RING
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
45
中世イタリアを代表する海運王国として栄えたヴェネツィア。
街は、約500年もの昔、イタリア本土の沖約3キロの海上に人工的に造られた。干潟にいくつもの杭を打ち、その上に街が形成されたのだ。それは現在まで保持され、街にはサンタ・ルチア駅と、サン・マルコ広場の間を二分して逆S字型に蛇行する大運河(Canal Grande)がめぐらされ、かつてアドリア海の女王として君臨した美しい水の都の姿を留めている。
イタリア本土とヴェネツィアをつなぐリベルタ橋は、玄関口であるサンタ・ルチア駅に続いている。そして、上陸する人々を出迎えるのは、サン・マルコ寺院の名前の由来にもなり、街の随所で見かける聖マルコの象徴でもあるーーーー、
「<有翼のライオン像>、見たかったなあ、、、」
と、ルナはぼんやり呟いた。
せっかくのヴェネツィア。観光で来たかったわ。
「・・・」
隣に腰かけている、サンタ・ルチア駅で亀の外に出してくれなかった張本人が、ノートパソコンから顔を上げる。
「・・・機嫌を直してくれ、アモーレ。この任務が終わったら何でも付き合おう。」
そう言ってブチャラティは、片手でルナの頭から頬を包むように撫でた。彼女を見つめて困ったように微笑むサファイアブルーの瞳。
どきん、と、胸が大きく音を立てる。
う・・・ブローノの困った顔に弱いかも、私。
ルナは熱くなり始めた頬を隠すように両膝を抱えてそこに顔を埋めた。
「・・・いっぱいわがまま言うからね。後悔しても知らないから。」
「それは恐いな。」
ちっともそうは思えない声音の後、なめらかな手がもう一度彼女の頭を撫でた。
ブチャラティは亀の天井を見上げる。
「目的地までの時間は?」
外からはボートが水を切って走る音が聞こえている。早朝で運河が空いているのをいいことに、相当スピードを出しているようだ。
「そろそろリアルト橋です。まだ5分はかかりますよ。」
ドームの向こうから巨大な(こっちが小さくなっているからなんだけど)フーゴが答える。
「よし。そのまま進め。」
「ーブチャラティ。」
ジョルノの声がした。今はブチャラティとルナ以外は全員、亀の外に出ている。
「ボスからの指示はどんな内容だったんです?」
「今、再度ボスからの指示を確認している。」
ブチャラティは、DISCをセットしたノートパソコンのキーを叩く。ルナもディスプレイを眺めた。
---ーー------ーー-------
全員、無事なのだろうか?
私の大切な友人の娘、ルナの護衛、心から感謝する。
---ーー------ーー-------
「このDISCの情報は、君たちがネアポリスの街から列車に乗った時点で入力したものである。したがって、追手があと何人残っているのか、君たちのチームが何人失ったか、現時点で私には知る由もないことをまず断っておく。」
響くような低音が、指示を読み上げていく。
「これより君たちが向かうのは、サン・ジョルジョ・マッジョーレ島。ルナを連れて来る場所は、島の教会にある大鐘楼の上だ。」
ーー矢の封印を解く。
ペリーコロはそう言っていた。ボスが私に会いたい理由を。
でも私には心当たりがまったくない。そもそもママや私のスタンドに、何かを封印したり解除したりする力があるのかすら疑わしい。
純粋な疑問。
出来なかったらどうするの?
「ー例の矢についてなんだが。」
あまりにタイミングのいい話を振られて、ルナは思わず息をのむ。
気がつけば、指示の読み上げは終わり、ブチャラティは真剣な表情をルナに向けていた。
「以前君は、<矢の封印>について何も知らないと言っていたが、それは今でも変わらないのか?あれから何か思い出したことは?」
「・・・ちょうど、私も同じことを考えていたのだけれど。残念ながら、何のことかわからない。その封印とやらの解き方なんて、なおさら。」
「そうか・・・」
ブチャラティは軽く丸めた手を顎に添え、長い睫毛を伏せて考え込む。
「・・・大丈夫かしら。ブローノや、みんなは・・・」
私が何も出来ないと知ったボスが、ブローノたちを責めたり罰したりしないだろうか。テレビとかでよくある、この役立たずめ!とか言って。と、ききたいのだけれど、あえてぼかして尋ねた。ここはボスが用意した亀の中。中の様子を、ボスに知られないという保障はない。
「・・・やれやれ。こんなに可愛らしいお嬢さんに心配されるとは、誰がギャングだかわからないな。」
ブチャラティはふっと笑って続ける。
「できれば君には自分自身の身を一番に案じて欲しいんだが。俺たちのことより。」
「だって・・・きっとあなたはーー・・・」
ルナは眉をひそめてブチャラティを見つめる。
あなたはきっとーー、私の為ならボスに背くでしょう?あたりまえのように、私のことを命にかえても守ると言ったあなたなら。
「・・・」
ブチャラティは静かにルナを見つめ返す。
聡明そうな切れ長の瞳が何か言いたげに揺れた。
その時、
