
ーーいた!
やっと見えたそのスタンドに続けて攻撃しようと身構えた瞬間、素早く距離をとられて思わず舌打ちした。
ーー今の感覚は、まるで・・・
張り詰めた緊張感の中、ルナの心臓は早鐘のように打ち続ける。
まるで、わずかな間のー、数秒間の<時>が消し飛んだようだった。<止まった>わけじゃあない。だって、その数秒間を覚えてない。でもそんなことがあるの?もしかして、この男もーー・・・!?
「我がキング・クリムゾンをかわすとは驚きだ・・・ソアラの入れ知恵か!?」
確かにそう言えなくもない。
もしこれが、<スタンドの記憶>っていうものだとしたら・・・けれど。
「さあ・・・自分でもよくわからないわ。ただ、ひとつだけ確かなことはー、」
ーーけれど、今、不思議と思い出す。
子供の頃、たくさんせがんで話をきかせてもらって、教わったさまざまなことを。
『やれやれだぜ・・・』
あの、世界で一番強くて優しいスタンド使いからーーーー。
「<時>を支配するのは、あんたの専売特許じゃあないってことよ・・・!」
言うと同時に、床に落ちている携帯をつかんだ。
緑色のライトが通話中であることを示している。ブチャラティが話していた相手を、ルナは確信していた。
「ーハルくん!」
電話の向こうではっと息をのむ気配がする。
「ルナ!?あなたなんですね!?ブチャラティはー」
「ハルくん!助けてっ!」
ジョルノをさえぎり、ルナは携帯に向かって叫んだ。
「ブローノが、死んじゃう・・・!」