「ブチャラティ、到着しました。」
と、ジョルノの声が告げた。
中世イタリアを代表する海運王国として栄えたヴェネツィア。
街は、約500年もの昔、イタリア本土の沖約3キロの海上に人工的に造られた。干潟にいくつもの杭を打ち、その上に街が形成されたのだ。それは現在まで保持され、街にはサンタ・ルチア駅と、サン・マルコ広場の間を二分して逆S字型に蛇行する大運河(Canal Grande)がめぐらされ、かつてアドリア海の女王として君臨した美しい水の都の姿を留めている。
イタリア本土とヴェネツィアをつなぐリベルタ橋は、玄関口であるサンタ・ルチア駅に続いている。そして、上陸する人々を出迎えるのは、サン・マルコ寺院の名前の由来にもなり、街の随所で見かける聖マルコの象徴でもあるーーーー、
「<有翼のライオン像>、見たかったなあ、、、」
と、ルナはぼんやり呟いた。
せっかくのヴェネツィア。観光で来たかったわ。
「・・・」
隣に腰かけている、サンタ・ルチア駅で亀の外に出してくれなかった張本人が、ノートパソコンから顔を上げる。
「・・・機嫌を直してくれ、アモーレ。この任務が終わったら何でも付き合おう。」
そう言ってブチャラティは、片手でルナの頭から頬を包むように撫でた。彼女を見つめて困ったように微笑むサファイアブルーの瞳。
どきん、と、胸が大きく音を立てる。
う・・・ブローノの困った顔に弱いかも、私。
ルナは熱くなり始めた頬を隠すように両膝を抱えてそこに顔を埋めた。
「・・・いっぱいわがまま言うからね。後悔しても知らないから。」
「それは恐いな。」
ちっともそうは思えない声音の後、なめらかな手がもう一度彼女の頭を撫でた。
ブチャラティは亀の天井を見上げる。
「目的地までの時間は?」
外からはボートが水を切って走る音が聞こえている。早朝で運河が空いているのをいいことに、相当スピードを出しているようだ。
「そろそろリアルト橋です。まだ5分はかかりますよ。」
ドームの向こうから巨大な(こっちが小さくなっているからなんだけど)フーゴが答える。
「よし。そのまま進め。」
「ーブチャラティ。」
ジョルノの声がした。今はブチャラティとルナ以外は全員、亀の外に出ている。
「ボスからの指示はどんな内容だったんです?」
「今、再度ボスからの指示を確認している。」
ブチャラティは、DISCをセットしたノートパソコンのキーを叩く。ルナもディスプレイを眺めた。
---ーー------ーー-------
全員、無事なのだろうか?
私の大切な友人の娘、ルナの護衛、心から感謝する。
---ーー------ーー-------
「このDISCの情報は、君たちがネアポリスの街から列車に乗った時点で入力したものである。したがって、追手があと何人残っているのか、君たちのチームが何人失ったか、現時点で私には知る由もないことをまず断っておく。」
響くような低音が、指示を読み上げていく。
「これより君たちが向かうのは、サン・ジョルジョ・マッジョーレ島。ルナを連れて来る場所は、島の教会にある大鐘楼の上だ。」
ーー矢の封印を解く。
ペリーコロはそう言っていた。ボスが私に会いたい理由を。
でも私には心当たりがまったくない。そもそもママや私のスタンドに、何かを封印したり解除したりする力があるのかすら疑わしい。
純粋な疑問。
出来なかったらどうするの?
「ー例の矢についてなんだが。」
あまりにタイミングのいい話を振られて、ルナは思わず息をのむ。
気がつけば、指示の読み上げは終わり、ブチャラティは真剣な表情をルナに向けていた。
「以前君は、<矢の封印>について何も知らないと言っていたが、それは今でも変わらないのか?あれから何か思い出したことは?」
「・・・ちょうど、私も同じことを考えていたのだけれど。残念ながら、何のことかわからない。その封印とやらの解き方なんて、なおさら。」
「そうか・・・」
ブチャラティは軽く丸めた手を顎に添え、長い睫毛を伏せて考え込む。
「・・・大丈夫かしら。ブローノや、みんなは・・・」
私が何も出来ないと知ったボスが、ブローノたちを責めたり罰したりしないだろうか。テレビとかでよくある、この役立たずめ!とか言って。と、ききたいのだけれど、あえてぼかして尋ねた。ここはボスが用意した亀の中。中の様子を、ボスに知られないという保障はない。
「・・・やれやれ。こんなに可愛らしいお嬢さんに心配されるとは、誰がギャングだかわからないな。」
ブチャラティはふっと笑って続ける。
「できれば君には自分自身の身を一番に案じて欲しいんだが。俺たちのことより。」
「だって・・・きっとあなたはーー・・・」
ルナは眉をひそめてブチャラティを見つめる。
あなたはきっとーー、私の為ならボスに背くでしょう?あたりまえのように、私のことを命にかえても守ると言ったあなたなら。
「・・・」
ブチャラティは静かにルナを見つめ返す。
聡明そうな切れ長の瞳が何か言いたげに揺れた。
その時、
「ブチャラティ、到着しました。」
と、ジョルノの声が告げた。